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第11話 公爵令嬢は皇太子殿下に甘える

2020年7月28日 若干加筆及び修正

 (空白・改行含む)1453字、(空白・改行含まず)1453字

    ⇩  ⇩  ⇩

 (空白・改行含む)1561字、(空白・改行含まず)1484字

 

 アリスティアが起きてからソファに移されて感じたのは、「なんだか寂しい」だった。ソファに座らされた後に皇太子から頭を撫でられていたのに、手が頭から外れた途端、もっと撫でて欲しいと思ってしまった。

 いつも兄たちに散々撫でられているから慣れているはずなのに、どうしたことなのか。腑に落ちない思いをさせられるのがなんだか悔しくて。

 つい、口に出してしまった。


「エル兄様、頭を撫でてください!」


 アリスティアがそんな可愛いお願いをしたら何時もなら嬉しそうに撫でまくる筈の兄は、ギョッとした後にちらりと皇太子の方に視線を向けたあと悲しみの表情で首を横に振り、彼女のお願いを却下した。

 エルナードがダメならばとクリストファーに顔を向けて目を見れば、クリストファーもエルナードと同じ様に顔色悪く頭を横に振る。


(どうしてお願いを聞いてくれないの。人間離れした私を嫌いになったの? やっぱり私は大した人間じゃないのね)


 ネガティブになってしまったアリスティアの(まなじり)に涙が溜まると、二人の兄は慌ててアリスティアに駆け寄ろうとして──皇太子に先を越された。


「なんだティア。頭を撫でて欲しいなら私に言えばいいだろう?」


 なんとも嬉しそうにアリスティアを左腕で抱き上げ、空いた右手でアリスティアの眦に溜まった涙を拭い、その後、頭を撫で始めた。その擽ったいような感覚に、アリスティアは知らず笑顔になる。

 嬉しくて、つい皇太子の肩に頭を寄せたら、なんだかいい匂いがして、それがなんだか安心できる匂いで。

 ついその首筋に頭をすりすりしてしまったアリスティアは悪くないと思う。

 アリスティアのこの行動を見た、エルナードとクリストファー、それにダリアは、唖然としてそれを眺めていた。


「アリスが殿下に誑かされた!」

「僕らのアリスなのに、殿下は手が早い!」

「……アリスティア様、殿下に懐くのが早いですね…………」


 それぞれの胸中から溢れた言葉なのだが、擦り寄るアリスティアが可愛くて誰が見ても蕩けた顔をしたルーカスである。双子を見やって、羨ましいか、と煽った。

 煽られた双子は額に青筋を浮かべて即座に戦闘態勢に入り、両の掌に魔力を練り始めた。

 それに対し、皇太子の方もアリスティアの頭から右手を離し、掌に魔力を集める。

 すわ、魔術戦の始まりか、と緊迫した空気が流れ始めたところにアリスティアの可愛い声が流れた。


「もう、ルーク兄様、頭を撫でるのをやめないでくださいませ!」


 アリスティアのこの言葉に、双子は目を見開いてこの世の終わりが来たかの様に慄き、皇太子は詠唱棄却して集めた魔力を振り払い、アリスティアの頭を撫でる作業に戻った。

 ちなみにアリスティアが皇太子の首筋に擦り寄っている為、撫でているのはアリスティアの後頭部だ。

 その優しい手の動きに、アリスティアは満足している。なんだか本当に幼子になっている気がする、と頭の隅で考えているのだが、その事に重要性を見いだせず、アリスティアは現状に甘える事にした。


「エル兄様とクリス兄様より、ルーク兄様の方が優しいですわ」


 そんな事を呟いたら、それをしっかり拾ったらしい兄二人は、その場に崩れ落ちて頭を抱えていた。

 なんだか、「殿下のせいで!」という言葉が聞こえてきたが、アリスティアのお願いを聞いてくれなかったのだから悪いのは兄二人の方だと思った。

 そしてその状況を見ていた近衛騎士のダリアは、溜息を吐きながら「愛し子様は傾国の幼女ですね」と、なんとも反応に困る言葉を吐いていたのだが、その言葉は幸いな事に誰の耳にも届かなかった。




 すっかり安心し切ったアリスティアが再度寝てしまったのは、仕方のない事だろう。


 

ここまで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


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