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異世界探索で悪友作り  作者: 鬼柳
第一章 チュートリアル
1/3

プロローグ

 鳥のさえずり。鼻に広がる自然の香り。

 深呼吸をすれば、綺麗な空気が脳に送り込まれる。

 目覚めたばかりでボンヤリしている脳に十分な酸素を送ったところで、現在の状況と今までの経緯を振り返る。



 まず周りを見渡してみると、辺り一帯には多くの木々が立ち並んでいる。

 わずかに木漏れ日こそは差しているが、それでも薄暗く、あまり奥まで視認できない。

 この状況から察するに、ここはどこかの森だろう。しかし、ここまで広い森……俺の住む場所ではそうそうない。

 それに、先ほど深呼吸した時……排気ガスの影響が一切ない、綺麗で清潔な空気だった。

 恐らく、ここは俺が知る世界じゃない。ここがどんな世界なのか、知る必要がある。



 そう結論付けることで、俺は今までの経緯を振り返る。






 ・     ・     ・     ・






 昼休み。午前の勉学に一時的に解放され、各々が自由に過ごす休息の時。

 今日は気候も良かったことで、外で遊ぶ連中もいれば、教室内で駄弁ってる奴等もいる。

 俺こと“烏丸 武人”はというと、昼食が終わり、屋上で爆睡していた。

 ……“とりまる”と呼んだ人は正直に出てきなさい。怒らないから。


 それで、一時間ぐらい爆睡してた時に……



「烏丸君!」


「んっ…?」



 屋上の扉をバンッ!と開け、黒髪ロングのキレイな女子生徒が現れた。

 何と、事情を知ってか我らが生徒会長サマの『柊 美雪』が現れなすったのだ。

 声色から察するに、怒ってるな~これ。誰が怒らしたのやら……

 ……まぁ、俺なんですけどね。



「烏丸君、()()午後の授業サボった!?」



 憤りの原因は、あまりに気候が良すぎたため、授業すっぽかして爆睡を続けてたことだった。

 それも、“また”とこのお方は仰いました。つまり、私はサボり魔なのでございます。



「別に良いじゃん。午前の授業には出てるんだし、テストの点数も悪いってわけじゃねぇんだしさ……」



 勉強自体は苦手じゃないし、それに午前の授業にはしっかり出てる。

 それだけで俺は満足なので、シエスタを続行させてもらおうと寝返りを打つ。



「そう言う問題じゃない!」



 しかし、生徒会長サマは揺すってまで俺を起こしてきます。

 これって安眠妨害に該当しませんかね?ちょっと訴えてきます。



「あ~……じゃあ、ちょっと俺の言い分を聞いてください」


「何?」



 俺だって、何も好きでここで爆睡しているわけじゃない。

 ただ、それでもここで爆睡してしまったことには訳がある。その理由を言って、御帰り願いましょう。



「こんなにも気候が良いのが悪い! ので寝ます! おやすみ!」


「こらー!」



 そんなやり取りが30分続き、結局、俺が折れることで事なきを得たのだった。











 あ~、生徒会長サマのお言葉は頭に響く……

 おかげで最悪な寝覚めだ。こりゃ、本当に安眠妨害だぜ……せっかく、良い夢見てたのに……

 まぁいいや。あと一時間だけ。この一時間、我慢すりゃあとは帰るだけ。



「会長も、一緒に遅刻っすね」


「わ、私にはちゃんと事情があるもの! 烏丸君を授業に出すって!」


「遅刻するときは一緒だよ」


「巻き込んだみたいな言い方やめて!?」



 生徒会長サマは毎度、良い反応するな~。

 まるで子供みたいだ。そんな言葉が喉から出てきそうになったけど、現在絶賛頭に響いてるからやめておく。

 これ以上、俺の頭を振動させないで。そんなに使ってないけどさ……



 それはそうと、なんだかさっきスッゲェ視線を感じるな~。

 まぁ、それもそうだろう。我らが生徒会長サマは、校内じゃ一二を争うほどのベッピンさん(死語)なのだ。

