夜襲で狩られるのは獲物とは限らない
更新遅れ申し訳ないです
何とかしたいなぁ・・・この不定期っぷり
「おい!!何が起きた!?」
「襲撃です!!フォーマライト二機が敷地内に進入!!防火シャッターを作動させましたがとてもじゃありま
せんが・・・」
「んなもん壁になるかよ!!紙も同然だ。第三偵察部隊及び一般戦闘員スクランブル!!」
携帯電話に怒鳴り散らす
「畜生・・・このタイミングで夜中に襲撃って事は非正規の可能性ありだな」
連中の狙いは何だ・・・仇討ちという可能性も捨てきれんが
「部隊長!!敵部隊の正体が判りました・・・ブラックウィドウ!!」
・・・精鋭部隊、なら恐らく仇討ちだろうな
あいつらは・・・BWの連中は本当に仲間を大切にする連中だ
だったら標的は決まりだ
「総員、時凪時雨の身柄保護を優先しろ!!奴等の狙いは恐らく彼女だ!!」
「了解!!」
ん?待て・・・俺は何か重要なカードを見落としてないか?
「・・・・・」
廊下に出る扉を少し開け、周りの様子を調べる
廊下には誰も出ておらず、以前静かなままである
静かなままという事は直接的な戦闘は行われていないという事だけど、その分敵や味方の位置が掴み難い
連絡手段、そしてここの地形・配置
すべてにおいて完全な目を失った状態と言う訳だけど・・・
「クリア・・・」
私はMEUサイレントカスタムとナイフを持って部屋を出る
音を立てないように足には靴下のみ装備、屋内ならこれで足音はだいたい抑えられる
そうして私は迅速かつ静粛に作戦室へと向かった・・・けど
「防火シャッターが落ちてる・・・」
奇襲に際してそういう取り決めになっているのか、階段に続く廊下を隙間なく塞ぐ防火壁が作動していた
単独では操作不可能・・・私はどうやら閉じ込められたのと同じような状況に置かれているらしい
「せめて確認できるだけの情報をーーー」
防火シャッターに耳を当て、音だけを頼りに情報収集を試みる
・・・何か重いものが近づいてくる
微かな音を頼りに状況打開の策を考える
まず今ある装備の確認
・拳銃
・予備弾倉
・ナイフ
そして現在のこの場所の状況
・屋内、施設廊下 一本道
・窓から見る景色は月明かりなく真っ暗
・廊下照明の切り替えは可能
この状況はーーー悪くない、むしろ好都合
敵は恐らく・・・二機
いずれも武装は不明・・・関係なし
戦闘モード始動ーーー
全身の血液が冷たくなる
氷のように、冷たくなる
「目標捜索中・・・生活棟A二階の制圧を完了」
「トラップなし、作戦は順調に次段階推移」
敵隊員二人・・・その動作には無駄が無く完璧にクリアリングを実行する
CV特殊作戦実行班・・・通称 ブラック・ウィドウ
作戦が隠密性を求められる場合や急ぎ、あるいは重要な案件のみBWは出動する
こちらの異変・・・前線制圧支援の部隊一つが全滅させられるという事例が発生してからまだ間もない
・・・だがこれはまだいい、敵の中には優れた戦闘力を有する者もいる
それよりも、特別派兵のBW隊員三人がやられるという方が異例の事態だった
「・・・154号、155号、156号、敵は討ってやるからな」
「ああ・・・三階の制圧に移行する」
階段を音を立てないように上がり、三階の廊下と階段を結ぶ踊り場にて一度歩みを止める
廊下に続く場所にはシャッターが下りており、一応の隔壁閉鎖と呼ばれるものを作動させているようだ
だが・・・フォーマライトの前では無力だ
多目的ナイフを取り出してシャッターを切りつける
ギャリィィィッ!!
金属が軋む音と擦り合う音が混ざり、時折火花を上げる
この多目的ナイフは特別切れ味が良いという訳ではない
少し生身の人間が扱うには大きい以外は何の特徴もない普遍の刃物
・・・だが、それを使用するシステムのパワーが大きい故に鉄板を両断する程度の威力に変わる
フォーマライトは元々”人間が行う日常動作の物理的パワーアシストを行う”為に開発されたものである
人間が行う”歩く・走る・ジャンプ・触る・持つ・etc・・・”の補助をするパワードスーツの一つだった
しかしその汎用性の高さに軍事転用された時のその性能は歩兵を凌駕するものとなった
汎用性が高い故に装甲や武装を後付する事が可能、装備によっては戦車と正面から渡り合える兵器と化す
ガシャン・・・
あっという間に両断されたシャッターが音を立てて床に倒れる
その向こうに広がるのは闇・・・真っ暗な、肉眼では何も見えない程濃密な黒
「NVモードにシフト、制圧及び索敵を開始」
「通路に動体確認できず・・・クリア」
そうして廊下を進む
ヒュオォォッ
窓が開かれているのか、風が通路に入ってくる
月明かりもない夜空が広がっているのはNVで確認済み
見向きもせずに廊下をまっすぐ進む
するとふと、視界を黒い影が遮った
「音がしなかった・・・ノイズか?」
「いや、俺も影を見た・・・人影ーーー」
ヒュォッ
「なっ!?・・・何だーーーがぁっ・・・!!」
ダダダダダンッ!!
