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第29話 救出

途中まではかなり下衆い内容です。

苦手な人はスルーしてください。



2019年9月17日、改稿。

少々加筆しました。

体裁を整え、ティアの心の声はカッコ()内に収めました。


 


 

 

 攫われて三日目と言われた日、アリスティアは侍女の手で湯殿に入れられ洗われて、しっかり磨かれた。

 体の戒めを解かれた際に、魔力封じの魔道具を外そうと試みたが、どういう訳かピッタリと肌に張り付いて取れなかった。

 ならば、逃げ出そうとドアに向かったが、ドアは硬く閉ざされ、開けられなかった。

 もちろん、魔術を試してみたが、魔力を練る事ができず発動もできなかった。

 アンヌと言う侍女は、酷薄そうな笑みを浮かべてアリスティアの髪の毛を引っ張った。痛くて泣きそうになりながらもアンヌの手を振り解こうとしたが、逆に更に強く髪の毛を引っ張られる結果になった。

 そしてそのまま湯殿に引き摺られて行き、洗われて磨かれた。

 流石に体に跡が残る事を考えたのか、体を洗う力は普通だった。

 その後、香油で髪の毛を梳かされ、体にも香油を塗られて揉みほぐされ、夕飯を食べさせられた後に寝衣に着替えさせられた。なぜか子供用なのに扇情的な寝衣で、辟易したが。

 そして、やたら大きい寝台に腰かけさせられて待つように言われた。

 アンヌはドアの横で立っていたため、アリスティアが何かしようと思ってもできなかった。

 アリスティアはいつの間にか眠ってしまっていた。


 やがて夜も更け始めた頃。

 アンヌによってアリスティアは起こされた。

 陛下がお渡りになった、と言われ、二十代と覚しき青年が入ってきた。それと入れ違いにアンヌが部屋を出ていった。

 アリスティアは恐怖に震えそうになる体を叱咤し、青年を睨む。

 青年は面白そうにアリスティアを眺めた。


「子供のくせに、余を睨むとはな。確か、フォルスター皇国の公爵令嬢だったか? 皇太子のお気に入りとか言う。手折るにはまだ幼いが、余興には良いか」

「近寄らないで下さいませ! わたくしに少しでも触れたら舌を噛み切ります!」

「気が強いのは好みだ。だが、舌を噛み切られるのも面倒よ。"余の言う事を聞け"」


 そう皇帝が言った途端、体が言う事を聞かなくなった。

 動かそうとしても動かない。必死に睨むだけしかできない。


「フン。気が強いのを徐々に服従させる過程も一興だが、時間がないらしいからな」


 そう言った皇帝は、アリスティアの体をベッドに押し倒し、覆い被さって来た。

 何を、と思う間もなく顔が近づき、唇に温かいものが触れた。

 そして、強引に唇を割り、舌がアリスティアの口内に侵入して、蹂躙を始めた。

 体が硬直した。悲鳴を上げたくても体が言う事を聞かない。頭が混乱して何も考えられない。

 皇帝の舌だ、と認識した途端に気持ち悪くなったのだが、逃げる事もできない。蹂躙されるがままの自分が情けなくて、涙が浮かんできた。


「まだ反抗的なままか。強情だな。しかし、接吻は初めてみたいだな。重畳」


 ニヤリと笑む皇帝は、意地悪く見下ろし、更に深い口づけを行う。

 息が出来なくなると時折口の端から呼吸させ、また舌でアリスティアの口内を蹂躙し始める。それを十分以上続けられ、アリスティアはぐったりとなった。

 気持ち悪さが体中を這い回り、どうしようもなく震える。


「貴方には絶対に屈しないわ。幼女趣味の変態は死ねばいい!」


 震える声のままに吐き捨てると、皇帝は面白そうにアリスティアを見た。


「余は幼女趣味などになった覚えはないな。そこにあるから手折る。ここは余の後宮だ。後宮に納められた女は、全て余のものだからな」

「十歳にもなってない少女に口付けておいて幼女趣味じゃないとは、笑わせるわ! 充分、変態じゃない!」

「そなたの国の皇太子はそなたがお気に入りなのだろう? だったら幼女趣味の変態ではないか。どう違う?」

「ルーカス殿下は、嫌がる幼女に無理やり口付けたりはしないわ! 話の通じる変態だもの!」


 アリスティアの叫びに、皇帝は目を見開き、次いで爆笑しだした。


「話の通じる変態、か。そなたは皇太子に随分と懐いておるようだ。だが、今は余の後宮に納められた寵姫候補。数回、余が渡れば、寵姫(ちょうき)に、定期的に(おとな)えば寵妃(ちょうひ)に、子を設ければ(きさき)になる」


