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神が創りしこの世界  作者: 小林マコト
神様を殺した日
24/45

 どれだけ人間としての私の人格が育とうとも、神としての私の人格は消えなかった。

 神としての私は、人間としての私の中に溶けていき、やがてひとつになって、どっちつかずの私が生まれた。


 半分、神。

 半分、人間。


 この世界にふたつとない存在となってしまった私は、世界から切り離されていたことに気付かなかった。


 (わたし)人間(わたし)として、(わたし)が創った幻想(せかい)の中で生きていたんだ。


 なんて滑稽なんだ。

 もうワタシなんて存在は、どこにもなかったのに。

 そこにワタシが居ると信じて。

 そこでワタシが生きていると信じて。


 ミサイドという存在は、本当にあったのだろうか。

 もしかしてそれも、この幻想(せかい)の中で(わたし)が創った存在なのだろうか。


 それだけは、やめてほしい。

 ミサイドには沢山助けられた。

 助けられたんだ。

 だから、ミサイドは昔の(わたし)が創った真実(せかい)に存在していてほしい。

 創造主としての権利をなくした今となっては、確かめられないのだけど。


 私はそっと目を閉じる。

 もう忘れてしまった、世界の創り方を思い出すんだ。

 すべての存在を創った、あのチカラの使い方を。


 思い出せ。

 思い出すんだ。


 今度は、私という存在はいらない。

 ミサイドという存在さえそこにあれば。

 それだけでいいんだ。


 あのチカラを使えたら、きっと真実(せかい)のシステムに介入することができるだろう。

 確かめるんだ。

 ミサイドが存在するか。

 それで、真実にミサイドが存在していなければ、ミサイドという存在を創りだしたはずの時間に戻って、ミサイドを創る。


 それだけ。

 それだけでいいんだ。


 けれど私は、そのチカラの使い方を思い出せない。


 どうして。

 ずっと、使っていなかったからだろうか。


 いや、違う。

 現創造主が邪魔をしているんだ。

 あの、金髪の神。アレクサンドル。

 あいつが邪魔をしているんだ。


 今思えば、あいつの気配はこの幻想のものではなかった。

 私が創りだした、真実のものだった。

 あいつの邪魔さえ振り払えば、きっと。


 邪魔されている。

 私が真実に介入しないように。

 あいつが。


 創造主を交代する制度を作ったのが悪かったのか。

 私のチカラの9割を、代々創造主に渡すという制度。

 あれを作ったからか。


 返せ。

 それは私のチカラだ。


 ……嗚呼。

 こんなことはやめよう。

 きっと、あいつも分かってくれているだろう。

 ミサイドくらいは、存在させていてやりたいという、私の気持ちを。


 思えば、私は神であったときから自分が嫌いだったのかもしれない。

 神が自分自身を嫌っているなんて、おかしな話だとは思うけれど、私は私が嫌いだった。

 多くの存在を創りだしていった中で、私という存在が薄れていった。

 私という存在を認識しない者たちが増えていった。


 創造主が認識しない存在は、消えてしまう。

 そこに何もなかったかのように。

 逆に、創造主の存在を認識しない者が増えると、創造主が消えてしまう。

 自分が創ったものに、忘れられてしまうから。


 私は必死に認識してもらおうと行動した。

 けれど、それは無意味だった。

 ミサイドが歴史に介入できないのと同じで、私は世界の裏から世界をまわすことしかできないのだ。


 私はあまり私自身が変わっていくことが好きではないから、私はいつも元々の私で居ようとしたのに、ミサイドや、他の存在たちが変わっていくから、私だけが変わっていくように見えて、それがとても嫌だった。


 私だけが、取り残されているようで。

 嫌だった。


 今になれば、そんなのどうでもいいのだけど。

 当時は、反吐が出るほど嫌だったのだ。

 反吐なんて出ないけど。


 すべてを創りだすチカラなんて、いらないと思っていた。

 今だっていらない。

 そんなチカラがあったって、私は私が守りたい者を守れなかったのだから。


 創りだすのは簡単だった。

 管理するのが大変だった。

 でも、守りたかった。


 私が創りだしたすべては、とても大切なものだから。

 守れない自分が嫌いだった。


 それでも、やっぱり私は分かっていて。


 創りだす私も。

 守れない私も。


 両方とも、私という存在なのだと。


 分かっているから、余計に辛かった。

 どうして守れないのか、と。

 分かっているなら守れよ、と、自分に向かって叫んだ。


 今の自分には無理だと分かっていたけれど。


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