ゑ21! 「罪を背負って立ち上がる為の勇気なら」
「…んー……ふゎぁ~…」
朝、甘い良い匂いで目が覚める。
「良く寝たなー………」
少しぼーっとするが、まぁ、大丈夫だ。
ちなみに清水も一緒に寝ていた。
子犬の様な可愛い清水は、見ていると我慢がきかなくなってしまう。
「えいっ!」
【うわっ!ななな何だ!ぐっ、潰れる…】
清水の上にダイブしたのだが、まぁ当たり前に清水を起こしてしまった。
【るる瑠璃、おまっ、裸なんだから、もう少し遠慮しろっ、遠慮!】
清水が慌てた様に言うが、気にしない気にしない!
だって子犬と遊んでるだけだもーん!
「起きたかなー?っとと、お取り込み中だった…?」
青柱が寝室のドアから顔を覗かせる。
「ううん、大丈夫だよ」
そう言って、ベッドから飛び降りた。
青柱は苦笑して、半分ふざけたしかめっ面をする。
「全く…年頃の女の子が、裸ん坊ではしたないぞ?俺じゃなきゃ、襲ってる所だ」
「あなただから、瑠璃も服を脱いでるんですよ?知らない人の前でそう簡単に脱ぎませんって」
そう言いながら、服を着ていく。
青柱に見られてはいるが、何故かこの人は平気だ。
こちらを見る目は、軽薄な雰囲気とは裏腹に、誠実で優しい目をしている。
服を着終わると、青柱が問いかけてきた。
「俺、お菓子とか、デザートしか作れないから、朝はホットケーキだけど、良いかな?」
「はい、もちろんです!」
ホットケーキの匂いだったか。
凄く良い匂いで、お腹がまた昨日みたいに悲鳴を上げそうだ。
青柱の後に続いて、寝室を後にした。
Σ
「瑠璃も、来てるの…?」
葵の問いかけに、群青が頷く。
「えぇ。……会いたい?」
葵は問いには答えず、しばらく沈黙していた。
やがて、
「私は、瑠璃に会う資格なんて、無いから……」
そう呟くと、膝を抱いて顔を伏せる。
「……資格なんて、要らないと思います」
黛がそう言うと、葵は顔を上げかけたが、やはり顔を伏せ、小さな声で言った。
「…資格は、要らないかもね……だけどさ、瑠璃にあんな顔させちゃったら……私、もう会えないよ………」
「姉さんが責任に感じる必要は無いです。あれは、誰が何と言おうと、ジーニャが悪いのですから」
黛の言葉を聞いて、葵は首を振った。
「確かに、ジーニャが悪いかもしれない……だけど、私は気付けなかった。あの子を、叩いてしまってやっと、あの子がまたあの顔をしてるって気付いたの……」
「あの顔?」
群青が首を傾げ、葵は頭を上げた。
しばらく迷う様な顔をしたが、やがてぽつりぽつりと、瑠璃が自殺をしようとした事を話始めた。
Σ
「あの時、誓ったの………もう二度と、あんな顔させないって」
葵はそう言い、そしてまた顔をうずめる。
「だけど……瑠璃はまた、あの顔してた………。それを私は、叩くまで気付けなかったの」
葵はそれきり黙る。
群青も白柱も、知らなかった瑠璃の話と、沈みきった葵の様子にどう声を掛けて良いか分からず、黙り込む。
そんな中。
黛は、いつものあの顔で、葵を静かに見つめていた。
だが、いつもと違い、目には軽蔑の色を宿している。
口を開いて、姉をはっきりと睨み付けた。
「思い上がりも、甚だしいですね」
「…何ですって………?」
葵が顔を上げる。
「思い上がりも甚だしいと言ったんです。たかが姉弟の分際で、何を言っているんですか」
「………黛、あんたね…」
葵の目に怒りの色が見えるが、黛は黙らなかった。
「姉さんが兄さんを助けるのは、確かに良いことです。ですけど」
はっきりと、口に出す。
「勘違いしない程に分かり合う姉弟など、気持ち悪いです」
「なっ……いくら妹だからって…!」
葵がこちらへ向かって来るが、まだ言うべき事がある。
「勘違いしたら、謝れば良いでしょう!」
葵の足が止まった。
「何を勝手に責任を感じているんですか?勘違いして、弟を叱ってしまった。ええ結構、謝ればすむ話です」
「で、でも……そんな簡単な話じゃ…」
葵が言うが、その言葉に力は無い。
「寧ろ責任を感じるのなら、ご自分の勝手な行動で、家族に心配をかけた事を責任に感じて下さい!姉さんが守ろうとした兄さんは、姉さんが居なくなった時、それはもう酷い顔色をしてましたから。……ですから」
そして、黛は微笑みかけた。
「謝って、終わりにしましょう」
普段見せないその顔は、とても素敵な美しい微笑みだった。
葵はしばらく目を見開いていたが、やがて同じように微笑む。