 言われた内容に、アリスティアは気持ち悪さが一周回って怒りとなった。


「お断りしますわ! 私を好きにする権利は貴方にはありませんわ!」

「理解力がないな。ここは余の後宮だと言っておろう? 後宮の花をどうしようと余の勝手だ。もちろんそなたも余の後宮の花の一輪だと言っておる」

「幼女趣味の変態に嫁ぐ為に妃教育を受けた訳ではないわ! わたくしの心はわたくしだけのもの! フォルスター皇国にいる殿下のものよ!」


 アリスティアの口から出た言葉に、皇帝は顔を歪め、再度噛み付くように口付けて来た。

 暴れようとするも、体は動かない。

 散々、口内を蹂躙され、アリスティアは息が上がってしまい、ぐったりとなった。


「"死ぬ事は許さぬ"。気が向けばまた明日も来てやろう」


 皇帝はそう言い残すと、悠然と部屋を出ていった。

 同時に、施錠される音が響いた。





  ✩✩✩✩✩



 更に二日が経った。

 皇帝は、何が気に入ったのか、翌日もアリスティアの元を訪れた。そして、散々口付けてアリスティアがぐったりしたのを見ると満足そうにして帰っていく。アリスティアには訳がわからない。どちらにしても、アリスティアが気持ち悪く感じるのは変わらないが。

 そして今夜もまた"お渡り"があるとの知らせが来て、アリスティアは悔しさで奥歯を噛む。また苦痛の時間が始まると思うと舌を噛み切りたいのに、皇帝はアリスティアに従属の魔術をかけ、彼女が動けないようにしているのだ。


(いつか、舌を噛み切って死なないと。もう帰れない)


 目の前が暗くなる。

 大好きな兄たちと、大好きなダリア。そして大好きな両親。

 誰よりも安心できるルーカス殿下。

 もう帰れないのだ。

 暗くなるアリスティアを、侍女のアンヌはまたもや髪の毛を掴み、引き摺って浴室に連れて行き、体を洗い、香油を髪の毛に梳かし込み。体にも香油を塗って"お渡り"の準備を整えた。

 そして深夜、皇帝が訪れた。


「余が渡って三日目だというのに、まだ反抗的な目をしているな? アリスティア、お前が助け出される事はないと言うのに。余の寵愛を受け入れて生きるしかないのだぞ?」

「寵愛なんて要りませんわ。わたくしの心はわたくしだけのものです」

「強情なのは好みだが、(いささ)か強情過ぎるな。一度、本格的に手折らねば身の程がわからぬか」


 その言葉を聞いたアリスティアは、恐怖に震えた。

 皇帝の目には、強い火が灯っている。

 知らず、アリスティアは竦む。


──だめだ、あれに捕らわれてはだめ! 自分は■■なのだから!


 震えながらも、皇帝の目を見据える。

 皇帝は、ベッドにアリスティアを押し倒し、いつもどおり口付けてすぐに、アリスティアの口内を蹂躙し始めた。ただし、いつもと違うのは、皇帝の手がアリスティアの寝衣を解きにかかっている点だろう。

 アリスティアはなんとか抵抗しようとした。しかしできない。

 アリスティアの寝衣が剥がされ、幼い肢体が暴かれる。

 皇帝は少し躊躇いながらも、アリスティアの体を(まさぐ)り始めた。


(気持ち悪い。嫌だ。だめ! 助けて! 体が動かない! なぜ魔術が使えないの⁉)


 理由はわかっている。魔力封じの魔道具のせいだ。

 でも、アリスティアの魔力は、皇国内では最大で、最強を誇っていた。ならば、こんな道具なんて壊せるはずなのに。


(なぜ壊せないの⁉ なぜこんな目に遭うの⁉)


 心が恐怖に染まっていく。


(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 絶対に嫌!

 助けて、兄様! 助けて、父様! 助けて、ダリア姉様!)


 浮かんだ顔は優しく、しかし力強い笑みを湛えていた。




(助けて、ルーカス殿下‼)


「やっと呼んだか、ティア」

 




  ✩✩✩✩✩



 突如として、砂が崩れるように壁が崩壊した。

 皇帝は驚愕して崩れた壁の方を見る。

 そこにいたのは。

 どこまでも黒い艷やかな髪、そこに一筋混じる水色。瞳は太陽の光を集めたかのような金。鼻筋は通り、薄い唇は、今は獰猛に口角が上がっている。目も怒りを湛えて皇帝を見据えていた。身に纏うのは覇気。


