08
エーイチは塾にも行っているという。
なので毎日というわけでもないが、ミチホの家にはちょくちょく遊びに来ていた。
ミチホがエーイチの家に行ってもいいのだが、エーイチは実家住まいということもあり、ミチホの家のほうが行きやすい。
また、ミチホの家の殺風景さが集中しやすいようだ。
図書館に行くのをやめてミチホの家に来ているらしい。
いまだ真夏、外のうだるような暑さによって出歩きたくないのもあり、家でまったりしているほうがマシなこともあり、ミチホもヒマだから外へ遊びに行こうとはあまり思っていなかった。
ミチホはヒマ潰し用にゲームや本を買い込み、エーイチが勉強している隣で静かに遊んだ。
エーイチが疲れたのか伸びをしていた。
ミチホはその様子をちらりとのぞいて、かわいいなーと思いつつ、再び本に集中する。
すると、エーイチはミチホの後ろに回り込み、背中から抱きしめた。
「ちょっと休憩ー。」
「おつかれー。」
エーイチはミチホの肩に顎を乗せ、耳に頬ずりした。
「背中抱っこ、ミチさんも好きなの?」
ミチホが教えたことを真似している。微笑ましく思いながらミチホは頷いた。
「うん。いいよねぇ。」
エーイチのほうが背が大きいので、ミチホはしっかり抱きしめられている。
ミチホがした時はお腹をつついていたが、エーイチはさすがに男だ。ミチホの胸をふよふよと揉みだした。
女性には理解が難しいことかもしれないが、あったら取りあえず揉みたくなるのが男の性というものなのだ。
ミチホはスルーして本を読み続けている。
ただ揉まれるだけなら、マッサージと何ら変わりなく、特に反応することもないからだ。
先端にある敏感な部分にさえ触れられなければ、肩揉みと同じようなものである。
それに、今までロクに触ったこともないだろうと思い、サービスしたくもあった。
無反応のミチホに対して、無言の肯定だと思ってしまったのか、
エーイチはしばらく揉み続け、ミチホの首筋を一舐めし、服の中に手を入れだした。
「おいっ!休憩ってそっちの休憩かよ!二時間三千円かー!」
ミチホはエスカレートしていくエーイチに笑いながらツッコミを入れた。
ピュアな高校生が知っているのかわからないラブホネタ。果たして伝わったかどうか。
「えー。もうちょっとだけ。お願い。」
かわいいエーイチがかわいくお願いしているのだ、ミチホは危うく許しそうになった。
しかしこのまま行くと止まらなくなるだろうと予測し、エーイチの手を体から剥がし、頭を撫でながらニコっと笑った。
「コラコラ。勉強する時間なくなっちゃうでしょー。」
「んー。残念。」
エーイチが本当に残念そうにしているので、ミチホはちょっと悪いことをしてしまった気分になった。
しかし好きなだけ揉んでいいよと言うわけにもいかない。
女というものは、気分が乗らない時に触られると邪魔に感じるものだ。
気まぐれでテキトーなミチホと言えど、今はまったくそういう気分ではなかった。
ただ、エーイチが触りたくなる気分はわかるのだ。ミチホも腹筋ナマで触りてぇとか思っているのだから。
「今はまだダメだよー。頑張ればゆっくり揉める日がくる!」
「えー。たまにならいいでしょ?」
エーイチが珍しく粘って抗議している。せっかく恋人なのだから当然のことだろう。
「うーん。じゃあ、たまに。少しだけだからねー。」
ミチホが折れた。年上の余裕というものだろうか、エーイチの我儘もまたかわいいと思ってしまう。
エーイチは机に戻りながら、まだ名残惜しそうに手のひらを見ている。
「ミチさんって、けっこう胸大きいよね。どれくらいあるの?」
「どんだけだろ、EとかFぐらいじゃないかな。ちゃんと測ったことない。」
「うわ。すげーな……。」
何がすごいのかよくわからないが、エーイチはミチホの胸をしげしげと見つめた。
「すごくないって。普通だよ。よくある乳だよ。ごくありふれてるよ。」
ミチホはなんだか照れくさくなって、早口で自分を卑下しながら、膝を立てて座り直し、胸を隠した。
そしてエーイチを上目遣いに見ながら言った。
「たいした乳じゃないけど、もうエーイチのモノみたいなもんだから。」
「そっか。」
エーイチはとても満足気な顔をし、ミチホに軽くキスをした。
そして、少年のような、イタズラっぽい笑みでミチホにこう言った。
「じゃあさ、また今度ミチさんの胸ちゃんと測ってあげるよ。」
「うぇー!なんだって!!」
そのような事はただ揉まれるより恥ずかしい。
下着売り場のプロの女性に測られるのも恥ずかしいミチホである。
そこで、返答をせずに誤魔化すことにした。
「そういえば。全裸で抱きあうとさぁ、めちゃくちゃ気持ちいいんだよー。あと半年後かな?」
「うっわー、先が長すぎる。」
「ちゃんと勉強しないと、もっと後になるかもねー。フフフ。」
大学合格までは我慢させるつもりなので、エーイチにはもっと頑張ってもらわねばならない。
もし落ちたら無しなのだから。
しぶしぶ勉強を再開するエーイチを確認し、ミチホはまた本を読む。
本はもうクライマックス直前。盛り上がりはじめた所だ。最後まで集中して読みきりたい。
ミチホはニヤニヤしながら読書タイムを満喫したのであった。