「……黛」
葵は妹の名を呼び、その小さな体を抱き締めた。
「あんた、言いたい事言うまで、口が悪すぎよ、ばか」
そして、静かに体を離して、すっきりした顔で、
「ありがとね」
と言った。
それから綺麗な涙を一つ、流した。
ゑ
瑠璃は、突然に白柱の部屋に呼ばれたので、少々の緊張と共に部屋の前へ向かった。
部屋の前には、白柱に群青、黛がいて、何やら黛を褒めているようだった。
「あの、お姉ちゃん、大丈夫なんですか……?」
訊くと、純白の御方が頷いた。
「えぇ、貴女の妹様が、とても良い名言を言ってくれたので、もう大丈夫です…………それに彼女は、シルビアの件については、一生罪を背負うと言ってましたからね」
黛が……。
妹の頭を撫でると、黛にしては珍しく、照れている様だ。
「お兄ちゃん…………のエッチ」
「何がですかっ!?」
見ると黛はいつもの顔に戻って、大人しく撫でられている。
……からかわれたんだよな、多分。
釈然としない気持ちのまま、白柱の部屋の扉をノックした。
「……入って」
扉の向こうから、葵の声が聞こえてきて、息を飲みながら扉を開けた。
「ごめんなさいっ!!」
閉めた。
「ちょっ、何で閉めるのよっ!おかしいでしょ!」
「ドア開けたら土下座してるとか引くだろ!普通に!」
うん、扉を開くとそこには、土下座した姉がいたのだ。
引くよね~。
「私は謝ろうと思って……」
「謝るんなら普通に謝れ!俺達兄弟だろうが!」
扉の向こうで、葵が息を飲むような音が聞こえた。
……?今の発言に何かあったか…?
「そっか、そうだよね。……私達、兄弟だもんね………えへへ」
……?
…?
気持ち悪いぞ。
と、扉が向こうから開いた。
気持ち悪さに身構えたが、葵はちゃんと立っていた。
「ごめんね、瑠璃。操られてるなんて気付かなかったから、瑠璃の事、叩いちゃった」
軽い口調にも聞こえるが、瞳は真剣で、しっかりと謝ってくれている。
だから。
「…良いよ別に。つーか、何か気持ち悪い」
「はぁ!?気持ち悪いって何よそれ!?」
葵は怒りだし、食って掛かってきた。
「弟に土下座なんかすんなよ。ふつーしねーよ。それから」
葵を見て、悪戯っぽく笑う。
「家出の理由が弟関係とか、ブラコンかっての」
「……………」
………へ?
予想してた反応と違うんですけど。
顔をしかめて怒るかと思ったのに、なんだそれは。
顔を赤くして、まるで照れてるみたいな………。
「……ブ、ブラコンって何よ………言葉選びなさいよね…」
うん、と言う訳で。
「気持ち悪いわぁぁぁぁっ!」
久し振りな大声を出したのだった。
これで、葵も戻って来た事だし。
一件落着かと思われた。
ゑ
「…あら、何かしら?」
闇と白柱それぞれの隣に、光の様な物が現れた。
「緊急召集、ですって…?」
それは、最高神からの緊急召集を告げるものだった。
月から、光と闇、そして蛇神四柱が離れた。
瑠璃達は、
「いつ終わるか分からないから、それまで月の観光でもしてなさいね」
と、月に残った。
Σ
「上手くいきすぎて、何だか、不安だな」
仮苫はそう言いながらも、ほくそ笑んでいた。
「強敵は去り、残るのは生け贄だけ……ふふっ、出来すぎな状況じゃないか。これが物語なら、きっとあいつらは生き残るだろうな………だが」
「これは物語ではない、ですか?」
台詞を引き継ぎ、ジーニャは少し首を傾げる。
「さて、さて……これは果たして本当に物語ではないのでしょうか?」
その言い方に疑問を抱き、思わず仮苫は声を上げた。
「……何が言いたい」
だが、ジーニャはそれ以上喋らずに、代わりに別の事を言った。
「……美奈、でしたか?貴方の大切な方の名は」
仮苫は突然の話の転換に少しの怒りを覚えたが、何も言わずに頷いた。
こいつと殺り合うのは得策ではない。
ジーニャは仮苫に、貴方なら神とも十分に渡り合えると言ったが、それならば。
自分より遥かに強いこいつは、一体誰と渡り合うと言うのだろうか。
まさか、最高神?
……いや、それは無いな。
とにかく、ジーニャは間違いなく強い。
少なくとも、あの剣神よりは。
ゑ21!終わり
ゑ22!に続く
さて、さて。
何か今から何か起こりそうな予感!
いやー………ほんと、主人公は男なんだか女なんだか…。
…まぁ、タグに[性別不定]を入れてるんで、大丈夫でしょうきっと!
青柱かっこいいよ青柱!
とは瑠璃の意見で。




