赤ノ断罪 十
「ふむ。ちと、遊びがすぎたようじゃの」
その言葉に視覚情報ウィンドウの中にいるまいんちゃんが同調する。そこには先程のような緩い空気は一片足りとも存在していなかった。
「その意見に同調します。
こちらの想定よりも遥かに速い速度で状況が加速しています」
二人の目線の先が示すものはそれらの言葉を裏付ける『モノ』だった。
ゆっくりと立ち上がる赤濡れの竜躯の胸に青白い光が浮かぶ。
それはまるで身体の内側から透けて見えるように不気味な程に美しい青キ光を放っていた。
同時に先ほど『巨大な小太刀』にて穿たれた胸の穴の周囲の肉が蠢きゆっくりと盛り上がりつつある。
「ちっ、遊んでいるつもりはなかったんだけどな。
メイルッッッ、まいんちゃんっっっ、一気に叩きこむぞッッッ!!」
俺は二人が軽く頷くのを横目で見ながら紅に濡れる竜躯に突進する。
とにかく相手の自動回復を上回る攻撃を一気に叩きこまなければならない。
前方で炸裂する凄まじき咆哮。続いて空気を震わす衝撃波と共に無数の赤き雷が宙を滑りながら俺目掛けて飛来する。
夢幻採掘を振るう為に駆ける速度を緩めようとする俺の後方で裂帛の気合が轟き渡る。
「任せいッッッ!!」
メイルが胸の前で複雑な印を結ぶ。
一瞬後、大地から無数の針状の物が舞い上がり、宙をジグザグに蛇行しながら向かってくる紅の稲妻をその場にて天穿つ黒き円柱に化して無効化する。
ありがたいっ。
次の瞬間、俺の頭上すれすれの空間を斜め上から叩き落される錆刃と逆血棘に彩られた巨大なる尻尾が掠めて、俺の髪を激しく揺らす。
「…………」
む。
眼前で背中を見せている巨大な竜躯が高々と跳躍する。
咄嗟に圧殺攻撃を警戒して後方に飛び退いた俺の目の中に向こう側に飛び退く『赤ノ断罪』の姿が飛び込んできた。
「周囲の地面に血冥忌使陣が発生します。
足の操作は受け持ちますから防御をお願いしますッッッ!!」
最早インターフェースの領分を超えているであろうまいんちゃんの申し出を俺は当然の如くに受け入れる。
「オーケー、任せたッッッッ!!!!、そして任されたッッッッッッッ!!!!」
辺りの地面から一斉に赤黒い液体が染み出す。
それはやがて内側にゆっくりと溶け出しやがて黒い淵円と成す。
一瞬にしてここは半径三メートル程の昏キ穴が充満する魔地となりおおせた。
途端に俺の両足がまるで虫喰い穴の様に大地に穿たれた黒穴と黒穴の狭間の細い削道を寸分の狂いもない足取りで進んでいく。
勿論、俺には自分の両足の妙技に見とれている暇は与えられなかった。
穴の縁に指か掛けられた。
皮が剥がれ、赤黒い腐肉がまとわりついた奇妙に白い指の骨。
動く度に白いものがぽたぽたと落ち蠢き、更なる汚汁と腐臭を撒き散らす。
白い髑髏に脂で固まった黒髪がこびりついて両者の色の対比をよりおぞましき様相に彩っている。
落ち窪んだ眼窩は何も写さず、ただひたすらに人の世を妬み嫉み呪っていた。
元は壮麗な装具だったのだろう、薄汚れた純白と黒ずんだ真紅で構成された総身甲冑の亡骸は無残にも穴だらけになっており、その下の主人の屍体のさまを空け晒していた。
正に許されざる屍体のような人の形が地の底より大勢這い上がって来た。
錆びついた騎士剣の腐刃が持ち主の長髪を絡めせながら横殴りに俺の足元目掛けて薙がれるのを夢幻採掘の一撃にて無に還す。
何本もの指が俺の足を奈落の底に引きずり込もうと伸ばされ蠢くのをまいんちゃんが華麗に避け、時には奴らの身体を踏み台にしながら神業的足取りで進んでいく。
