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第1話 公爵令嬢は魔力暴走を起こす

2020年6月4日 微妙に改訂


 

 彼女、アリスティア・クラリス・セラ・バークランドの最初の記憶は三歳の時で、魔力暴走を起こしていた最中の事だった。

 嵐の様に吹き荒れる魔力風は、父親が全力で結界を張り、双子の兄達がそれを補助して漸く抑え込める程の威力が有り。

 父親と双子の兄達は驚愕の表情で彼女を眺め。彼女もまた自分の状態を恐怖し。

 怖くて悲鳴を上げたいのに声も出せず体も凍った様に動かず、周囲に甚大な被害を(もたら)す魔力暴走を只々(ただただ)見つめるしかなく。

 わずか三歳だというのに絶望に心を染めかけていた彼女は、()()()()そこに居合わせた兄達の友人に抱えられ(なだ)められ、魔力調整を受けた後に意識を失った。



 その後、魔力暴走の結果としてアリスティアは熱を出し、一週間寝込んだ。


 その間に夢で見たのは、自分が以前は別の人間で、日本という国で暮らしていた事、庶民の学生で、でも勉強は余り好きではなく、本を読んだりゲームしたりが好きな平凡な少女であった事、ただし死因が何なのかや、名前や年齢、家族の事などは曖昧で、ちっともわからなかったけれど。

 それでも三歳のアリスティアには衝撃的な内容で、膨大な記憶を受け入れる容量(キャパシティ)も小さい為、普通の魔力暴走では三日三晩で収まる発熱が一週間に延びてしまった。

 そんな経緯で彼女は以前の自分と前世の自分を融合させ、現在の『アリスティア』になったのである。


 熱が下がって目を開けた時に、アリスティアの父母、アーノルドとローゼリア、双子の兄のエルナードとクリストファーの姿がベッドサイドにあり、なぜかそこに兄の友人の()()()も同席して居た。

 それでも家族の姿を認めた途端、ああ、生還したのだ、とやっと安堵した。


 その後は発熱で奪われた体力を戻す為に、毎日午後から二十分、庭での散歩をし(なぜか三日に一回はルークが付き添っていた)、少食になってしまったが為に、朝昼晩の三食の他に、食事の合間に軽食や甘い焼き菓子が供される様になった。それをアリスティアは頑張って食べて、やっとの事で一ヶ月後には以前通りの食欲と体力に戻った。三歳児の食欲と体力でしかないが、以前と同じに戻った事で周囲も安心した。


 あの時、兄達の友人であるルークがその場に居て魔力調整をしてくれなければ、彼女の魔力回路は焼き切れて傷付き、回復に数年を要していたのだと後々になって聞かされ、ルークに多大な感謝の念を持つ様になったのは当然の流れと言える。





 彼女が魔力暴走を起こし、熱が下がった後、父親は彼女に魔術師の家庭教師をつけて魔力の制御を重点的に学ばせた。

 彼女は努力した。本当に三歳児とは思えない程の努力をして見せた。他の勉強も頑張ったけれど、それ以上に魔力制御を頑張り、わずか三ヶ月で制御法を会得して見せたのだ。


 また魔力暴走を起こして、優しくて大好きな父や兄達を傷つけるかもしれない恐怖は、彼女の心に根ざしていたけれど、制御可能になって魔力の流れが安定すると、父親に大げさなくらい褒められた。それは彼女にとって最大のご褒美で。大好きな双子の兄達も褒めてくれて、彼女はやっと安心できたのだった。

 

読んで下さり、ありがとうございますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] まるでアニメの第1話の冒頭3分を見ているかのようでした これから始まる世界観、主人公の特異性、謎の人物たち ワクワクする始まりでした!
2019/12/11 05:33 退会済み
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