ゑ20! 「死者は再び姿を現し生け贄は月に集う」
さて、宣言通り、今回の投稿を最後にしたいと思います!
なので、週の初めの投稿も二話分まとめて投稿!
わーい、フィーバーだー!!
さて、伏線にフラグに散々散らしていった今回の第一期ですが、どの様に完結するのか!?
「着いたよ」
テーベの言葉通り、居住区に着いた。
少し重厚な扉に、木の板で「居住区」と書いてあるのは、少々間抜けな感じがする。
…何か、手抜き感が漂ってるな………。
光神が迷いなく扉を開ける。
「おや、一日に何人も……これは、ミュルス殿?それに……随分といらっしゃいますね…」
真っ白な髪を床まで届くほどに伸ばした、とても美しい人がいた。
…やばい、格好いい………。
ま、待て!俺は男だ!思い出せ、秋川は可愛い、黛は…って妹は違う!!
いや、待てよ?今は体は女な訳で……正常?普通なのかな?
だ、だけど…瑠璃には、清水がいるもん……。
この人は物凄い美形だけど、清水も凄く格好いいもん!
…何か、俺が二人いる気がする……。
俺、クラスの皆にバレた訳だし、男に戻っても良い筈なんだけど……。
もう、何でもいーや……。
「白柱か……すまんが、橘の長女はいるか?」
光神が訊くと、美しい御方は顔を曇らせた。
「彼女は…今は落ち着く時間をあげて下さい。…自らが他の命を奪ってしまったという事実は、重すぎる物です」
…姉ちゃん……。
不安になる。
「あの、瑠璃でも、会っちゃ駄目でしょうか……?」
訊いてみるが、美しい御方は首を振った。
「寧ろ貴女は絶対に顔を見せない方が良いでしょう。……勢いで自殺しかねない」
自殺…?
あの、姉ちゃんが……?
「お姉ちゃん、そこまで……?」
「えぇ…。ただ、群青様ならば、お会いした方が宜しいかと」
美しい御方はそう言って、母を見る。
あぁ、それにしても……何て綺麗な御方だろうか……。
【…瑠璃……気に、なるんだな…】
清水が胸ポケットから沈んだ声を出す。
そうだ、瑠璃には清水がいるの!
「せいみぃー、妬いてるんでしょー。ふふふ~」
そう言って清水をポケットから出した。
ふふふ、見れば見るほど可愛い。
頬擦りをしてしまう。
「…良いんだけどさ、瑠璃、君の能天気振りには呆れるよ……」
テーベの呆れた様な声。
……そうだ。こんな時に俺は何してるんだよ!
姉ちゃんが大変だってのに………。
でもさ、格好いいんだよ!
多分この人、蛇神四柱の中じゃ一番格好いいだろう。
そう、一番格好いい人だから、しょう…が……な…い……。
「大勢だな。何か用か」
無愛想なその人は、美しい赤い髪を胸にかかるくらいに伸ばしていて、素っ気ない仕草は、何故か心に迫る物がある。
黒くも見えたその瞳は、こちらにちらっと視線を向けた時に赤く煌めいた。
「悪いけど、葵、今は寝ちゃってるからさ、少し待っててくれるかな?」
陽気そうなその人は、青い髪は耳にかかるくらいで、爽やかさを感じる。
……今、ウインクしてきた!
海を思わせる様な、爽やかさと深さが同居した目の色が真っ直ぐにこちらを向いて……。
顔が赤くなる。
「…おや、闇の。その節はすまなかったな。おかげで命を狙われて散々だ」
……この人が、瑠璃を咬んだ人だ。話と全く同じ。
だけど、関係ない。
少し危険な香りがするその美しさは、瑠璃の目を奪うには十分だった。
じっと見つめているのに気が付いたのか、黒髪のその人は嘲笑を浮かべた。
……嘲笑?
「咬んだ相手にまで目を奪われるとは……随分と単純な脳の様だ…」
「だって、綺麗で、その…………」
思わず言葉を返そうとするが、自分でも単純すぎると思い、口籠ってしまう。
…………。
まぁ、つまりだ。
蛇神四柱の皆は、とにかく美形だった。
………拗ねた清水が大変だったけどさ。
葵が不安定だというので、居住区に沢山ある部屋の、どれでも好きなので寝て良いと言われた。
「僕は寝なくても大丈夫だよ」
テーベはそう言い、最初の部屋で待機している。
母は、葵が目を覚ますまでは側に付き添っている。
光神は、赤柱とチェスを打っていた。
何だか、皆が取り敢えずは無事で、気が抜けた雰囲気。
……ん?あぁ、黛なら、白柱と何だか難しい話をしている。
………善と悪について語っている様だ。
どうやら、そのまま白柱の部屋で寝るらしい。つまり、葵もいる場所で。
何だか、仲間外れにされた気分だ。
少し寂しい気持ちで部屋を物色しているが、どれも良い部屋であり、同時に気に入らない。
そんな時。
「お?瑠璃ちゃん、こんな所で何してんのー?ひとりぼっち?」
青髪の素敵な人に声をかけられた。
「あ、あのでひゅね、部屋をっ、探してひるんですがぁ、へっと、そのぉ、あんまり良い部屋がなくて、です…」
緊張で全く喋れない。
「部屋を探す、かー。んでもさ~、ここの部屋広いからさ、一人じゃさみしーだろーし、俺の部屋来る?」
「へ…?……へぇぇぇえええ!!?」
さささ、誘われてるぅ?
