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言葉のドッチボール大会

一日一回!

彼らを助けた私は重大な問題に陥っていた。


「ちょっと! よこするなんてずるいじゃない。マナーくらい守りなさいよ。」


私は彼らを救ったはずなのに、みぃさんに怒られていた。


「しかもプライベートモードでフィールドに入ってきてるって、あんたチーター?」


プライベートモード? なんだか知らない単語が多くて私も困ってしまう。

しかも私はこの4年間、知的生命体とコンタクトをとってこなかった弊害で、うまく言葉を見つけられない。

考えをまとめる前に彼女がまた話し始める。


「そもそもそんな丸腰で石投げて、俺強いだろ自慢しても全然かっこよくないんですけど? あんた絶対リアルじゃヒキニートでしょ。」


ヒキニート…!


た、たしかに。この世界に来て四年、あの島から出ることもせず、ただ生きるだけの日々を送ってきた。

それはもうヒキニートと言ってもいいのではないだろうか。引きこもりのニート。部屋に引きこもって生きてるだけのニートと、島に引きこもって働きもせず生きる私はまさしくヒキニートだった…。


「ほらやっぱり! 何も言い返せない。アカウントは女の子だけどどうせ中身は男よ。ネカマよネカマ」

「ねえ、言いすぎじゃない? かわいそうだよ…」


くましまが私をかばってくれるが、何の慰めにもならない。私はその場で崩れ落ち膝と両手を地面につけた。


「落ち込むモーションなんてやっても許されると思うんじゃないわよ!」

「落ち着けみぃ。」


そしてみぃがさらに私の心をへし折ろうとしたとき、煉獄が彼女をとめた。


彼女をたしなめた後に私のほうへ来る。


「うちの団員が済まない。少々気が立っててね、許してやってくれ。」

「あ、いや」

「でも、君が僕らの獲物を横取りしたのは事実だ。」

「横取りなんてそんなつもり!」


なかったと私は主張した。

そもそも横取りとは何のことだ、私がオオカミを横取りしたって?


「団長、彼女もしかして初心者なんじゃないですか?」

「ん?」


初心者?

さっきから黙っていた、口数の少なそうな細身のシライが、団長、どうやら煉獄のことらしい。に、意見した。


確かにコミュニケーション能力は初心者並みに劣化してるけど…


「え? 初心者っすか? あんなにやばいスキル使うのに?」

「だーかーらー! こいつチーターよ、それくらい朝飯前でしょ? そんなの初心者でもベテランでも最低よ!」


一体何の話だか全然分からない。

このままでは私はヒキニートのうえ、なんだかわからない誤解でさらに最悪の状態になることを恐れた私は、なんとかコンタクトをとるために口を開く。


「あの! 私が何かしてたならすいません。でも私にもなにがなんだかわからなくて。」

「あんた、しらばっくれようっての?」

「違うんです! その、よこ? って言うのをやるつもりなくて、ただ皆さんが困っていたので助けようと…」


私はとにかくなぜオオカミを倒したのかという理由を話した。


「その心遣いはありがたいが、こちらもエアウルフの素材集めと経験値が目的でここに来てるんだ。君のようにとどめだけを刺されたら、経験値もアイテムもすべて君が回収してしまうだろ?」

「あ、アイテムですか?」


アイテムって、そんなもの全然受け取れてないんですけどぉ。


「あの、ちなみにそのアイテムって何ですか。」

「エアウルフの尻尾だ。ドロップ率が低くてな、なかなか手に入らないうえなかなかの強さだから、遺跡の中からここまで誘導して一気に倒して回収するはずだった。」


尻尾? 尻尾でいいの?


「それじゃちょっと待っててください。」


私はオオカミ、えっとエアウルフって言うらしいけど。そいつの近くまで行くとその尻尾を切り落としていく。全部のオオカミの尻尾を切って彼らのところに行くと、みんななぜか不思議なものを見る目で私を見ていたが、私はそんなことは無視して尻尾を差し出す。


「アイテムは全部上げます! だから今回のことは許してください!」


そう言って頭を下げるけど、彼らは誰も尻尾を受け取らない。

不思議に思た私は少し顔を上げた。

すると、彼らを代表してか煉獄が前に出る。


「君、知らないのかも知れないが、エアウルフのレア度だとトレードはできないよ?」


と、トレード? この人は何を言ってるんだろう。意味が分からなかった。しかし、そんな私の疑問を差し置いてみぃが言葉を続ける。


「さっきから何もないところでウロチョロしたと思ったら、今度は何? パントマイムのつもり? 馬鹿馬鹿しい。」


私はしばらく硬直すると、少し考えてから彼らに質問をした。


まず初めに地面のエアウルフを指さし


「あの、皆さんにはあそこに何が見えます?」

「すまないがわれわれには地面しか見えない。」


シライが答える。彼の顔には私をだましているようなそぶりはなく、真実を言っていることが分かった。


「もう一つ、今皆さんには私が何を持っているかわかります?」


そう言って、彼らにエアウルフの尻尾を突き出した。


「なにもないっすよ?」


くましまが答える。


ここまで来ると、何となく状況がわかってきた。

原因はわからないが、彼らと私では見えているものが違うらしい。


「えっと、どうしよ。」


とりあえず、この血の滴った尻尾をどうにか彼らに渡したい。うまくいくかどうかわからないが試してみるか…。


「あの、とりあえず手を出してもらってもいいですか?」

「ん? 僕かい?」


煉獄さんが聞く。


「今度は何するつもり?」


みぃさんは完全に私を信用してないみたいだが、煉獄さんは素直に手を出してくれた。


「えっと、はい。」


その手の上に大量の尻尾を置く。

すると驚くべき現象が起こった。


「!?」


煉獄さんの手の上に乗せたアイテムは、瞬く間に光の粒子になると彼の掌に吸い込まれていった。


「これは!?」


煉獄さんも驚いた顔をしている。


「どうしたんっすか! 団長!」


しばらくの沈黙の後。煉獄は私のほうをまっすぐに見て真剣な顔をした。


「きみ、これどうやったの?」

「ちょっとなにが起きたのよ!」


騒ぐみぃを鎮めるために煉獄が口を開く。


「彼女が僕の腕に何か乗せた動作をしたすぐあと、エアウルフの尻尾が僕のアイテムボックスに大量に出現したんだ。」

「え?」

「しかも倒した数分あるんだ。こんなことありえないよ。」


煉獄の発言に4人が驚愕の顔を浮かべたけれども、私だけはその空気についていけていなかった。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

つたない文章ですが楽しんでいただけたら嬉しいです。


質問、感想お待ちしております。

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