 そんなアイドル的存在の生徒会長サマが、わざわざ午後授業サボり魔である俺にわざわざ絡んでいただいている。それがコイツ等にとっちゃ、羨ましいんでしょ。

 そんなに羨ましいんなら、コイツ等もサボればいいのに。今ならありがたーいお説教も付きで絡んでくれるよ。



「あ、あと烏丸君! ネクタイ、ちゃんとして!」


「首が苦しいんで嫌っす」


「し な さ い !」


「……へーい」



 これ以上、刺激すると頭が破裂しそうだ。

 やむを得ず、俺はネクタイを出し、着用することにした。



「これで良いっすか?」


「ダメ! もっとちゃんと上まで締める!」


「ぐへぇっ……!?」



 とりあえず結び目を苦しくない位置まで緩めていたことが、会長サマの逆鱗に触れちゃった。

 会長サマは結び目を上まで上げ、身だしなみをしっかり指摘してくる。



「ゲホッ……こ、絞殺する気っすか……? 俺そこまで恨まれるようなことした覚えないッスよ……」


「身だしなみをしっかりしない烏丸君が悪いの!」


「そりゃそうッスけど……」



 急に結び目を上まで上げられたことによる首の痛みと、先ほどの光景を見て、周りから突き刺さる視線の痛みが一層強くなった。

 周りのことなんざどうだっていいんだけど、慣れない位置までネクタイ上げられて結構苦しい……一歩間違えれば犯罪ッスよ。ネクタイだって犯罪で使われるケース多いんですからね?



 皆さんも、ネクタイの運用は計画的に……

 何言ってんだ俺。



「さ、到着! 先生、烏丸君を連れてきました!」


「柊君。お疲れさん」


「連行されました」


「烏丸君! ふざけるのも大概にしたまえ! 大体、君のせいで柊君が苦労をするのだ! もう少し生徒という自覚をだな……」


「はいはい、わかりましたよ」



 うるせぇ中年デブだな。

 とりあえず長い説教は軽く聞き流し、最後に軽く謝罪をしてから席に着いた。


 あ~、もう最悪。何この落差。教室に着いた途端にキレイな美女と一緒に汚ねぇオッサン見る羽目になるとは……

 早く終わんねぇかな……この授業……



 しかし、この授業の終わりが、あの事件の始まりだった。



 “終わりがあるなら始まりもある”って言うけど……



 どうせなら、こんな始まりいらなかったよ……











「よっしゃー、終わったー」



 授業が終わり、やっとあの中年デブを見ずに済むことに開放感を覚える。

 まぁ、別にあの教師がなんかしたってわけでもねぇ……わけでもねぇんだけど、まぁアレがナニをしたかは置いといて……

 帰る前に、どっか寄り道していくかな。天気もいいし、飯も買わねぇと……



「烏丸君!」


「会長? まだなんかあるんスか?」



 校門前に辿り着くと、後ろから生徒会長サマに呼び止められる。

 怒っている……様子はないけど、何か面倒なことを頼まれそうな予感がしたので逃げる準備は予めしておく。



「帰る前に、念のために忠告しておこうとね」


「忠告? あっ、もしかしていつか罰に書類運ぶの手伝えとか雑用やれとかそんなめんどくせぇことッスか?」


「違います! ……帰り際に先生が言っていたこと、やっぱり聞いていなかったの……?」


「帰り際? 別に、“近所で通り魔事件が起こった”って話聞いてないッスよ?」


「聞いてるじゃない!?」



 帰り際、担任のセンコーがこんなこと言ってた。



『最近、近所に通り魔がいたみたいです。その犯人がまだ捕まっていない可能性があるので、皆さん。寄り道をしないように、今日は真っ直ぐ帰ること』



 などとさも子ども扱いしているセンコーの口調はこの際置いといて……何が好きで、無関係な人を殺すのやら……

 で、大体こういう奴等に限って無職が多い。やることがないからって、わざわざ人を殺る必要はねぇだろうに……無職で人殺しって人間のクズじゃねぇか。俺が言えた義理じゃねぇけど……



