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悪魔はヒトや神たちからの憎しみを自ら背負い、暗い道を、闇の世界を、地の底を歩かねばならない存在だ。決して明るい場所で息を吸うことは許されない。太陽の下へ出ればその光で身を焼かれ、悶え苦しみながら消滅しなければならないのだ。
対して彼ら神や天使は、ヒトの希望を背負い、悪魔からは憎しみを向けられる代わりに自分たちも悪魔を憎まねばならない。明るく眩しい道を歩き、ヒトを正しきところへ進むよう導くべきなんだ。
言うべくもなく、悪魔は闇で神や天使は光なのだ。私は普通の悪魔には当てはまらないが。
だからこそ闇と光は混ざるべきではない。彼もそれはよく知っているはずだ。どれだけいレギュラーといえど、いるべきではない神ではないのだから。
この世界には確かに彼が必要であり、彼がいなければ彼女が――初代創造主がどこにいるのか、わからなくなってしまうのだ。
「探さなくても、いいだろうに」
「ソフィー?」
「いや、なんでもない。で? 話ってのは」
「他愛もない話だが、聞いてくれるか?」
もちろん、とだけ答えて目を閉じる。
やはり私にもこの白は眩しい。目を焼かれてしまいそうだ。
「昔の話だ。といっても、それほど前のことではない。人間たちの時間でいえば、そうだな、一年くらい前のことか」
そうして彼は語りだした。
こうやって彼の話を聞くのは、どこか懐かしい。
かつて同じように、彼の話に耳を傾けたことがあるのだろうか。
「私は、初代創造主を見つけた」
信じられない言葉が発せられた。
誰から? 彼からに決まっているだろう。
思わず目を見開いて彼を見る。
嘘だ、いろんな神とかいろんな天使が、いろんな悪魔が何万年も探しまわっていたというのに、見つけたと言うのか。しかも一年前って最近じゃないか。
私たち永遠の存在といえど、一年が一瞬と同じくらいの感覚でしかない、ということはない。私たちだって一年は一年だし、百年は百年だけど、それでも永遠を生きることができると百年前を思い出すより一年前を思い出す方が最近だと思える。まあそれは当たり前とも言えるのだけど。




