戻らない日々 1
忙しくて短いですが許してくだせえ、結構行き当たりバッタリなので後々投稿済みの話の訂正とかしたりします。どうかご了承ください。
私には双子の妹(姉)がいる、小さなころから一緒にいるせいでよく比べられてきたせいだろうか
、私は姉(妹)のことが苦手だった。
「姉妹なんだから仲良くしなさい。」
とても簡単に言ってくれるけど、私はこの言葉が嫌いだった。
泣き虫な上癇癪持ちの妹に、そんな妹の面倒を見る姉。周りにはそんな風に映っていたのだと思う。
しかしその実私は姉妹のことが好きだったわけではなく、端的に言えば点数稼ぎをするためにかまっていたにすぎない。
一説には後に生まれたほうが姉とも言われているが、戸籍上は彼女のほうが姉なのだ、これではあべこべだ
。でも考えなしの姉をたしなめるのも妹の役目であろう。正直私のほうが姉だと思っているから、心の中ではいつも妹と呼んでいる。
周りの評価もそんな感じだから、言わなければ戸籍上彼女のほうが姉だとはわからない。
その分頼られることも多いが、その代りにお母さんやお父さんにはご褒美がもらえるし、目的は達成できている。
だから私にとって妹は、点数稼ぎのための手段でしかなく、どちらかと言えば、こんな私に曇りない笑顔を向けてくることを苦手にすら思っていた。
しかしそんな姉はとても人にモテた。モテたというのは恋愛という意味ではない。人間として友人としてとても好かれた。彼女の周りにはとても人が集まった。もちろん私とも彼らは友人だが、彼らがいっしょに居たいのは姉なのだと、どこかでわかっていた。だからなのだろうか、私がいい子の仮面を上手につけられなくなったのは。
小学校に入ってすぐのころだろうか。
いつからか私はいい子の仮面をつけることを完全にやめて、学校に行くこともせずに部屋に引きこもるようになった。両親からしたら、突然の娘の反抗期に戸惑ったに違いない。しかし子供の私にとっては、姉妹と比べられて、どんなに頑張っても、結局みんなが求めているのは彼女だとわかるのはとてもつらいことだったのだ。
小学校に入ってからそれは顕著に表れて、ついに我慢の限界がきた。それだけの話だった。
そのころからだろう、妹が泣かなくなったのは。
今思えば、妹は私の居ないところでは泣かなかったのだと思う。泣くのは決まって私がいるときで、それ以外のところでは、泣いたという話を聞かなかった。それは両親の前でも同じで…。
もしかしたら妹は私のために泣いていたのかもしれない。
そう思うと無性に悲しく、そして自分が情けなくなった。
それから二年間、私はほとんど家の外に出ることはなく、妹とも顔を合わせない日々が続いた。
そんなある日のことだ。
私は読書をいったんやめて、通信教育の宿題を部屋で解いていた。妹と最後に口を聞いて半年。その時は突然やってきた。
どんどんどん!
突然私の家のドアが激しくたたかれる。
「ふぁ!?」
外にほとんど出ない私は、大きな音になれていないため奇声を上げた後、そのまま椅子ごとひっくり返ってしまった。
打ち付けた背中をさすりながら時計を見ると午後7時、こんな時間にいったい何の用だというのだろうか。
ここ数年このドアに接触してくる人間などいなかった。食事はいつも時間に部屋の前に置いてあったし、洗濯物もしかり、それが今更なんだ。言っておくが私はドアを開けないぞ。
警戒しながらドアを見つめていると、私が自分からドアを開けないと察したのかドアの向こうの人物がドア越しに声をかけてきた。
「……ここあけて、話がある。」
それは聞いたことのない声だったが、どこか聞き覚えがある、いったい誰だったか…
最近はオンライゲームで話をするくらいで、ほかの人間の声など芸能人しか知らない。そんな私が聞き覚えのある声と言ったら…
「みちる?」
自分とそっくりの顔と声を持つ妹くらいしかいないだろう。今でも自分を姉と言い張れるかどうかはわからないけど。
私は少し迷った後ドアを開けることにした。特に理由はなかった。ただ妹の声を聴いてその声があまりにも弱々しかったから、もしかしたらドアの前で泣いているかもしれない。そう思ったからだ。
「どうしたの?」
「…」
みちるは黙っていたが、何か悩んでいるのは明らかだった。みちるは今年で確か小学3年生だったはずだ、悩みの一つや二つあるだろう。しかしなぜここに来たのだろう、私に相談しても何にもならない。こんなダメな私に、いったいどんな話があってここに来たんだろう。
「お願いがあるの。」
随分と悩んだ末ようやくといった感じにみちるは口を開いた。
私にお願いとは、ずいぶん追い詰められているらしい。
「今度代わりに学校に行ってほしい。」
「…」
「…」
「…」
ガッコウニイッテホシイ?
その言葉に私は硬直した。何を言っているのかわからない。いったい何がどうなったらそうなるというんだ。
「え、なんで?」
「…」
そう言うとみちるはまただんまりだった。しかし譲る気は無いのか部屋から動かない。
そのうちみちるは涙目になって泣き出そうとするから
結局私が折れることになった。
昔からなんとなく自覚したが、私はどうやらみちるの泣き顔に弱いらしい。今までは自覚していなかったが、ここ2年でやっと認められるよになっていた。
そういう意味では引きこもった2年は意味があったのかもしれない、そう思うと今まで外に出るのを怖がっていたのが嘘かのように心が軽くなった。
引きこもりなんてなんとなく始まっても、終わるときは案外簡単に終わるものだなと考えると、少しおかしくて笑いが漏れた。
みちるのこの行動は、結局最初から最後まで私のためだったことを知ったのは随分後のことだった。
読んでいただきありがとうございます。
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