表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神が創りしこの世界  作者: 小林マコト
血まみれエンジェル
13/45

 彼はそんな計画を立てた神々と天使たちに、そんな事は無意味だと、そんな事はできやしないと悲しげに笑った。彼が言うのだからあたっているのかもしれない。けれど神々と天使たちは諦められなかった。どうしても、彼女のためになる事を少しでもしたかった。

 彼女は世界になくてはならない存在。初代創造主である彼女がいなくては、世界は成り立たない。

 何よりも、神々や天使たちに、よく慕われていた。


「……どういう状況だ、コレ」


 混乱。

 落ち着け。まず状況把握を。


 問い、なにがどうしてこうなったんだ。

 答え、知るかボケ。


 私の目の前には、ミサイドが居る。

 いつものミサイドではない。


「……血まみれだ」


 なにがどうしてこうなったんだ。

 どうしてあのミサイドがこんなボロ雑巾みたいになってるんだ。


「……私に向かってボロ雑巾だと?」

「ごめん。口が滑った。喋ってないけど。ほんとごめん。悪かった。すまない。謝るよ。許してくれ」


 ちょっとまて。

 今こんなことしてる場合じゃないだろ。


「ミサイド、なにがどうしたんだ。どうして血まみれなんだ。死ぬの? え、死ぬの?」

「永遠を与えられているから、死ぬことはない。ただ、少しまずいな」

「何がだ」

「悪魔の穢れを多くもらってしまった。気をつけていたつもりなんだがな」

「わぁ、ミサイドでも穢れるんだ。すごいすごい。一回その悪魔に会いたいものだ」

「残念だな。もう私が浄化した」


 ああ、会えないのか。

 ミサイドが殺しちゃったのか。

 残念。


 にしても、ここ最近のミサイドとはどこか違う。

 ミサイドは、神になって、元々持っていた浄化のチカラを取り戻したんじゃなかっただろうか。

 だから、もう穢れることはないとかどうとか。


 あ、穢れはするんだった。

 穢れるけど、それを浄化できるんだった。

 そっちでもいいけど。

 天使になるときに、別に必要ないんじゃないかと思って代償として現創造主に預けたとかなんとか。

 よく分からんけど。


 悪魔とかなら浄化できるらしいけどね。

 自分の穢れは、元々の浄化のチカラじゃないと駄目らしい。


 でも、ちょっと待て。

 チカラを取り戻したなら、これくらいなら、浄化できるはずじゃないのか?

 …………。

 私の中に、ひとつの答えが出た。


「ミサイド、お前、過去のミサイドだろ? 大天使様だった頃の」


 そうとしか考えられん。

 神になったミサイドなら、こんなに穢れを引き連れたりしない。

 汚いとか言って浄化するもん。

 多分。


「よく分かったな。正解だ」


 ほら当たった。

 大天使時代のミサイドは、浄化のチカラを持っていない。


「で? ミサイド。何故ミサイドから見たら未来である私のところに来た?」

「この時代のお前なら、浄化できるだろうと思ってな」


 時代て。

 ミサイドと出会ったときからあまり時間はたってないぞ。

 一年くらいじゃなかっただろうか。


「天界に帰って浄化したら?」

「この穢れは強すぎる。天界に持ち帰るわけにはいかない」


 なんだそれ。

 私のとこには持ってきておいてか。


「いや、でもね、ミサイド。私浄化の仕方なんて知らんけど」


 言ってから、思い出した。

 この間ミサイドに教えてもらったんだった。


「前言撤回。私もしかしたら浄化できるかもしれない」


 ということで、私は風呂桶を持ってきて、その中に冷水を入れる。

 あーでもなー。痛いんだよな、これ。


 左手の親指あたり。

 そこを少しだけ傷つける。

 血が少し出るくらい。

 それくらいの傷。


 滴り落ちる血を、水の中に落とす。


「はい完成」


 ミサイドを風呂場に連れてって、服は着たままに、私の血が混ざった水をかける。

 これで、大丈夫らしい。


 私の血には、特殊な血が混ざっていて、浄化のチカラが少しあるらしい。

 というか、かなりのチカラらしい。

 意味不明だけども。


 そのチカラを使えば、どれほどの穢れでも浄化できる。

 まあ、血を流しすぎたら私が死ぬからそんなにこのチカラは使わないけど。

 痛いし。


 浄化されたミサイドは、過去に帰って行った。

 何しに来たんだ本当に。


「ということがあったのですよミサイドさん」


 翌日。

 この時代のミサイドに言ってみた。

 何の反応も示さないだろうなーなんて思ってたけど。


「そうか、昨日だったのか」


 なんて。

 言いやがった。


「どういうことか、説明してはくれないか」


 説明を求める。

 私の身に起こったことなのに、もしかしたらこいつ確信犯か?

 私が戸惑うことを知っていて。


「いや、あのときは本当に危なかった。もう少しで堕ちてしまうところだったんだ」


 天界に持ち帰るわけにもいかなくて、本当は嫌だったらしいけど、未来の私のところまで時間を飛んで来たらしい。

 私はミサイドの命の恩人ってことか。

 知らないけど。


 でもまあ、過去の大天使ミサイドに会えて良かったんじゃないかなーとも思う。

 時間なんて飛べないから。

 もう二度と見れないはずの大天使時代のミサイドに会えたし。

 全然今と変わらないけど。

 服装も黒だし?

 髪も黒だし?

 目は、まあ、今日は藍色だけど。


 昨日はちょっとした、非日常だった。





      血まみれエンジェル  完

(それにしても、ミサイドでもあんなに穢れるんだ)

(悪魔は穢れの塊だからな)

(あのときのミサイドも穢れの塊だろう)

(まあ、そういう言ってみれば、そうだけどな)

(え、認めた?)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