床に7.62mmX51弾が突き刺さる
「おい!!どうした!?」
先導していた隊員が振り向くと倒れた後衛がゴーグル越しに目に入る
「クソッ!!トラップかーーー」
と、瞬時に視界が真っ白に輝き視界を覆う
隊員も訳もわからず目を瞑って視界を自分から塞ぐ
動物として当然の反射的行動である
「動くな」
「ーーーーー!?」
ゴーグルを通常モードに切り替えてから目を開ける
驚く事に銃口を向けるのは若い女・・・しかもかなり整った顔をしている
一瞬見とれてしまうのだが正面から銃を頭に押し当てられていた
FN-FALを握る右手を確認するも、マガジンを抜かれてご丁寧にセーフティーロックを掛けられていた
あの短時間で・・・成す術もなく両手を上げる
「捕虜になるか死ぬか、選択肢は二つあります。どうしますか?」
終わりだ・・・
敵戦力二名の無力化を完了
敵が使用していた装備にNVがあってよかった
夜中、それも奇襲となると必要不可欠な装備の一つだ
これがあるか無いかでは動き方に大きな差が出る
私が利用したのはその弱点である周囲の光の変化で、NV自体は夜の真っ暗な状態の微弱な光を増幅させる事に
よって視界を明瞭にさせる装備
肉眼で真っ暗な状態を、通常の昼のような視界かえるのがこの装備である
そんな真昼の状態の倍以上の光を受けたらどうなる?
光源があるかぎり視界が失われる上、一時的に相手自身の視力を奪える
ちなみになぜ敵がNV装備であるかを把握できたのかと言うと、通常夜中に行動する際には何を使いますか?
そう、懐中電灯ーーーライトを使用するはず。
そしてそのライトを使用していないで何の問題ない昼の動きをされたらそれはちょっと考えれば気が付く事
しかもNVとライトの相性・・・特にタクティカルライトとの相性はこれ以上に無いほど悪い
つまり、そういう事
「さあ、どうしますか?」
「・・・殺せ」
「わかりました」
銃口を頭に向け、引き金を引く
容赦なく、無慈悲に、そして真っ直ぐ兵士の頭を貫く弾丸
ドシャッと、一瞬で二度と動かぬ物となった兵士は崩れ落ちた
「・・・敵残存戦力不明、武器はーーー」
動かぬ兵士が握るアサルトライフルを手に取る
FN-FALか。近代武装化でアンダーレイルにグリップ、サイトに・・・中距離支援用スコープ?
まあバトルライフルだし、まともと言えばまともだね
でも何かよく分からないセンサーみたいなのが付いてて重量がかさんでる
「いらないいらない・・・」
とりあえずセンサー外してグリップも外した
「・・・せめてもの手向けです」
ゴーグルを外し、開いたままの目蓋をそっとおろす
そして、私は立ち上がった
「銃声か!?方角は!!」
「第一生活棟方面・・・先手を打たれたようだな」
フォーマライト装備の偵察部隊を引き連れてパッケージの確保に向かう
「急がないとマズイな・・・各員、ライドワイヤー開放、三階部分へ強制突入!!」
チェストアーマーの脇から牽引用ワイヤーを射出
屋上部分手前にニードルを突き刺す
「突入開始!!」
一斉に、部隊員が空に舞う
ここの第三偵察部隊は、スイッチが入ればBWに匹敵する程の戦闘能力を発揮する
でもそのスイッチがな・・・よくわからんのだが
使いにくいったらありゃしねぇ・・・ホント、いつかのクランメンバーみたいな奴等だな
「皆生きてんのかね・・・全く、歳食うと思考がnoob方向に行っちまうな」
何年か前のゲームを通して、俺は色々学んだ
あのメンバーが教えてくれた
そして、パッケージの居室がある三階に到達した・・・が
「何だこれは?」
そこにあったのは、暗闇と静寂・・・そして、血溜りと動かぬ敵部隊員の骸が二つだった
「・・・ナイフで頚動脈を一薙ぎ・・・一撃で正確に装甲の非保護部位を狙ったのか?」
一人は即死、床に散らばる薬莢と弾痕が先ほどの発砲音の正体だろう
もう一人の隊員は・・・
「・・・正面から頭を一撃か?」
頭を一撃、即死なのは一瞬で理解できる
そして、その死体の傍らに落ちている一つの拳銃用弾丸の薬莢
「んなアホな・・・しかもバイザー貫通してやがる、拳銃だったとしたら至近距離で撃たれた事になるぞ?」