眼前に立ちはだかる巨大な忌使が茶色く薄汚れた頭髪を振り乱しながら斧剣を大上段から振り下ろす。
その無骨な一撃を夢幻採掘にて打ち消しながら奴の足もどめがけてスライディングをぶちかます。
空中にて倒れ伏す巨大な屍体と地面との僅かな隙間に俺の身体が滑りこむ。
「うぉぉぉおおおおおおおおッッッッ!!!!」
眼前から雨のように俺の身体に降り掛かってくる蛆やら腐肉やら汚汁などを夢幻採掘の全力連続行使にて全て消滅させこの死地を脱する。ふー。思わずまいんちゃんもふー。
続けて空中から霊銀の巨大な板が次々と降ってきて血冥忌使陣が穿った昏き穴が塞がれていく。
「サンキュー、メイルッッ!!」
さすがにこれだけ大容量の霊銀を扱うのは骨が折れる様だ。軽く息を整えるメイルの姿が目に入る。
だが、俺の言葉に八重牙をキラリと見せつけながら軽く答える。
「なんの、殿方の三歩後ろに控え守るは『れでー』の嗜みじゃッッ!!」
「それでは足、お返ししますね? ほいっ」
うぉっとっとっと。
「助かったよ、まいんちゃん。さんきゅーな。
じゃ、行くぜッッッ!!!」
「はいッッッ!!!」
更に後方に飛び退こうとする紅の凶竜の四足が大地に縫い付けられる。
地から生える霊銀の掌ががちりと奴の足を掴んでいるのだ。
しかし、紅の断罪者の剛力はそれらを一瞬にて踏み千切る。
だが、その一瞬が命取り。
「うぉぉぉおおおおおおおおッッッッ!!!!」
凶悪な凶逆刃が生え揃う巨大な前足を夢幻採掘にて薙ぎ落とす。
その光景に一瞬だけ己への嫌悪感が胸を刺し貫く。
俺はその感情をあえて無視してぐらりと揺らめく眼前の紅に濡れる竜躯に意識を集中する。
そして夢幻の連撃を叩きこむ。
夢幻採掘が直撃した箇所を中心に赤濡れた鱗とその下の血肉が一瞬にして無に還される。
だが、無に抉られた箇所の境界線から瞬く間に肉が血が鱗がぞろりと生え蠢き、穿たれた箇所をあっという間に満たす。
「はぁぁぁあああああああッッッッ!!!!」
メイルが胸の前で両腕を交差し指で印を結ぶ。
大地から霊銀の千ノ刃が天に向かって奴の身体を刺し貫く。
無数の刃によって串刺しになる巨大な影が夕暮れの宙に浮かんだ。
しかし、『赤ノ断罪』の竜躯から青白い光が洩れ輝き、自らの身体に突き刺さった霊銀の刃を流体に変換し自らの血肉で塗り潰す。
地上にゆらりと降り立った紅の凶竜が屹立する。
その腹部には青白い光が先程よりも強く輝いていた。
「むぅ……」
メイルがさすがに片眉をしかめる。
「大変ですッッッ!!! 前方に存在する『赤ノ断罪』の腹部から夢幻エネルギーの初期生成粒子である崩子融合現象が観測されましたッッッ!!!!
このままでは『赤ノ断罪』は無限の生命力と無還の力を手にしてしまいますッッッッ!!!!」
まいんちゃんの切羽詰まった声が響く。
マジか。
明らかにやばそうな単語が並んでいるんだが……具体的にそうなるとどうなるんだ。
聞かなきゃいけないんだけど出来れば聞きたくない。
そんな思いをよぎらせる俺を軽く睨んでまいんちゃんが言葉を続ける。
「永続『ベホマ』と無差別確定『ニフラム』です。
つまり、永遠にHPが減らない上にこちらを確実に無に還す攻撃を得てしまうんですッッッ!!!!」
おいおい、ふざけんな、『ボス』で『ベホマ』を使っていいのは『オリジナルシドー』だけだっつうの。
ってか、『ニフラム』って使われる身にしてみればめちゃくちゃ恐怖感がある恐ろしい力だったんだな。
「笑い事ではありませんッッッ!!!