「ルーク兄様! ルーカス殿下‼」


 アリスティアが呼ぶと、優しげな目を向けたが、アリスティアの状態を目にした途端、ギョッとして更に覇気が膨れ上がる。


「ナイジェル帝国皇帝。貴様、我が妃に何をしている」


 地の底を這うような、圧を含んだ声。


「ここは余の後宮だ。後宮に納められた寵姫を寵愛して何が悪い」


 だがさすがは一国の皇帝ともなると、通常の威圧にはびくともしない。


「下衆だな。幼女を無理やり手籠めにするとは。だが、アリスティアは我が妃。返して貰うぞ」


 皇太子が一歩前に出る。

 後ろでは何か騒ぎが起きているようだ。


「ティア。今少し我慢せよ」


 皇太子はそう言うと、パチンと指を鳴らした。

 その途端、ダリアがアリスティアの側に現れた。

 キョトンとしていたが、アリスティアを見ると驚愕してすぐさまシーツで包む。


「アリスティア様、助けが遅くなりまして申し訳ありません」

「ダリア姉様」


 ホッと安心したのか、アリスティアの目尻に涙が溜まり始めた。

 その間に皇太子(ルーカス)は、ゆっくりと歩を進め、皇帝の前に立った。


「"我が意に従え"」


 皇帝が従属の魔術を発動する。しかし、皇太子の周囲で、パチンという音と共に金色の光が弾けた。皇太子は鬱陶しそうにしているだけで、掛かった様子はない。


「そんなもの、(ワレ)に効く訳がなかろう? 人間など(ワレ)にすれば弱き生き物に過ぎぬ」


 皇太子の様子がおかしい、とアリスティアは今更ながらに気がついた。


「殿下?」

「心配は要らぬよ、ティア。我が妃」


 そう言うと、金色の瞳は瞳孔が縦になった。


「我が妃を攫い、手籠めにしようとした罪は、殺しただけでは贖えぬ。竜王の怒りをその身に受けるか」

「竜王だと⁉ そんな馬鹿な!」

「転生して一八年しか経ておらぬ故な。(ワレ)が以前、命を落としたのは数千年前。数千年ぶりの顕現よ」


 言いながら指をクルンと回す。

 途端に浮きあがる皇帝の体と、背中から竜翼を顕現させて翔び上がる皇太子。


「ティア。少しばかり、この国を征服してくる故、ダリアと共に待っていろ。ああ、ダリアだけでは心許ないな」


 パチンと指を鳴らすと、現れる双子の兄たち。


「「アリス!」」

「エル兄様、クリス兄様!」

「エルナード、クリストファー、ダリア。命令だ。我が妃たるアリスティアをその身に代えても守れ。今、こちらに兵どもが来ている」

「「「御意」」」


 三人の声が重なった。


「征服とはなんだ! 我が帝国の兵は強兵だ。無駄な足掻きだ!」

「人間の兵如きに(ワレ)が負けるとでも思うたか。(ワレ)は竜王ぞ。一国を潰す程度、容易(たやす)い事。だが、潰して民が苦しむのは我が妃は望まぬ。ならば、皇族を潰して(ワレ)が治めるのが妥当」

「そんな事は許されぬ!」

「人間風情に許されずとも困らぬ。お前は(ワレ)の逆鱗に触れたのだからな。拒否はさせぬ」


 そう言うと、竜王は皇帝を連れてそのままどこかに翔んで行った。


「アリス。怖かっただろう?」


 兄の優しい言葉に、アリスティアは堪らず涙を流した。


「兄様。魔力封じの魔道具のせいで、魔術が使えませんでした。従属の魔術のせいで、抵抗もできず。最後の一線は守れましたが、わたくしは汚れてしまいました」


 そこで一旦言葉を切る。

 決意を込めて兄二人を交互に見る。


「今も従属の魔術のせいで、自分の体なのに動かせません。ですからお願いがあります、兄様たち。わたくしを殺してくださいませ。もう、清い体ではないのですから」


 静かに涙を流すアリスティアを見て、兄二人もダリアも、強い衝撃を受けた。遅れた分だけ、アリスティアの心が傷ついていたと理解したからだ。


「アリス。お前を殺しはしないよ。必ず僕たちが守るから、そんな事は言わないで」

「そうだよ、アリス。せっかく殿下が助けに来てくださったのに。殿下は待っていろと言ってたよね?」

「アリスティア様。清い体かどうかは、殿下のご判断に任せてみては? 私は、殿下はアリスティア様を汚いとは考えないと思いますわ」

「殿下はね。竜王の転生体だったんだよ」

「人間の価値観など、竜には通じなさそうだよね」


 だから、安心していいのだ、と兄たちは言った。




 その直後にナイジェル帝国の兵士が部屋になだれ込んで来た。

 殺気立ったエルナードとクリストファーは狭い空間を利用して立ち回り、次々と兵士を屠る。

 ダリアはアリスティアを背後に庇い、万が一に備えた。

 それでも火の魔法で援助する。


炎の刃(フェルム・フランマエ)


 ダリアが最終宣言ワードを唱えると、火が飛んでいって兵士を切り裂き、切断面が焦げて血が乾く。


狂乱の嵐(フルル・テンペスタス)


 エルナードが唱えると嵐が吹き荒れ、兵士達は壁に叩きつけられた。


幻惑のフルゴール・ペリストリングント(・フロルム)


 クリストファーが唱えたら、敵の兵士たちが同士討ちを始めた。

 ものの三十分も経たないうちに戦闘は終わった。






 それからきっかり一時間後、皇太子はアリスティアの元に戻り、アリスティアを戒めていた魔力封じの魔道具を壊し、優しく抱き締めた。

 アリスティアの鼻に、甘くていい匂いが届き、漸くアリスティアは安心できた。

 そして彼女はそのまま意識を手放した。

 

ここまで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


 

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