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「あ……」
「はは、そんなものだよ、アレク」
流石に言い過ぎて、元に戻れなくなりそうだった。ボクがどうやって言い訳をしようかと考えを巡らせていると、ソフィーさんは悲しそうなまま、苦しそうなまま笑った。先程までとは違って、ボクの知っているソフィーの表情。
痛々しいそれはボクの過ちを認めさせるには十分すぎて、頭の中がぐるぐるしてくる。ボクのせいで、こんな顔をさせているんだ。ボクの好きなソフィーさんが悪いわけじゃないのに。
「アレクがさ、私の何に怒っているのかわからないけど、私がアレクにそんな顔させてるのはよくわかったから。怒らないでとは言わない。だからせめて、お願いだよ。泣かないでくれ。泣いたりしないでくれ。私が悪く見えるじゃないか」
「な、く?」
言われて気付いた。頬が少し濡れていて、ボクら神は流すはずのない『ナミダ』が流れている。
どこから? ボクの目から。
「……もう、やだよ」
その場にうずくまって呟く。もうやだ。もうこんなことやだ。
こんなに苦しいのは、やだよ。
「……助けてよ、神様ぁ」
こんなに助けを求めているのに、助けてくれない神様なんてやだよ。
ボクらの神様は残酷だ。もう思い出すのも大変になった大昔に失ったボクらの笑顔を、ようやく取り戻せると思ったのに。
神様なんて嫌いだ。神様なんて。ボクは神になりたかったわけじゃないのに。神様なんて。
「助けて、助けてよ。神様なんでしょ……? ボクらの神様なんでしょ? 助けてよ、ボクらに強いて来たように、助けてよ。すべてを助けてよ。みんな、笑いたかっただけなのに。笑っていたかっただけなのに。なのになんで、なんでこんなに苦しまなきゃいけないのさ。もう、やだよ」
神様なんて、神様なんて。
もう、やめてやる。




