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神が創りしこの世界  作者: 小林マコト
苦しい一週間
7/45

4月17日 水曜日


 夢を見た。

 変な夢。


 私が通っている大学に、私ひとりが居て、いつもと変わらない風景を見ているのだ。

 他のひとは誰もいない。

 私以外誰一人として、世界に進入することを許されていないかのように。


 そして、突然私の見ているものは歪んでいく。

 何もかもが、私の目の前でぐるぐると回っていく。

 色を変え、形を変え。

 原型が思い出せないくらいに変形して、もう世界はどろどろとした液体のような世界に変わり、私の知っている世界ではなくなる。


 私はその世界ではなくなった何かを、元に戻そうと必死にかき混ぜる。

 けれど、かき混ぜれば、必然的に形が変わっていくのだ。液体が固体に変わることなんてそうそうないし、世界であったものは、ただのセピア色の気持ちの悪い液体になってしまっているのだ。元になんて、戻るわけがない。


 でも、私は混乱してずっとかき混ぜる。

 狂ったように。

 ずっと、ずっと。

 世界よ、元に戻れ、と祈りながら。


 そんなとき、誰かが私の後ろから、右腕を掴んだ。

 掴まれた私は、狂ったように叫ぶ。

 離せ、と。

 私の世界を返せ、と。

 そのひとが世界をおかしくさせたわけではないと知っていながらも、世界を狂わせた誰かに向かっての言葉を、そのひとに向かって放つのだ。


 そんな、夢。

 ここから先は、見ていない。


 気持ち悪い夢を見たから、私はトイレで胃の中のモノを吐き出そうとする。

 何も食べていないから、胃液だけが吐き出されるのだけど。


 暫くすると、吐き気はおさまった。

 私はまだその夢に怯え、震え、ベッドの中で小さくなる。

 怖いと、思うしかなかった。

 私の知っている世界がいつかあの夢のようになってしまうのではないかと、そう、思ってしまった。


 そうしていると、二日ぶりにミサイドが顔を出した。

 とても焦った様子で。


 ミサイドが焦るなんて珍しい。

 けれど私はそんなことを気にする余裕もなかった。


 ミサイドは私に薬を与えた。

 注射器で、私の右腕から、体内へ送り込んだ。

 薬は、冷たくて、沸騰したかのように熱い血液と混じりあい、ぬるくなっていった。

 その感覚が、私を落ち着かせて。


 落ち着いた私を見て、ミサイドは安心したようだった。


 それから私は眠ってしまった。

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