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神が創りしこの世界  作者: 小林マコト
無限ループ
18/45

 いつまでたっても彼女は見つからない。一番彼女を探そうと躍起になっていた彼も、もうそこまで焦っているような素振りを見せなくなった。

 現創造主は信じろ言ったが、神々はもう我慢の限界だった。信じる事がいい結果を生むとはよくわかっている。しかし彼を信じる事は、もう困難だった。


 あの日は、しとしとと静かに雨が降っていたのを覚えている。

 長い眠りから目覚めたような感覚を感じながら、私はこの世界に降り立った。


 そう。

 私は雨の日に彼女に創られた。


 森のようなところに、彼女と私は居た。

 木々の隙間から、雨粒がぽつぽつと降っている中、彼女は木陰に隠れようともせず、雨に濡れていた。


 悲しげな表情をして。

 下を向いていた。


 私は、彼女を一目見て気付いた。

 彼女が私という存在を創りだしたのだ、と。

 そっと彼女に声をかけると、彼女は驚いていた。

 そして、彼女はとても嬉しそうに微笑んで、私に「ミサイド」という名を与えた。


 それから、彼女と私は多くの存在を創りだした。

 私が創られる前に創られていた、天界と地上に、沢山の存在を創りだした。

 冥界は地上に『命』を持つ存在を創った後に、創りだした。


 神。

 天使。

 悪魔。

 植物。

 動物。

 そして、ヒト。


 彼女は沢山の存在を創りだした。


 次第に彼女は大きな存在になっていき、彼女が存在しなければ、世界は壊れるようになった。

 世界が穢れたら、彼女自身に影響を及ぼすほどになった。

 彼女がそれほどまでに多くの存在を創りだした理由を、私は知っていた。

 知っていて、止めなかった。

 私は彼女を認め、正当化しなければならない存在だったから。


 彼女はヒトを羨んだ。

 ヒトを羨み、彼女はヒトになりたいと願った。

 しかし、それは許されない。


 彼女は全知全能の神である。

 この世界に存在するもの全ての創造主である。

 ヒトのように愚かなものになるわけにはいかない。

 彼女は、神なのだから。


 それを知っていてもなお、彼女はヒトになりたがった。

 なれないのなら、せめてヒトを幸せにしようとした。

 彼女はヒトの罪を肩代わりした。


 そして彼女は、堕落した。


 記憶を失くし、

 チカラを失くし、

 神としての存在を失くした。


 私はそれでも、彼女を認め、正当化した。

 それが正しい行為だと。

 彼女に言い、過ちをも正当化した。


 私は堕落した彼女の穢れを浄化し、天界に戻した。

 何度も、それを繰り返した。


 そうする度に、彼女は私に訊くのだ。


「私は正しいことをしているのだろうか」と。


 それに私はいつも、こう答える。


「君は間違っていない」

「君は正しい」


 何度もそう言い聞かせる。

 何度も何度も。

 彼女が安心するまで。


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