このままではこの世界は、この仮想ゲーム世界の人達は皆殺し、どころかこの世界そのものが全て消滅してしまいますッッッ!!!!
推定終末時間は約一分、後六十秒しかありません。
それまでに何としてでも『赤ノ断罪』を倒して下さいッッッ!!!!」
まいんちゃんが視覚情報ウインドウの中で絶叫する。
「彼奴相手に六十秒で方を付けろ……か、無理な願いは通らぬが道理じゃがの」
口調とは正反対に八重牙を口の端から覗かせ不敵な笑みを浮かべ霊銀種が優雅に優美に俺の横に立つ
「誰かさんによると俺の夢幻採掘は理の道から外れているらしいな。
と、言うことはだ、この俺が無理を押し通しても問題は無いわけだ。
いくぞッッッ!!!!!」
俺は眼前で不気味に屹立する赤ノ断罪に向かって突撃する。
メイルが俺の斜め後ろにぴたりと付き従う。
「あの青い光の箇所が無限エネルギーを練り上げている座標軸ですッッッッ!!!!
全ての数値、全てのパターン、いえ、何よりこの私の勘が、あぁぁあああああッッッもぉぉおおおッッッ、とにかくこれは確信デスッッッッッッッ!!!!!!!!」
まいんちゃんの半ば裏返った悲鳴と共に視覚情報ウィンドウに標が表示される。
赤ノ断罪の腹部で不気味に明滅する青き光に。
残り五十秒―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
眼前の紅の断罪者が四つん這いに戻る。
昏く淀む竜眼が軽く細められる。
瞬間――
真白き閃光が俺の足元、何もない中空を超々高熱で焦がす。
メイルの手によって俺は一瞬にして空に引き上げられていた。
その古の顎から吐き出される真の火が今さっきまで俺が存在していた空間を穿つ。
地面と並行に発射された真の火が遥か遠くまでの全ての建造物の壁を円形に蒸発させながらそのまま地平線の向こうに消える。
「はッッッッッ!!!!!!」
メイルが強く叫ぶと同時に『赤ノ断罪』を中心にした巨大な螺旋階段が大地から生え伸びる霊銀によって作り上げられる。
俺は巨大な螺旋階段に着地してそれを一気に駆け登り頂上から翔び落ちる。
残り四十秒―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『赤ノ断罪』がその竜躯を再び起こし頭部を天に向ける。
赤濡れた真紅の口蓋の中に光の粒子が収縮し収斂するのが目に入る。
宙を落下中の俺目掛けて白き閃光が発せられる。だが、その寸前にその竜躯がぐらりと傾いていた。
奴の前足を霊銀の小太刀にて切り落としたメイルが視界を掠めて天に昇る真の火の向こう側に見えた。
「うぉぉぉおおおおおおおおッッッッッ!!!」
落下しながら奴の脳天から足元までもを夢幻採掘にて切り下ろす。
しかし浅い。
腹部にぼんやりと見える青き光には届いてない。
すぐさま止めの一撃を打ち込もうとする俺の斜め上から禍々しい凶爪をぎらつかせながら紅の前足が振り下ろされる。
「防ぐッッッ!!!!」
地面から屹立した霊銀の掌がその攻撃を受け流す。
続けて反対方向からも逆棘混じりの前足の攻撃が振り下ろされる。
「夢幻採掘ッッッッ」
その攻撃を無に還し凌いだ瞬間。
眼前から真の火の閃光が力の硬直時間中の俺の頭に目掛けて放たれる。
「いかんッッッッ!!!!」
「いやぁぁああああああッッッッ!!!!!」
メイルの警告とまいんちゃんの絶叫が響いた瞬間――
俺の左足の下の地面が微かにくぼみ俺の身体は傾く。
顔の横すれすれを全てを燃やし蒸発させる白き閃光が周囲の空気を焦がしながら一瞬にして後方の建物を穿ち消し去る。
「……………」
残り三十秒―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「すまん、ワシの技はたいみんぐがずらされた連携攻撃とはどうやら相性が悪いようじゃ。
硬直空けじゃと今のようなほんの少しの霊銀しか扱えん。
それにそろそろ霊銀が、の」
メイルが『赤ノ断罪』と距離を取りながら語りかけてくる。
俺もそれに倣って三歩程、後ろに下がって様子を見る。
目の前で今しがた与えた手傷がみるみる塞がっていく紅の再生者の姿が屹立する。
その姿は何をやっても無駄だ、とでも言うように不遜で傲慢な雰囲気を漂わせていた。
「これは、ちと……まずいかも、の」
「あと、……三十秒を切りました。はっ、はっ、はっ」
さすがのメイルにも弱気の気が出てきたようだ。
まいんちゃんも意味もなく呼吸を区切り、極度の緊張状態が伺える。
さてどうする?
