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第64話 皇太子の怒り、双子の怒り

いつも誤字・脱字報告ありがとうございます。

とても助かります!(๑•̀ㅂ•́)و✧


 

 


 「ルーカス様! 騙されてます!」


 専属護衛が動き出す前。

 アリスティアを侮辱した娘が紡いだ言葉が、大層不快だった。

 ルーカスは、その娘の目を冷たい目で見た。

 その途端。


「っ!」


 くらり、とルーカスの体が傾ぐ。

 頭の中に流し込まれる様な、甘美に思える感覚。

 紅い目から視線を逸らせない。

 体を(おお)う、甘露に思える何か。

 危険だ。

 体が思うように動かない。

 娘は口角を上げ、してやったり、という表情をしていた。

 冷や汗が出る。

 アリスティアに呼びかける。


 名を呼べ。

 すぐに。

 早く。

 ()()を呼べ。

 ルーカス・レオンハルト・ドラグノアを呼べ!


 慌てて駆け寄り、竜王(ルーカス)の体を支える専属護衛二人。




「ルーカス・ネイザー・ヴァルナー・セル・フォルスター! ルーカス・レオンハルト・ドラグノア! 目を覚ましなさい!」


 アリスティアに名前を、()()を呼ばれた途端、不快な体の()()が外れた。

 即座に覇気を溢れ出させる。

 周囲が巻き込まれているが、今はこの娘の処理が先だ。

 護衛に指示を出し、地面を蹴って飛び上がり、アリスティアのそばに立つ。


「良かった、また、離れ離れになるのかと……」


 そう言って、アリスティアは涙を流した。

 しかしその顔は不安そうで。

 どんどん顔色が悪くなり。

 瞳孔が開いていく。

 異変を察知したルーカスは、アリスティアを抱き上げ、周囲に宣言する。


「ティアの魔術ショーは終了だ。教室に転移させる。自宅に帰還せよ。クロノスはここに来い!」


 そしてクロノスを呼び寄せる。

 呼ばれたクロノスは、走り寄ってきた。


「ティアのトラウマに触れたらしい」


 瞠られる目。

 指を鳴らして三クラスを転移させる。

 捕縛した娘は、アリスティアの五重結界を模した結界で封印する。


 自分(ルーカス)の専属護衛に、その封印した娘を運ぶように指示を出す。

 そして専属護衛たちは皇宮の刑部省に転移(とば)し、アリスティアの専属護衛とクロノスを連れて離宮に転移した。

 問答無用で離宮に連れて来られたクロノスは動揺していたが、すぐに皇太子執務室に転移させた。




 先程のやり取りを思い出す。


「黒い(もや)が」

「思い出すな」

「アンクレットがついてた」

「思い出さなくていい」

()()があって」

「忘れていい」

()()されてた」

「忘れていい」

「醜悪な顔があった」

「忘れろ」

「迫ってくる顎がいやだった」

「思い出してはいけない」


 脂汗が出ていた。


「思い出すな」


 辛抱強く言い聞かせる。


「心臓が痛い」

「忘れろ」

「いきがくるしい」


 即座に人工呼吸で二酸化炭素を送り込む。


「忘れろ」

「こわい。こわい。こわい」

「忘れろ!」

「るー、かす、さま」

「絶対に守る」

「るーかす、さま」

「いつもお前のそばにいる」

「るーかすさま! こわい!」

「大丈夫。大丈夫だ。絶対に(ワレ)が守る」

「だいじょうぶ?」

「絶対に大丈夫」

「こわくない?」

「怖くない。(ワレ)が守るから大丈夫」

「あんしんしていい?」

「大丈夫。安心せよ。大丈夫だ」






 そして、アリスティアは失神した。

 この半年はフラッシュバックがなかったから油断していた。

 今回のスイッチは、猿轡と拘束を見せた事だ。

 どちらもアリスティアが受けた事があるもので、気をつけなければならなかったのに。

 下位貴族の娘。

 あの娘の家を調べなければ。

 徹底的に調べて、然るべき処分を与えなければ。

 しかし、まずはアリスティアを安心させること。

 彼女の心の安寧を取り戻すのが先決。





☆☆☆☆



 アリスティアを胸に抱き、怒気を溢れさせている竜王(ルーカス)から強制転移で離宮に連れて来られたエルナードとクリストファーは、アリスティアがこの状態に至った状況を聞いて、竜王(ルーカス)と同様に怒気を溢れさせた。