「ま、それが何だってこった。こちとら生活もかかっとんじゃ。指示なんて聞けるか」


「ちょっと! 烏丸君!」



 俺は今日の晩飯を買いにいかなくちゃならんのだ。

 家に帰っても晩飯作ってくれる人いねぇし、いちいち作るのめんどくせぇしで……

 だからコンビニによって弁当やカップ麺を買って食っている。スッゲェ不健康的な生活だと言われても、改善する気はない。

 ハァ……家に帰ったら晩飯を作ってくれる超絶美人な女がいればなぁ……まぁ、そんな夢うつつなこと言ってらんねぇか。まず見つけることから始めねぇといけねぇし。



「んじゃ、会長。俺はこれで」


「ちょ、待って!」


「待ちませ……ちょっ、ついてこないでください……」


「付いていきます! 一人よりも二人の方が、もし会ったとしてもどっちかが警察を呼べば済むじゃない?」


「俺は抑える係ですねわかります」



 そんな危ない仕事を生徒に任せるって会長さんマジパネェっす。

 そりゃまぁ、一人よりも効率よく警察呼べるし安心かもしれないけど……


 二人でいればいるほど……いつか俺、刺されんじゃねぇかなって言う危機感を持って登校するの嫌なんだけど。

 やっぱり真っ直ぐ帰ろうかな。食いっぱぐれるけど死んだら元も子もないし……


 つまり、どちらに転んでも死ぬ未来しか見えてこないんです。

 最善策で言えば、一人で行った方が安心か。てか、会うかどうかはわかんねぇわけ……



「それじゃ、さっさと買い物を済ます!」


「は? は、はい……?」



 アレ?勝手に話が進んでる……

 これは明日、刺される運命かな……?


 ……あぁ、良いぜ……抗ってやるよ……!











「逃げろォ! 通り魔だァ!!」


「!?」



 商店街に着くと、中はかなり慌ただしかった。

 買い物をしていたであろう人々が、一目散に俺たちが向かう方向とは逆方向に逃げている。

 どうやら、通り魔がおいでなすったみたいだな。なんともまぁめんどくさい……



「ほ、本当に来るなんて……」


「某少年名探偵も驚きの事件遭遇率だよね」


「呑気に言ってる場合!?」



 状況が飲み込めない俺達だが、逃げる連中は俺達を避けてくれるのでしばらくは立ち止まって状況把握。

 人が多くて先まで全然見えないが、恐らく流れを逆らうように突き進んでいけば、恐らくその通り魔とやらに遭遇できるというわけだ。

 今日も平和に帰れるかなって思ったけど、そうはいかなかった。俺が平和を望んじゃいけないのか?恨めしい……



「す、すみません!」


「?」



 しばらくそこで立ち止まっていると、目の前から逃げてくる女性に絡まれる。

 まるで縋りついてくるように、慌てた様子で俺達に絡んできた理由を言ってきた。



「娘がいないんです! 逃げる途中ではぐれてしまって……」


「……」



 どうやらこの人、逃げるのに必死で娘置いてきたみたい。どんだけ自分の身が第一なんだ……?

 それにそれって、本来は親がやるべきことであって、人に……ましてや初対面の俺がやる必要あんのか?まぁ、一応やるにはやるけど……



「会長。とりま逃げといて。俺が行ってくるわ」


「か、烏丸君!?」



 とりあえずこの女性は会長に任せ、俺は流れに逆らうように前進する。

 周りは自分の保身に精一杯だからアテにならない。協力を願う気もない。

 だったら、俺一人でやった方が数倍効率が良いな。運悪くて死ぬのは俺だけだし……



「多分、安全な場所にいりゃ警察も騒ぎを聞いて駆けつけてくると思うし、それに……」


「それに…?」


「……今日の晩飯買わないと」


「そこ!?」



 本来の目的はこれ。今日の晩御飯を調達しなければ、空腹感に苛まれることになっちゃう。

 それだけは避けたいので、さっさと助け出してあとは警察に任せて、別のコンビニで調達することにしよう。



「……」



 ある程度、進んだ先で立ち止まることなく、走りながら周りを見渡す。

 人は減ってきたし、見晴らしは良くなってきた。これなら、時期に探しやすくなるだろう。

 それに、流れに逆らって走ってるんだ。いずれ、そこまですぐ着く。



「うぇーん! ママァー!」


「!」



 耳を澄ますと今、母を呼ぶ声が聞こえた。

 人をかき分け、その声がした方向まで走る。人が邪魔だけど、どうにか突破し、顔を上げて前を見る。

 すると、そこには逃げ遅れた子供と、少し先に通り魔ご本人がいた。不味い。結構近い……



「チッ…!」


「ッ…!」



 全速力を出し、通り魔が子供に近づく前に通り魔を蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばした通り魔は数m吹っ飛び、子供から距離を遠ざけることが出来た。



