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君に、合格点  作者:
1/2

一話.






「頼む大月! 勉強教えてくれ!」







それが私と。 坂井くんとの始まり。







♦︎♦︎♦︎♦︎






放課後、掃除を終えて教室へ戻れば。 まだ残って談笑するクラスの人の中、一人だけ。


私の席の前に座り、全く使い古されてない教科書を用意している男の子。




「お疲れ。 きょうも頼むぜ〜!」




笑顔で他力本願。 やれやれ、なんて思いながらも教える準備をする私も。 ずいぶんお人好しなんだよね。





放課後、坂井に勉強を教えて今日で一週間になる。 なんでこうなったのかはーー










「期末で赤点3つ取ったら、夏休み補修なんだろ⁉︎ やばいよ、俺赤点4つの常習犯なのに! 頼む大月! お前に俺の高校最後の楽しい夏休みがかかってんだよ!!」











……と言うわけで。 そんな風に半泣きで言われたら、断るのも勇気が必要だったんだ。まぁ別に。私も復習になるからいいか、なんてくらいでお願いを受け入れた。 でも……





「作者の気持ちとか分かんねぇよ! お腹空いてたかもしれないじゃん! 遊びたかったかもしれないじゃん!」


「……坂井くん。 そんなこと言い出したら、この問いの答えがなくなっちゃうよ」


「答えがない問い…… なんか、かっこいいな!」





坂井くんはこんな風に。 結構な、お馬鹿さんで。 真剣に考えても、馬鹿なわけで。 勉強を教えてと言った本人が、勉強の妨げになっています。





「真面目にしないなら、帰ろうか?」



「ごめんごめん! 次は真面目にやるから!」




そう言う顔は、笑っている。 …可愛いな、とか思う私は本当に…… お人好しだ。




しばらくして、坂井くんは真面目に問題に取り組み始めた。


勉強教える側にとって。相手が問題を解いてる間は、とても退屈な時間。 質問がない限り、することがない。 でも、私個人の勉強をすると質問が来た時に手間がかかりそうだから、効率が悪い。 だから、私は黙って待つことにしてる。











……半分ほんとで。 半分嘘だよ。





私がこの場で個人的に勉強するのは、効率が悪いこと、それは本当に思ってる。 だから、坂井くんからの質問を待つ。 でもこの時間が退屈だなんて、思ってないんだよ。






いつも笑ってる、ニヤニヤしてる? そんな顔が、この時はすっごい真面目で。 そういうのが見れて、少し嬉しかったり。 意外と字が綺麗、なんて発見が出来たり。 目にかかりそうな前髪、触ってみたくなったり。





作者の考えじゃなくて……















私の今の考え、分かりますか?




……なんて、考えたり。 …私も、相当バカだなぁ……














「……んんっ! 今日はこれくらいにしとこーぜ! 俺、疲れましたわ」



「うん。 続きはまた明日ね」



「うへぇ。 これ、いつまで続くんだよぉ」




…悪気はない、素直な気持ちなんだよね。 分かってるよ、けど…… ちょっと、胸が痛くなる言葉。




「……自業自得だよ。 テストまであと一週間なんだからさ。 私も出来るだけ協力するから」



「大月、あざす! じゃ、また明日な!」




そう言って、手を振って教室を出て行く。 私はそれを、同じように手を振って見送った。










「…ずっと、続いてもいいんだけどな」



誰もいない教室で、一人呟いた。 期間限定の、君のそばにいられるこの時間。 それが終わるのが嫌だと、思うようになっている。……私は、わがままだなぁ。









また明日。 何気ない言葉、でも私にとっては約束の言葉。 今の私には、それが何より嬉しいんだ。















短編のつもりが、想像が膨らんだのでちょっとだけ… 長めに書かせていただきます。 お付き合いいただければ幸いです!

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