それは即ち正面から相手を手玉に取ったという事になる
そしてーーー暗闇に佇む人影が一つ、廊下にあった
雲が月の前を通過し、遮られていた月明かりが廊下を照らし始める
徐々に、その人影の方に視界が広がる
佇む影の正体はーーー
「遅い到着ですね」
ーーー新人だった
だが、いつもと違った・・・目が、蒼く鋭い輝きを放っていた
そして、彼女の全貌が見えるようになる
服にベットリと付着した血痕、握る拳銃とナイフが真実を物語っていた
俺は、忘れていたカードの正体を思い出した
この少女はーーー生身でフォーマライトを無力化する戦闘能力を保有しているという事実を
そして、こちらを向いた少女は微笑んだ
優しくにっこりと、ただ冷徹な雰囲気と血の匂いを織り交ぜながら
あたたかも、子供と接するように
「み・・・見るな・・・こっちを見ないでくれ!!」
錯乱した隊員の一人が銃口を新人に向ける
向けられた少女・・・時凪時雨はその優しい笑みを崩さない
そのまま隊員が引き金に指を掛けた・・・瞬間
ヒュオッ
と、風邪を切る音と共に視界から時凪が消え去った
「なっ!?がっ!!」
後ろで何かが倒れる音と共に呻き声があがる
「いつの間に!?」
そこには、先ほど目の前から消えた新人が倒れた隊員に銃口を向けていた
「私に銃口を向けた意図をお答え下さい」
銃口を、隊員の背中に押し当てる
殺意が・・・その場に居る全員に金縛りをかける
うごけねぇ・・・まともに動いたら次は自分だ・・・
「ーーーーーっ」
ガキィンッ!!
と、時凪の銃が何かを弾いた
床に刺さるのは、見覚えのあるナイフーーーM9バヨネット
「時雨、そいつは味方だ。銃下ろせ」
そして反対側の暗闇から出てきたのは、前作戦でターゲット確保に協力してくれた民間人だった
弾かれたバヨネットを拾い上げてため息を付く
「味方なら何で私に銃を向けたの?」
「お前が威嚇したからだろうが、全く・・・お前”グレイ・モード”になったら
殺意のセーフティーぶっ飛ばすだろ。皆怖いんだよ、お前が」
「・・・で?」
「落ち着け、頭冷やせ」
「・・・わかった」
と、銃口を下ろした時凪・・・だが
ギィンッ
ナイフ同士が鋭い火花を散らす
一瞬、本当に瞬きをした瞬間には民間人と新人がナイフをぶつけていた
目で追えなかった・・・今の動きは何だ!?
「なら透で発散する」
「おう上等だ。相手くらいなってやる」
新人は銃を床に落とし、アサルトナイフのみを装備する
キィン ビュッ カキンッ ギンッ ヒュッ
ナイフが接触し合う音と空を切る音がただ廊下に響くのみ
避けて弾いて、最小限の動きで最適な部位を狙う
洗練された、無駄の無い動きは息をする間も惜しいほど濃密な時間に圧縮される
見ているこちら側も、そのナイフ同士の近接戦闘を息を呑んでただ見守るしかなかった
そして初めて見たハズのその動きに・・・俺は何故か見覚えを感じた
「ーーーふっ!!」
「ーーーはっ!!」
私と透はその神経の戦いを繰り広げていた
元々、私は透と一緒に近接格闘の練習をしていた
きっかけはーーーあるゲームの近接格闘術を見様見まねで真似したのが始まりだった
それをどうやったら素早く相手を無力化できるか、どうやったら効率よく無駄なく攻撃できるか
いかに緩やかに相手の攻撃をいなすか
小さい頃から色々試行錯誤の末、私達はかなり洗練された技術を手に入れた
・・・あくまで、独流なんだけど
「お前・・・前より速くなってんな」
「透こそ、イケメンでそんな技術持ってるとかかなりモテモテでしょうに」
「ほめ言葉なんかね、その言葉はーーーよっと!!」
一度距離を離し、互いにナイフを構え直す
「さて、そろそろ熱も冷めてきたんじゃないか?」
「・・・あ、ホントだ」
いつの間にか、さっき私の中に篭っていた熱がいつの間にか抜けていたようだ
と、透は私が気を抜いた瞬間を見逃さなかった
素早く私に接近した透はあろう事か私を抱えあげた
「うあっ!?な、何するんですか!?」
「決まってんだろ、抱っこだよ」
真顔で言わないで、恥ずかしいですよ!?
てか何で姫様ver?