「ひっく……だれ……?」


「母さんから助けを頼まれた不幸な男子高校生だよ。立てるか?」


「う、うん……」



 手を差し伸べ、子供を立ち上がらせる。

 特に目立った外傷はない。転倒したからか、服は薄汚れてるけど……これなら、普通に走れもするだろ。



「よし、それじゃ母さんの元まで走るぞ。転ばねぇようにな」


「うん……!」



 子供の後ろに立ち、肩を支えながら通り魔から距離を遠ざけていく。

 だが、子供の走力は大人よりも数倍遅い。これじゃ、いつか追いつかれるな……

 でも、周りはもうほとんど逃げただろうし……



「んしょ……烏丸君!!」


「会長…! ナイスタイミング!」



 しかし、良いタイミングで心強い援軍の我らが生徒会長サマが現れた。

 そこまで辿り着けば、あとは通り魔を抑えるだけで済むな。



「あの人の場所まで走れるな?」


「うん……頑張る……!」


「おう、頑張れ! やればできる子だと俺は信じてる!」



 Yes We Can.そしてアディオス、名も知らない女の子。

 あとで君の母親からキッチリ報酬を貰いに行くから、その時まで俺のこと覚えておいてくれ。



「よしよし……もう大丈夫だからね……」



 無事に、生徒会長のところまで着いた女の子は、生徒会長と共に退避していく。

 ふぅ、無事にやり遂げてやったぜ。ザマァ見ろ。これであとは俺も逃げるだけ……



「っ! 危ない!」


「えっ?」



 そう。逃げるだけ。

 逃げるだけなのに……



ガンッ!



「……えっ……?」



 逃げるだけ……なのに……足が動かない……

 それどころ……か……立ってる……ことも……でき……な……?



 恐る恐る、自分の額を手で触れてみる……

 生暖かい感覚が、掌に広がっていく。その手を見てみると、その手は真っ赤に染まっていた。



 アレ……?これって……殴られた……?

 後ろを見ると、血に染まった鉄パイプを持った先ほどの通り魔がいる。






 意識が遠のいていく。






 体から力も抜けていく。






 享年16歳。割と短かったな。






 まぁ、良いか……別に、いつか死ぬんだし……






 でも、最後に見なけりゃよかったな……






 生徒会長サマの悲しそうな表情……






 そんな少しした後悔を残しつつ、俺は残ってた意識を手放した。






 ・     ・     ・     ・






 これが、さっきまでの経緯。今となっては、体にも力は入るし、頭も痛くない。

 ということは、ここはあの世か何かかな?いやでも、あの世って三途の川渡って天国か地獄逝くんだよな?

 その行程をすっ飛ばしていきなり森って、どゆこと?もしかして、これ渡った先は地獄かな?

 それとも、三途の川を渡るところは自然と記憶から消去されるのだろうか?あの世の仕組みが分からない。



 まぁ、それはそうとして……

 俺は一つ、気になることがあった。



 ――――――――――――――――――――

 名前:烏丸 Lv:01

 種族:人間 性別:男


 JOB:?????

 HP :25

 MP :5

 ATT:32(攻撃力)

 DEF:14(防御力)

 SPE:26(敏速)

 MAG:0(魔力)


 EQUIPMENT

 R ARM:No Slot(右腕)

 L ARM:No Slot(左腕)

 HERMA:No Slot(兜)

 ARMOR:No Slot(鎧)

 ACCES:No Slot(装飾品)

 ――――――――――――――――――――



 この眼に映る画面だ。

 見た感じ、何かのゲームのステータス?

 でも、よく見てみるとコレ……MP低過ぎね?魔力(MAG)に至っては驚異の0。

 これは完全に戦士タイプのステですねー。俺ってそこまで脳筋に見られてるのか。

 運営がいたらこれは殴り込みだな。


 JOBはまだ判明していないのか、?のままだな。

 これは仕様なのかバグなのか……それとも、どっか行けば判明する?

 とりあえず、閉じたいんだけど……これ、どうやって閉じるんだろう……?


 ……今は考えたところで仕方がない。気にしなけりゃいいんだ。気にしなけりゃ。

 周りから何が来るかはわからないけど、今は何も起こる気配がないのだ。ゆっくり考えればいい。

 でも、チュートリアルもなしにいきなり実戦投入するって良いのか……


 状況は未だに掴み切れていないが、とりあえずそろそろ移動を開始しよう。

 立ち止まったままじゃ何もわからねぇし、行く先行く先で色んな情報を得られるだろ。






 まだまだわかんねぇことだらけだが……ちと、楽しみになってきたぜ……

 初めての投稿になります。

 主人公のステータスで何故、魔力が0なのか……これからどんなキャラが現れるのか……

 ストーリーの構成自体は頭の中で出来上がってはいるのですが、それを文字にすることは難易度高いです……

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