第66話 皇太子の思惑②
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皇太子執務室に転移し、いつもならすぐに仕事に取り掛かるアリスティアが、皇太子に抱かれたまま胸に顔を押し付けて羞恥から動けないでいるのを見たエルナードとクリストファーは、色めき立って皇太子に噛み付いた。
「殿下! うちのアリスに何かしたの!? 潰すよ!?」
「アリスが全然殿下から離れないなんて、何かあったとしか思えないんだけど!? 潰すぞ変態!」
「お前たち、相変わらずの妹至上主義で安心だが、別にティアに何かした訳でもないぞ。褒めちぎったから恥ずかしがってるだけだ」
「エルナード様、クリストファー様。私もお二人が相変わらずの妹至上主義で却って安心ですが、ルーカス様の仰る事は本当です。あと、殿下はここに二人居ますので、暫くは皇太子殿下、或いはルーカス様とお呼びした方がいいと思いますよ」
クロノスがそう言うと、初めて二人はエルンストに目を向けた。
「クロノスよりは年上か。使えるのか?」
「使えなきゃ使えるまで扱くだけだな」
「お二人とも、不敬ですよ。エルンスト・クラウス・イザーク・セル・フォルスター第二皇子殿下です」
エルンストは驚いていた。
皇族の、しかも皇太子相手に不敬にも脅迫的な言葉を投げつけているのに、皇太子である兄はそれを許している。しかも、妹至上主義てなんだ!?
「エルナードから自己紹介しろ」
「エルナード・フォルト・セル・バークランド。皇太子補佐官で、アリスティアの次兄です」
「クリストファー・ティノ・セル・バークランド。アリスティアの三番目の兄です」
「ダリア・スレイシア・セラ・レシオ。レシオ侯爵家次女で、近衛第一連隊第二大隊所属、アリスティア様の専属護衛ですわ」
「カテリーナ・ワイト。ワイト男爵家次女で、アリスティア様の専属護衛です」
「ユージェニア・ティゲル。ティゲル子爵家三女でアリスティア様の専属護衛です」
次々と自己紹介して行く面々。アリスティアの専属護衛が皇太子である兄の専属護衛より多い三名もいて驚いたが、それよりも。
「ワイト男爵とティゲル子爵など、聞いた事がないぞ!?」
「我が他国からティアの為に招いた専属護衛だ。能力は近衛騎士に勝るとも劣らない。我の判断に否やを唱えるか?」
「あ、兄上が、アリスティアの為に!?」
「エルンスト。ティアを呼び捨てにするのは許さぬ」
「も、文句はありませんが、アリスティア・クラリス・セラ・バークランドをどう呼べば……」
「クロノスの様に、様をつけるとよかろう?」
「ルーカス様! わたくしが不敬で困りますわ!」
「あ、アリスティア様が復活した」
「年下に様付け……?」
「クロノスも二歳年下のティアに様付けして呼んでるぞ?」
「ルーカス様。立場が違いますよ。私は従属国の公爵でしかないですし」
「元々は皇太子であろう?」
「昔の事ですよ。今は、フォルスター皇国の皇太子補佐官ですから」
「は? 従属国?」
「なんだ? そなたは従属国の存在を知らなかったのか? そなたの側近や教師は何を教えているのだ」
ルーカスは、大きなため息を吐いた。
「面倒な。エルナード、説明してやれ」
「あ。側近に丸投げとか、面倒なら連れてこなくていいのに」
「たまにはいいだろう? 我はティアのケアを優先する」
「はいはい、畏まりました」
ルーカスはアリスティアを眠らせた。無詠唱で発動した魔術に気が付いたエルンストが、驚愕するのはもう少し後である。
そしてエルナードは、二年前に起こった"バークランド公爵令嬢誘拐事件"の真相を話した。
壮絶だった。
兄が竜王として覚醒したとか、八歳のアリスティアが大人に甚振られ、純潔の危機に晒され、自決を覚悟したのに従属の魔術で体の自由を奪われ自決も出来なかったとか、救出してすぐにエルナードたちに殺して欲しいと願ったとか。
兄が、ナイジェル帝国を滅ぼす事も出来たがアリスティアが望まないだろうからフォルスター皇国の従属国にしたとか。
クロノスはそこの皇太子であったが、兄が叙爵して公爵位を与えたとか。
今でもアリスティアはトラウマで苦しんでいて、フラッシュバックが起こるとか。
そんなアリスティアの為に、兄が離宮を用意させ、竜の国から竜人と獣人の使用人と専属護衛二人と専属侍女三人を連れてきたとか。
今は兄とアリスティアは一緒に離宮に住んでいるとか。
情報量が多すぎて理解が追いつかないエルンストだった。
暫く呆然としていたエルンストが、漸く事態を理解した頃には夕方になっており、呼び方問題は棚上げのまま、定時だからと言ってエルンストは皇太子執務室から追い出された。
もちろん、エルンストが追い出される前に、先程の真相は口外しないように兄から告げられたのである。
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