材料は揃った。推測も立てた。そして実証されている、と思う。すくなくともこれまでの場面では。
あとは。
あとは、そう。
あとは、そう、努力と根性と思い切りだ。
「考えがある」
残りニ十秒―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺は『赤ノ断罪』を見据えながら二人に語りかける。
まいんちゃんも自らの胸の前で片方の拳をもう片方の掌で包み握りながらうんうんと頷く。
俺の心を先読みしたのかメイルが視線を『赤ノ断罪』に向けながら口を開く。
「ふむ、男子三日会わざれば刮目して見よ、とはよく云うたものじゃが。こと主様に関しては三日ではなく半刻じゃな」
「俺に二人の命を預けてくれるか」
「ふふん、既に我が生命の八割を主様に捧げておるのじゃぞ? 残り二割を預けることになんの躊躇いがあろうや、の?」
「わ、私は拓也さんとはニ心同体ですッッッ。つ、ついていかせて、頂きまぅ」
艶然と華やかに微笑むメイル、語尾を噛むほどに震えていながら気丈に振る舞うまいんちゃん。
今確信した。
俺は二人の事が好きだ。大好きだ。
二人の顔がさっと上気する。
そして俺は自分の考えを心の中で示す。
二人はひどく驚いた後に何も云わずに首を縦に振ってくれた。
ありがとう。
残り十秒―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「攻撃チャンスは一回のみ。さくっと決めて世界を救っちゃおうぜッッッッ!!!!」
「承知ッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「はひぃぃぃぃいいいいッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺は真正面から眼前に屹立する『赤ノ断罪』に突っ込む。
先程と同様に右斜め上から凶悪な逆棘に塗れた前足が俺に向かって叩き降ろされる。
「はッッ!!!!」
メイルの短い気合の声と共に地面から生えた霊銀の掌にてその攻撃はいなされ捌き流される。
そして左斜め上から唸りを上げて巨大な前足が俺に向かって振り下ろされる。
ここまでは予定通り。
落ち着け。
ギリギリまでひきつけろ。
寸前まで。
歪んだ逆棘が眼前に迫る。
その背後に大きく開け放たれた顎が。
赤濡れた口蓋の中に白き粒子が収斂するのが目に入る。
震える歯牙を砕く程に噛み締める。
胸の深奥が崩れるのを支え上げる。
手の中の相棒を全力で握り締める。
喉奥が締まるのを無理やり開ける。
恐怖に崩折れる両足に活を入れる。
そして、俺は全身を縮め、捻り、全ての力を溜めた状態で夢幻採掘を振るった。
無駄な力を極力使わないように。
次に取る行動の邪魔にならないように。
最小限、最低限、身体のスレスレの位置にてピッケルの切っ先をまるで反撃の様に固定しながら。
「神さまお願いしますッッッッッ!!!!!!」
視覚情報ウインドウの中で事もあろうに『神さま』に祈るまいんちゃんの姿が見えた。
両足の下の地面に堅い霊銀のスターティングブロックが作成されるのを足裏で感じた。
さんきゅーな。
見事、ピッケルの切っ先が巨大なる断罪の前足を消滅させる。
同時に、空気すらも焦げ灼き貫く超々高熱の真の火の奔流が俺の身体を襲う。
暮れなずむ瓦礫の山の狭間を。
廃墟と化したアークガルドに。
『赤ノ断罪』の顎から一筋の白き光が流たれる。
その前に立つ一人の男のシルエットを浄火の炎に呑み込みながら。
真の火の放射は今までに三回。
そして三回とも一秒以内の放射で終わっている。
理由は推測できる。