 そして指示された、(くだん)の令嬢と令嬢の貴族家の調査を、即座に行おうとしたので止め、皇太子執務室へと転移させた。



 調査は二日で終了した。

 双子が怒りまくって本気を出したらしい。

 まずは娘。

 単なる頭のおかしな令嬢、という結論になった。

 いや、そういう事にした。

 娘は、自分は転生した人間で、この世界では自分は主人公で、皇太子妃になる運命なのだと(うそぶ)いたらしい。

 転生した人間は、アリスティアもそうだから違うとは言い切れない。

 だが、主人公だの皇太子妃だの運命だの、到底受け入れられない内容だったし、許せる内容でも無かったから、公式的に、


「頭がおかしく、妄言を吐き、皇太子の婚約者である公爵家令嬢を侮辱し、皇太子を魅了眼で操り、国を乗っ取ろうとした男爵家の娘」


 として公表する手筈を整えた。

 学園は、拘束した日に遡って退学処分とした。

 家の方は、田舎の男爵家ではあるがそれなりに裕福で、令嬢教育も受けさせていたらしいが、娘のわがままを(ただ)す事もせず、繰り返された「いつかは私が皇太子ルーカス殿下の正妃になる運命だ」という妄言を(たしな)めもせず放置していた。

 皇太子の婚約者である公爵家令嬢を侮辱し、魅了眼で皇太子を操って国を乗っ取ろうとしていた重罪人だ、と事実を突きつけたら驚愕して腰を抜かしたらしいが、魅了眼を意図的に使った為に情状酌量の余地はなく、国家転覆罪と皇太子に対する不敬罪、高位貴族への侮辱罪で娘の処刑は免れず、家は爵位剥奪され、平民に落とされる事を告げられると、その場に崩れて泣いたが、その後は悄然として受け入れたという。


 即日、「頭がおかしく、妄言を吐き、皇太子の婚約者である公爵家令嬢を侮辱し、皇太子を魅了眼で操り、国を乗っ取ろうとした男爵家の娘」として公表、家は取り潰しになった事も併せて公表したため、学園ではその男爵令嬢の噂が広がり、各貴族家にも伝えられ、処分の速さに貴族たちは皇太子の怒りを感じ取り、更には婚約者を溺愛しているとの噂も広がった。

 処刑も速やかに行われ、令嬢は首を刎ねられたが、最後まで自分はヒロインなのだからこんなのおかしい、と(わめ)いていたという。



 調査終了から二日後には全て終了していた。

 つまりは四日間で全て終了させたのである。

 その後は、学園に入学したアリスティアとクロノス以外の全ての生徒と教師陣の身辺調査を言いつけた。

 双子は、溺愛する妹をまた傷つけられたらたまらない、と精力的に動いた。公爵家の調査機関をも使い、日々、調査内容が届いた。


 自分(ルーカス)も、国の調査機関を使い、更には暗部も使い、思想信条から何から徹底的に調べ上げた。

 結果的に言えば、他は全員、灰色ではあるもののとりあえずは合格だった。

 学園の理事長が皇太子で、婚約者が幼いからまだ目はあると思い、娘に発破をかけていた家もあったが。

 皇太子が入学式で婚約者のこめかみにキスしたり、婚約者の為に海岸まで大転移を行い、その婚約者が侮辱された事に怒り、頭のおかしな令嬢に何かされた後に婚約者に名前を呼ばれたら、覇気を溢れさせた後に婚約者の元に人間と思えないほどの身体能力で飛び跳ねて移動し、婚約者に異変が起こると抱き上げて即座に生徒たちを教室に転移させ、数日、婚約者に付ききりで看病してたそうだ、と娘から聞けば、諦めざるを得なかったようだ。

 今後も人前でも溺愛しようかと思うルーカスだった。


 

自称ヒロインはサクッと処刑されました。

自称ヒロインに、色々と設定をつけそうになりましたが、あまり手を広げても、と思い直しました(ーー;)


真名を呼ばれたルーカス様が、体の自由を取り戻した理由ですが、真名を自分の愛する者に呼ばれると、自我と体の自由を取り戻す楔となるのです。つまり、破邪効果があるのです。

ルーカスの真名は、竜王としての名前です。

いつか、竜の国に帰ったら、ルーカス・レオンハルト・ドラグノアと名乗る事になります。

本文中に入れられなかったので、ここで公開です^^;



ここまで読んでくださり、ありがとうございますm(_ _)m


 

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