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彼が言ったやるべき事、とは彼女を探し出す事だった。彼女から与えられたチカラを使えば簡単に見つかるだろうに、彼は天界を出る際にそのチカラを他の神に分け与え、時を操るチカラと彼女以外についての知識だけを持って地上へ降りた。
地上は思いの外広く、様々な人種のヒトがいたが、天界にいた彼にとって同じ顔を持つ者たちにしか見えなかった。それでも彼は根気強く探し続け、ついには彼女を見つけた。
4月13日 金曜日
ミサイドは、神になるそうだ。
昇進、ってやつだろう。
というか、やっぱり大天使だったらしい。
ミサイドは神になろうがなるまいが、興味なさげだ。
仕方ないよね。ミサイドだもん。
自分の興味あることくらいでしょうに、彼が積極的になることなんて。
それにしてもだるい。
最近、何かがおかしい。
ミサイドと我慢比べをしたときくらいからだ。こんなふうに体がだるくなったのは。
私はミサイドの存在を、視覚で認識することができるようになった。我慢比べの日以来、なぜかわからないけど、ミサイドから話しかけられないとミサイドの存在を認識できなかったはずなのに、話しかけられなくても存在を認識できるようになった。
よくわからない。
やっぱり、私がおかしくなったのだろうか。
いやいや、私がおかしいのは今に始まったことじゃないだろう。
自分で言うのもなんだが、私という人間はかなりおかしいと近所で評判だ。
別にさ、自分ではおかしいとは思わないんだけど、みんながそういうからおかしいんじゃないかなって。
大学生にもなって階段から滑り落ちたりるけど、それもまあ人間だし? 失敗くらい誰でもするでしょう。
あ、話ずれた。
体のだるさと共に、何か大切なことを思い出そうとしている感覚がある。
多分、それを思い出すために、無意識に考えているから体がだるいのだろう。
推測だけど。
ミサイドには言ってない。
言う必要とか、ないだろうし。
「……ソフィー、最近元気がないな。どうかしたか?」
ミサイドが声をかけてくれた。
大丈夫だと言うと、絶対信じてくれてないだろうけど、それ以上は何も訊かなかった。察しのいい大天使様で助かった。
ミサイドは、私をソフィーと呼ぶ。ソフィーというのも、ソフィアという名前の愛称らしい。
初めはそう呼ばれるのにはやはり違和感があったけど、今はもうすっかり慣れてしまっている。もともと、そういう名だったかのように。
ソフィアという名前に、心当たりはない。何故ミサイドが私をソフィーと呼ぶのかなんて、全然分からない。大体、愛称で呼ぶくらい親しい関係だった人間――もしかしたら天使か何かかもしれないけど――の名前で私を呼ぶなんて、私はそのソフィーというひとに似ていたりするのだろうか。
私の名前は穹という。ミサイドにも、初めて会った時に言った。私の名前は穹だ、と。けれどミサイドは一度も私を穹と呼んだことはない。
別にそんなことはどうでもいい。ソフィーと呼ばれたほうが、何故かは分からないけれど嬉しいから。
それに、名前というのは存在を表すものではないから、別になくたっていい。私はそこに私という存在が居ればそれでいいのだから。
というか、昔から私には名前なんて意味のないことにしか思えないし。名前を付けて呼ぶのは地上では人間くらいだ。何かと何かを区別するために名をつける。言葉が発達した人間は、そういう面倒なことをしなければならなくなったのだから。
まあ、ミサイドと出会ってからは、天使とかその他諸々も言葉を持っていて、名前を付けて呼んでいるってことが分かったけど。私は神話だとかそういうものを信じていなかったから、天使や神なんていないと思っていたから、言葉を使うなんて知らなかったよ。
今はミサイドがいるから信じているけど。
にしても今日は、ミサイドの機嫌が悪いな。どうしてだろう。昇進したら嬉しいはずなのに。
ミサイドだから普通には当てはまらないだろうけど。




