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第41話 公爵令嬢は熱に浮かされる

ご都合主義全開なので、そういうのが嫌いな方は、読まない事をおすすめします。


2019年9月18日、改稿。

 

 

 


 アリスティアの熱は、夜になっても下がらなかったが、そんなに高熱という程でもなかったので、夕食は隣の部屋で摂ることにした。まだアリスティアの熱が下がっていない事が理由である。

 一緒に食事を摂るのは、もちろん竜王(ルーカス)。と、エルナードとクリストファーの兄弟。

 テーブルに並べられる食事は、主に男三人のもので、アリスティアはやはり食欲がなく、パン粥を食べさせて貰ってさえ少ししか食べられなかった。

 またしても、エルナードとクリストファーが、ルーカスが行うアリスティアへの給餌に対して文句を言って来たが、ルーカスにより、給餌行為は竜の雄が伴侶の雌に行う大事な行為で、他の雄にはたとえ兄弟といえどもさせないものだ、と言われ、威圧を行われれば諦めざるを得なかった。

 アリスティアはぼんやりとしたまま、その話を聞いていた。そして、給餌行為とかラノベの中に出てきた竜の特性だな、と考え、ファンタジーだわ、と思ったのだが。


「ファンタジーとはなんだ?」


 とルーカスから聞かれ、アリスティアは口から思考をだだ漏れさせていた事に気がついた。


「ファンタジーとは、幻想とか空想って事です。空想の中の世界を書いた物がファンタジー小説。竜の給餌行為も、ファンタジー小説にはよく書かれてました。獣人とか竜人とか、妖精、精霊、ホビット、コボルド、んー、あとはー、ドワーフ、エルフ」


 ふわふわしたまま答える。


「魔王、魔族、悪魔もファンタジーの定番。あとー、不死鳥、邪竜、麒麟、玄武、白虎。まだまだいっぱい」


 口調が前世に引き摺られているのに、アリスティアは気がついていない。


「あと、魔法、魔術なんかも、ファンタジーでは定番。詠唱、無詠唱、呪文、魔法発動の為の補助具で杖とか、あと、魔道具とか。魔法使い、魔術師、魔道士。魔法剣士なんかもファンタジーの定番」


 ふわふわと話す。

 内容を聞いて、エルナードとクリストファーは驚いていた。


「ティアの前世の世界では、ファンタジーの存在だったのか、竜とは」

「うん。竜は強くてかっこよくて。神様みたいな存在だったり、悪い存在だったりするけど、共通してるのは、何よりも誰よりも強いって事」


 アリスティアはぼんやりとしたままだ。


「竜の亜種で、亜竜、ワイバーンなんかも、ファンタジーの定番だったな。あと、古代竜エインシェントドラゴンも」


 その話す内容の大部分は、この世界にもあるものなのに、それを空想とか幻想などと言っているアリスティアが、全くの別人に見えてくるエルナードとクリストファーの兄弟だった。


「私ね、ファンタジー小説が大好きだった。主人公が、剣と魔法の世界で、自分の努力で活路を開いたり、竜人や獣人という幻想種と交流したり、魔王を倒したり。色んな世界があって、楽しかったの。まさかわたしがファンタジー世界に転生するとは思ってなかったのよ? しかも、前世では平凡な庶民で学生だったのに、気がついたら公爵令嬢で、魔力暴走したあとで。綺麗な顔の男の人が助けてくれて。なぜか皇太子殿下に気に入られてて。前世にも皇太子殿下はいたけど、雲の上の人で、天皇陛下は国の象徴だから、君臨すれども統治せず、だったし。貴族も前世の私の国にはいなかったし。びっくりよね」

「ティアは、この世界が嫌いか?」

「そんな事はないわね。ファンタジー世界、大好きだわ」

「竜王の半身はイヤか?」

「すごいと思うわ。でも、わたしにはわからない。一生変わらぬ愛情とか。前世は離婚も当たり前にあった世界だし」

「何が不満だ?」

「この世界って、美形が多すぎると思うの。石を投げればぶつかるくらい、美形率が高すぎると思うわ」

「ティアも綺麗な顔をしてるぞ?」

「あら、ありがとう。でも私は平凡な顔よ?

 遺伝子の確率的には、こんな美形ばかりっていうのもおかしすぎるのよね。さすがファンタジー世界だわ」


 どこが平凡な顔なのか、と周囲は思うのだが、本人が平凡だと思いこんでいる以上は、とりあえずは放置である。


「ティア。遺伝子とはなんだ?」

「遺伝子は、動植物が持っている、生命の情報源。細胞の中にあるけど、目視は小さすぎて不可能。たしか、大きさは〇.〇〇一ミリくらいだったかと。電子顕微鏡で千倍に拡大してやっとかしら? 女はXX、男はXYの遺伝子を持つわ」

「随分と詳しいのだな?」

「日本では、高等学校の一年の生物学で習うから常識だわね」


 エルナードとクリストファーは、今話しているのは自分たちの妹ではなく、転生前の人物なのだと理解した。


「高等学校ではどんな学問を習う?」

「現代国語、古典、漢文、数学、政治経済、生物、地学、物理、化学、英語─外国語、哲学、倫理ね。他には、美術、音楽、体育、女は家庭科、男は武道」

「随分と多いのだな?」

「毎日これを勉強するんじゃないもの。五日間、毎日六コマに分けて、週に各授業が一ないし三コマ習えるように時間割が組まれていたわ」

「なるほどな」

「わたしね。恋愛なんかよりも本を読んでる方が好きだった。男の子と恋愛するよりも、小説を読む方がずっと良かったの。だって、小説の中では、女の子の主人公に素敵な相手が現れて、素敵な恋をするんだもの。相手は王子様だったり、魔王だったり、勇者だったり、エルフだったり。大抵は王侯貴族で、綺麗な顔立ちの男性で。貴族階級がない国だったから、夢があったわ。でもね」