「・・・グスン」
嘘★本泣き
もうすっかりできるようになっちゃった
「そんな目で見んなよ・・・」
透君、人と話す時は顔逸らさないで、まっすぐこっち見てください
「「「見てられねぇぇぇぇぇ!!!!」」」
おお、何か周りの人が怒り出した
「何なんだよ!!目の前でのろけやがってリア充が!!」
「羨ましすぎるんだよ!!やめてくれよ!!」
「替われ!!そこを替われ!!今すぐ替われ!!」
上から後藤、裕也さん、湖我さんの順番
そうしてこの場はお開きとなった
「さて、現状報告を」
またしても、作戦報告の為に私達は生徒会室に集合していた
「はい。民間生活棟への被害はなく、陽動の為に爆破された格納庫一つ
それと他は第一生活棟に弾痕が廊下に数十発、あと防火シャッターですね」
「報告ご苦労・・・敵部隊の状態は?」
「確認できたBW特殊隊員は二人。どちらも一撃、即死でした・・・」
我ながらよくやるよなぁ・・・武装した相手に挑むって
あのゲームやってたからかな
「さて・・・時凪時雨、改めて君を部隊員として歓迎したい」
「了解、よろしくお願いします」
「部隊長である俺から頭を下げる、頼む・・・”ラファーラ・フレストリア”」
「ーーーーーー!?」
部隊長が放った名前ーーーそれはもう一つの私の名前だった
「お前、フレスなんだろ?BATAのガルードの先鋒偵察兵担当の」
BATAと言うのは私がこの時代に来る前にやっていたFPSの名前だ
"Battle Ammorite To Asesment"
世界で始めて ”プレイヤーの肉体データを使用して自分そのものをゲームの世界に作る事ができる”
セミローカライザーFPS
肉体の体力、瞬発力、視力、聴力、etc・・・の情報と、自分が行える肉体の動きをトレースする事ができる
シューティングデバイスとモーションキャプチャーを併用する事によって、”自分の動き”を
ゲーム内に取り込む事が可能
私はそのゲームに、先ほどの独流格闘術を入力した
そしてーーー私の所属していたクランの名は”ガルード”
一応、世界大会で王冠を取った事があるクランだけど
「俺はガルードの戦術予報士兼クランマスターやってたぞ~」
「も、もしかして・・・」
記憶の一番新しい・・・最後にパソコンに触れた時のメンバーを思い出す
(おう、お疲れさん)
チャットでのゆるい挨拶
「アークマスター!?」
「よっフレス、五年ぶりか・・・だな」
「えええええええええ!?」
最早驚きしか出ないんですが!?
「ハア!?アイツが溶接マスター!?」
「らしいよ~私の失敗ネーム知ってたし」
と、まあ透と会話中なんですけどね
ちなみに透もメンバーの一人で、アークマスターの事は嫌でも知っている
八人のチーム・・・それぞれが二人でロッテを組む、専門特化プロフェッショナルの集まり
私と透は先鋒偵察兵・・・遠距離索敵と情報収集を担当する
いかに見つからずに、なおかつ多くの敵情報を集めるのが仕事
そして場合によっては、狙撃銃を用いて戦闘支援を行う
私と透は、その斥候をする為のチームである
「つーかお前の失敗名前って・・・確かフレストリアだったか?」
「うん、それそれ」
「・・・別に失敗じゃねーと思うが」
何を言うんですか透君
男がこんな名前してるんだよ?ネカマって言われるし最悪の名前だった
「ハァ・・・あの継ぎ接ぎ凸凹部隊で生き残れてる理由が解かった気がするよ」
「全くだ・・・」
チームマスターであるアークレイドは戦闘能力はもちろんの事、何より頭の回転が速かった
私達が偵察をして集めた情報を元に最適なルート、作戦及び要員を一瞬で選択する
そして柔軟な考えの持ち主で、ありえない事を作戦にする
人の扱いにも長けてる・・・優秀な指揮官だった
しかしコレだけだと頭がいい様に思えるが、実は溶接が特技という罠
「・・・で、透も多分バレてるよ」
「だろうな、アークは頭がキレすぎて困る」
イスに腰掛けて、ため息を同時に付く
「ま、なら俺のするべき事は決まったな」
「?」
「部隊に入る」
透がイスから立ち上がって、バヨネットを空中でクルクルと回す
「コイツ持て余しても何もないしな、それにーーー」
空中を回転するバヨネットをパシッとキャッチしてヒュッと空を切る
「お前を一人にする訳にもいかねーしな」
・・・やっぱり、昔と変わらないね
「・・・ありがとう」
付いてきてくれて
こうして、無事私達は部隊入りを果たした
明日訪れるのは嵐かそれとも日常かわからないけど・・・まあ何とかやっていきますよ
・・・作者には燃える戦闘描写は無理でした