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第30話 竜王は敵国を征服する

かなり残酷な描写があります。

苦手な人は、読まないことをおすすめします。



2019年9月17日、改稿。

タイトル修正。

少しだけ加筆し、体裁を整えました。


 

 

 皇太子──竜王は翔び上がると、魔術で皇帝を浮かせたまま帝国の宮殿の中に連行した。

 覇気を周囲に放射するだけで人間は全て動けなくなる。

 竜翼を広げ、ゆっくりと飛翔しながら廊下を進む。

 近衛と覚しき兵士が守る扉が目に入った。兵士は脂汗を流して硬直している。そこへ入っていく。

 既に深夜である。誰もが寝静まっている時間だ。だが竜王は然程(さほど)心配していなかった。寝ているなら叩き起こせば良いだけだ。


「"起きよ。竜王の顕現である"」


 従属の魔術を使い、声をナイジェル帝国全域に広域拡散させる。ついでに映像もだ。

 竜翼を消し玉座に座り足を組む。

 皇帝は地に落とし、重力障壁で押さえつけておく。


『ナイジェル帝国皇帝は、(ワレ)、竜王の妃を拐い、あまつさえ手籠めにしようとした。我はこの国を容易(たやす)く蹂躙し滅ぼす事ができる力があるが、我が妃は無辜の民が苦しむ事を望まぬ。

 だから、皇帝とそれに連なる者のみを処刑し、国は我が貰い受けよう。

 ……信じられぬ者もいような。我が真体を見よ』


 そう言うと、竜王は立ち上がって玉座から浮き上がり、人間の姿が一瞬ブレたと思ったら次の瞬間には竜の姿に変じていた。

 尾の長さを入れると体長三五メートルもの大きさで、玉座の間にいても狭く感じられるほどだ。


『我が妃を拐った魔術師を此れへ』


 竜王がそう言うだけでテセウスと呼ばれていた魔術師が現れる。

 彼は震えていた。

 目の前の竜の怒りを理解したが故に。


『拐う事を指示した者を此れへ』


 竜王の目の前に年配の男が現れた。驚愕し恐怖している。


『世話をしろと命じられたのに、我が妃を苛んだ者を此れへ』


 侍女がその場に現れた。ぶるぶると震え怯えている。


『まずはこの三人の処刑を。その前に、姿を人間に戻しておくか』


 竜の姿が小さくなり、人間の青年の姿になった。空中から降りて、また玉座に坐り込み脚を組む。


『人間たちよ、(ワレ)を侮るな。(ワレ)は弱き者を苛む様な者を許しはしない』


 彼が無表情でパチン、と指を鳴らすと、魔術師の首が飛んだ。血が溢れて吹き出す。遅れて体が傾ぎ、倒れた。切断面からはまだ血が噴き出している。


「ひっ!」


 侍女の口から悲鳴が漏れる。

 年配の男は蒼白になって魔術師の死体を凝視している。


『侍女よ。お前の処刑は最後だ。"気絶は許さぬ"』


 パチンともう一度指を鳴らすと、今度は年配の男の首が飛んだ。やはり血が溢れて噴き出した。そして魔術師と同じ様に遅れてその首のない体は倒れた。

 周囲は血飛沫と血溜まりとで凄惨な状態になっている。


『待たせたな。侍女よ、お前は簡単には死なせはしない。我が妃の髪の毛を掴んで引き摺り回した礼だ』


 冷酷なまでに無感情な声で女に告げたあと、青年の金色の瞳が縦に裂ける。

 パチン、と指が鳴ると、侍女の髪の毛が何かに掴まれ、玉座の間を引き摺り回した。


「ぎゃああああ!」

『我が妃はまだ八歳。その様な幼子を、こやつは苛んだ』


 侍女の髪の毛が何かに掴まれたまま、空中にぶら下げられる。


『竜王の半身、永遠の伴侶(ツガイ)を苛んだ刑を受けよ』


 侍女の体が細かく切り刻まれる。


「ぎゃあああああ! 痛い痛い! 助けて!」

『我が妃はその痛みを我慢していたのだ。僅か八歳で。許さぬ』

「ひいいいっ!」


 侍女の体はどんどん切り刻まれ、衣服が襤褸(ぼろ)切れに変わり、体は傷がない場所が見当たらないほど血塗れになっていた。

 悲鳴はいつしか止み、そこにはボロボロになった死体だけがあった。


 竜王は魔術で皇帝を空中に持ち上げた。


『次はお前だ。八歳の幼子に口付けて、あまつさえ体を重ねようとしていたな。その獣欲は利用してやらん事もない。死ぬのと生きて奴隷たちの欲のはけ口になるのとどちらがいいか選べ』

「よ、余は帝国の皇帝だ! 奴隷たちの欲のはけ口など!」

『ふむ。死を願うと。潔いな。だが、簡単には死なせてやれぬ』


 パチン、と指を鳴らすと、皇帝の体はその場から消えた。

 映像を空中に投影する。皇帝は、城門に張り付けられていた。

 もう一度、指を鳴らす。皇帝の前に狼の群れが現れた。

 狼たちは皇帝に襲いかかる。


甚振(いたぶ)れ、狼ども。我が妃を(もてあそ)んだ奴だ。簡単には死なせぬようにしろ』


 群れの主らしき狼が、心得たとばかり遠吠えをする。狼たちが走り回り皇帝を甚振(いたぶ)る。皇帝の体には、狼の牙で幾筋もの傷がついた。皇帝が悲鳴を上げる。どんどん、牙で皮膚が引き裂かれる。皇帝の体は血で真っ赤に染まっていた。


『ナイジェル帝国の貴族と民たちよ。選べ。死か、従属か、どちらかを。我は竜王。死は数瞬の瞬きに訪れよう。(ワレ)は意思を示せば感じられる』


 竜王たる青年は、玉座で足を組み、目を閉じた。

 暫しの時間の後。


『従属の意思を受け取った。今よりこの国は(ワレ)のもの。明日の午前中、貴族は全て登城せよ。ナイジェル帝国は、フォルスター皇国の従属国となる』


 竜王の言葉と共に、映像が拡大された。皇帝は既に事切れていた。


『狼どもよ。人間を喰らうな。森に餌を贈る。戻るがいい』


 パチン、と指が鳴らされると、狼の姿が消えた。


(ワレ)は戻る』


 その瞬間。竜王たる青年の姿が消えた。

 愛しい妃の元へ転移したのだ。

 

皇太子が人外になった上に、残酷な事も平気で行える性格になってしまいました。

どうしてこうなった!( ゜д゜)



ここまで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


 

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