 一旦言葉を切って、竜王とエルナードたちを順に見てから。


「美形って、見慣れるものなのね。生まれた時から見ていた兄さんたちも、日本基準ではすごく美形なんだけど。皇太子殿下なんか、超絶美形なんだけどね。すごく残念な部分ばかり見ていたせいか、美形ではあるけど、残念美形って感じなんだよね」

「サラッと毒を吐いたな。さすがティアだ」


 竜王が笑う。


「だって、エルナードもクリストファーも、シスコン──妹至上主義過ぎて、ドン引きよ? せっかく美青年に育ったのに、恋人も作らず、妹ばかり偏愛して、毎日撫でないとアリスティア成分が不足するとか。二次元──紙媒体上の相手なら理解できるけどさ」

「ティアは、どうしたい?」

「んー? 話が繋がらないわね」

「我らは残念美形なのだろう?」

「ああ、そういう事ね。観察対象としてなら、残念でもいいんだけどね。女の子は、美形が大好きだから。でもね」


 言葉を切って、竜王を見る。


「さすがに、毎日至近距離で超絶美形が蕩けた笑顔を見せてくるとね、すごく申し訳なく思ってしまうのよ。なにせ、日本人だしね」

「日本人、とは?」

「異世界で、わたしが暮らしていた国ね。国ごとに国民性という特徴があって、日本人は勤勉家・控えめ、と言われていたわ」

「なるほど、ティアの性格であるな」

「元々のアリスティアとわたしは融合してるからね」

「切っても切れないのだな」

「さすが竜王様ね。理解が早いわ」

「褒めてくれるのだな」

「そこは認めないと。わたしは今、前世側を強く出してる状態。でね、話を戻すけど。アリスティアは、精神がまだ幼いままなの。恋愛なんてまだまだで、竜王様の愛情を受けても、異性愛というより、父性愛として受け止めているわ。半身がどういうものかは理解しているけど、わたしが融合してしまったが為に年齢に見合わないほどもの凄く優秀になってしまって、更に父親は宰相であまり家にいないから甘えられず、頼みの兄たちはシスコンで兄弟愛以上で、父性愛がなかったの」

「安心して甘えられる存在がいなかった、という事か」

「そういう事ね」


 だから、と続ける。


「マリアちゃんから聞いたけど、竜族は、半身の年齢が幼ければ育てるんでしょ? その我慢強さで、アリスティアを育てて欲しいのよ。数年待てば、精神は育つわ。異性に向ける愛情はそれからで、それまでは父性愛でお願いしたいのよ。兄弟愛は間に合っているから」

「承知した」

「即答なのね。びっくりだわ」

「ティアを苦しめたい訳ではないからな。我からの愛情が重いと言うなら、暫しの我慢くらい、なんともないぞ?」

「ありがとう」


 アリスティアは微笑んだ。


「わたしはこれでまた眠るわ。このあとはアリスティアの意識になる。わたしは、多分二度と表面に出ないわ。だから、最初で最後のお願い。アリスティアをどうか、普通の子供と同じ様に見守ってね。年齢以上の扱いは、この子を苦しめるわ」

「承知した。だが、ティアが望む場合はその限りではないぞ?」

「知識の事なら仕方ないでしょうね」


 その言葉を最後に、アリスティアの瞼が閉じた。







 暫くそのままの時間が過ぎて。


「殿下──竜王陛下」


 エルナードが躊躇いがちに口を開く。


「この国の中にいる時は、皇太子で良い」

「では殿下。先程の、アリスとの会話ですが」

「聞いていた通りだ。ティアは、前世持ち、転生体だ。ただし、中身は十九歳の平民の少女だがな」


 竜王はくつくつと笑う。


「転生体……アリスが聡いのも?」

「その通りだ。十九歳の少女とおそらくは三歳の子供の精神が融合したのだろう。"気がついたら魔力暴走のあと"と言っていたからな。発熱中に前世を思い出して、融合したのだろう」

「あの時に……」

「もっとも、意識はなかっただろうが、魔力暴走の前には既に聡い片鱗はあったがな」


 クリストファーは、当時の事を思い出す。

 確かに、三歳なのに皇太子に見事な挨拶をし、カーテシーを披露した。あの時は、まだ妃教育は始まったばかりだったのに。

 あれで妹は皇太子の興味を引いてしまったのだ。

 と言う事は、アリスティアの前世の人物のせいなのか。

 しかし、アリスティアの精神と融合してしまったのなら、文句も言えないではないか。

 クリストファーは憮然としてしまう。

 しかし、皇太子といいアリスティアといい、転生体の比率が高すぎやしないか?さっきアリスティアが、この世界の美形率が多すぎると言っていたが。"遺伝子の確率的に"という事らしいが。


「殿下、アリスはどうなるのでしょう?」

「どうもならんよ。先程、ティアが願った通り、(ワレ)がティアを育てる。父親代わりにな。ただし、精神が育ったら、竜王の半身として溺愛するが」


 クリストファーが顔を顰めた。

 竜王はまたしてもくつくつと笑った。


 

アリスティアの前世の人格が表に出ましたが、今回限りの登場です。

アリスティアが言えない本音を話して貰う為に登場させました。



ここまで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


 

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