必要が無いからだ。
超々高熱のあの攻撃は対象物を一瞬にして蒸発し、消し去ってしまう。故に放射は長くする必要が無い。
次の行動の為に、或いは消耗エネルギーの為、もしくは反作用の力の制御。
俺は推測した。
四回目の放射も一秒以内に終わると。
俺は自らの生命を差し出してその賭けに乗った。
白き光は消え失せた。
そして『採掘終了直後の一秒間の無判定時間』が終わった俺は力の限りに疾走る。
奴の無防備な腹部に宿る青き光に。勝ち誇った『赤ノ断罪』の『夢幻エネルギー』を叩き消す為に。
無判定時間を確信したのは三回目の真の火の時の夢幻採掘の直後だ。
超高熱な筈の真の火が顔の掠める様に通ったにも関わらず俺は高熱どころか熱風すらも全く感じなかった。
その前の攻防で夢幻採掘を使わなかった時に奴の尻尾が俺の頭上すれすれを通り過ぎた時には俺の髪は激しく揺れ、豪風もしっかり感じた。
だが、更にその前の夢幻採掘で黒き雷を消し去った直後では俺の髪すれすれを奴の攻撃が掠めたにも関わらず全く烈風を感じなかった。
そして、最初期にて地を這う黒き雷がニ連続で来た時の硬直時。あれは跳躍が間に合ったんじゃない。無判定時間中だったから攻撃が『すり抜けた』んだ
俺は、以前に通常の採掘をしていた時にピッケルを振り下ろした直後に撒き散らされる細かい破片のことを思い出していた。
それらの破片はピッケルを振り下ろした直後から周囲にばら撒かれているにも関わらず決まって一瞬遅れてから身体にぱらぱらと当たっていた経験の事を。
力の硬直時間が解かれてから必ず身体に当たっていた事を。
(この仕様はゲームの開発初期段階でのテストプレイヤーのあるレポート書を元に導入される事になった。曰く採掘時の破片が身体に当たるとけっこう痛いと。
最初は破片の物理計算やら条件分岐やらで正面から取り組もうとしていた担当プログラマーであったが、次第に納期というプレッシャーが彼を押しつぶした。
困った彼は採掘直後に一秒間だけプレイヤーの当たり判定をゼロにする事を考え付き実行に移した。
一種のいんちきであるが戦闘モード中に採掘は出来ない点、そして一秒間だけの効果という事もありとあらゆるチェックをすり抜けて(もしくは見逃されて)実装されてしまった)
例え思考加速で技後硬直は短くなっても、採掘終了直後の無判定時間は一秒のままなんじゃないかと俺は推測した。
全ては推測と推測を絡めた推測が導き出した推測。
だが、推測は事実となった。
頭上から断罪の竜眼が見下ろしてくる。
目が合った。
何も読み取れなかった。
眼前の青白く光っている腹部を見る。
俺は今、生まれて初めて『自分の意志』で他者を弑す。
それだけは忘れるな。
「あと一秒でぅぅぅぅううううううううッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」
「いけぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」
まいんちゃんが絶叫する。メイルが叫ぶ。
俺は全ての思いを胸に抱きながら眼前に見える青白く光る腹部、標目掛けて翔ぶ。
「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」
手にしたピッケルを思いっきり振り上げ力の限りに叫ぶ。
「夢幻採掘ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
渾身の力を込めて振り下ろしたピッケルの切っ先は標の中心、青キ光を放っている『赤ノ断罪』の腹部に深々と突き刺さる。