ゑ
「……良い匂い…」
部屋に入った途端に、香しいクッキーの香りが鼻孔をくすぐってきた。
「焼きたてだよ、食べるかい?」
素手で焼きたてクッキーの乗った鉄板を持ってきた(熱くないんだろうな、きっと)青髪の素敵な人は、一枚のクッキーを掴んで、こちらに向けてきた。
「はい、あーん」
…恥ずかしい……。
「あ、あー……んぐんぐ。………お、いしい…です……」
ほんとに、おいしいよ!
おいしいんだけどさ!
あーんなんてするから、恥ずかしくてあんまし上手く喋れない……。
「んー、焼き加減間違えたかなー?」
はっきりしない物言いを、美味しくないととったらしい。
人指し指に付いた粉を、舐めて味を確認してい………。
舐めたっ!?
あーんをした訳で、そりゃ気を付けはしたけど指と口が触れたりするのは不可抗力で、つまり、それで………。
……間接、キス………?
「あんまり気に入らなかったかな?ごめんね~、自信あったんだけどさー」
謝ってきたので、慌てて首を振る。
「ち、違います!ほんとにおいしかったです!おいしかったですけど………」
「けど?」
わざとだろうか。本当に不思議そうに聞いてくる。
「………あーんが、その……恥ずかしい、から……」
そう言うと、青髪の素敵な人は目をぱちくりさせた。
「ん?恥ずかしかった?……んー、じゃ、おいしかったってのはホント?」
頷く。そりゃもうスゴい勢いで。
だってほんとにおいしかったもん!
多分名店くらいの、いや、それ以上のおいしさ!
「なら、他のも食べてみる?」
そう言われて、クッキー以外にも香ばしい香りが漂っている事に気付く。
それと同時に。
キュゥ~~~
……。
「あはは、いっぱい食べるかな~?」
お腹の正直さが恨めしくなった。
ゑ
「へぇ!じゃ、清水君は万能だったんだね?」
「はい、すごかったんですよ?もうモテモテで……それでも、せいみは私を見ててくれたんです……」
青柱の部屋の一つだという寝室で、楽しくお喋りしている。
部屋の明かりはどういう訳か、照明らしきものも見当たらないのに明るさ調整が自由自在の様で、今は寝る前にちょうど良い暗さになっていた。
【俺は、瑠璃一筋だからな……】
清水が照れ臭そうに、でも真っ直ぐに言ってくれる。
「すごいな。元は、男同士だったんだろ?それでも、瑠璃が?」
青柱の言葉に、清水は少し戸惑い、そして言葉を探すようにしながら言った。
【瑠璃はこう言ったら拗ねるけど………瑠璃は、男のままでもそこらの女の子より、遥かに可愛かったから………】
「なにそれ!ふーん、せいみも古島達とおんなじなんだ~?」
拗ねたふりしてジト目を向ける。
【いや、そのなんだ……からかうとか、そういうんじゃなくてだな………】
「ふふっ、じょーだんだよっ!せーいーみ!ぎゅっ!」
思いっきり抱き締めると、清水は足をバタバタさせた。
「はぁ~。見せつけるよな~………。こっちは寂しい独り身だってのに……」
青柱はため息をつき、わざとらしく落ち込んでいる。
「でも、あなたも凄く格好いいと思いますよ!瑠璃の、好み、というか…ですし…」
「あはは、ありがと。………さて、もう寝るかな?ベッド一つだから、ちょっと狭いかもしれないけど、我慢してね」
………一つのベッド。
誘われてる!多分、絶対!
どどどどうしよう!
「はい、大丈夫です」
正直だな、体!
そして、いつもの様に服を脱ぎ始めると、青柱が目を丸くして慌てた様に言った。
「い、いや、一緒に寝るって言っても、いわゆる性交渉じゃなくて、ほんとに一緒に寝るだけだから!」
「へ…?なーんだ、びっくりしました、もう!」
そうだよねー。
うん、安心だ安心。
下着を外しにかかる。
「分かってないじゃん!何で脱いでるの!?いや、良い眺めだけど!俺にその気は無いからね!」
「へ………?ああ、」
成る程、そう言えばそうだった。
だが、今更な気がするので、裸のままでベッドに潜り込む。
「いつもこれで寝てるから、ただの癖ですよー。…気にしないで下さい」
そう言うと、青柱は困惑した顔になり、やがて苦笑した。
「あーんは恥ずかしいのに裸見られるのは良いのか~?良く分からないな~………清水君、しっかり見てあげないと、その内瑠璃ちゃん悪い人にたぶらかされると思うよ。ちゃんと見てあげるんだ、良いね?」
そんな事を言って、ベッドに入ってくる。
「それじゃ、おやすみ」
まるで美しい音楽の様な声で、意識が穏やかに薄くなっていった。
Σ
「…必要な生け贄は既に揃っている………だが、闇と光、それに蛇神四柱が邪魔だ」
仮苫はそう言い、少し考え込んだ。
「おやおや……片付けてしまえば良いのでは?貴方なら、出来るんじゃないですか?私との契約で、迷わず人を捨て、その上で自らを更に強力に、強大にした貴方なら」
堕騎士の言葉に、仮苫は首を振る。
「あんな奴等を片付ける?冗談はよしてくれ。一対一でもごめんだね」
そして、また考えだす。
「…ま、貴方も十分に強いと思いますよ。【破滅の神兵】を新たな体として選んだ貴方なら、ね……」
ジーニャは呟き、そして仮苫に背を向けた。
ゑ20!終わり
ゑ21!に続く




