表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/35

ゑ18! 「闇と蛇と剣と月と光と骸と零と生と死」

「何で行かせたのよっ!!!」

 思いっきり頬を張られた。

 流石神と言うべきか、物凄い力で、軽く横に吹っ飛ぶ。

「あんたが…あんたが止められたでしょっ!何でっ!」

「やめろ、レリノア!」

 テーベが声を出す。

 目に涙を浮かべたレリノアは、俺を強く睨み付けている。

「今は、瑠璃が言った……仮苫が言った通り、ラムネスの【罰】を解除してもらうべきだ」

「私は良いわよ」

 ……!

 何故、母さんがここに!?

「言ったでしょ、約束の四千年が過ぎるから召集されたんだって………私は、解除しても良いわよ」

「………ならっ、闇の【罰】だけでも、解除して下さいっ!」

 レリノアがすがる様に頼み込んでいる。

 母は厳しい顔をした。

「闇ならもう解除したわ………宇宙で、どちらの【罰】が有効か、知ってるかしら?」

「……闇、でしょっ?」

 だが、母は首を振った。

「確かに闇の方が優先されがちね……だけど、決まってないのよ。だからこそ」

 目が、鋭く細まった。

「闇なき今、光の【罰】、それも、地球より遥かに大きな【罰】がかかる」

「…!で、でも……月齢的には、まだアイヴンは夜だし!」

 レリノアの言葉は、確かに正しい。

 だが、

「月は、私の力の及ばない所。貴方の、つまり光の管轄なのよ…………だから、貴方の父親を説得して、【罰】を解除しないと、彼、間違いなく【罰】で終わるわ………………不死身であっても、二度と動けない程に」

 それを聞いて、レリノアは涙を拭き、立ち上がる。

「父さん、来てっ!」

 そう言いながら、右手の指で陣を描く。

 すると、空中に光る陣が現れ、そして中から厳格そうな人物が出てきた。

「レリノア、一体何なんだ突然!」

「ラムネスのっ、【罰】を、今すぐ解除してっ!」

 レリノアが凄い剣幕で光神に怒鳴る。

 だが、光神は厳しく首を振った。

「ならん!四千年の追放はしたが、【罰】に期限をつけた覚えは無い!」

「なら!」

 レリノアは、手に光の様な物を宿し、それを自らの顔に向けた。

「このままじゃラムネスが動けなくなっちゃう!それなら、私、死ぬから!」

 死を覚悟した瞳で、迷い無く顔に近付ける。

「ま、待て、分かった!」

 レリノアの手を止め、光神が言う。

 光はレリノアの頬に少し擦り、たったそれだけで、レリノアの頬に大きく火傷の様な痕がついた。

 光神は空いている方の手で空中に素早く印を描くと、レリノアの手の中の光を払い消した。

「【罰】はたった今消した!………レリノア、後でお仕置きがあるからな!……ちゃんと、生きてないと、お仕置きも受けられないんだ。分かったか?」

 最後は言い諭す様に優しく、そういう光神は、良い父親の様に見えた。

 だが、父親の顔をすぐに消し、厳しい表情でテーベを振り返った。

「……一体何の騒ぎだ、坊主」



「シガイヤ、だと?」

「知ってるんですか!?」

 驚いて聞き返すと、光神は眉を潜めながら言った。

「奴は、【シュバイツの森】に生きていた人間だ」

「人間?」

 【シュバイツの森】に、人間が…?

「奴は、元は名の高い戦士だった。そしてある日、奴は【シュバイツの森】で恋に落ちた。一匹の、光の精霊に」

 光神は、少しだけ懐かしそうに目を細めて、言う。

「わしの所に真っ先に来て、自分達の結婚を許してくれ、と言いおった。別にわしは、光の神ではあるが、シルビアの父ではないのにな」

 そして、こちらを向いて言う。

「あのシガイヤが怒るとすれば、シルビアの事に相違無い」

 シルビア…光の、精霊。

「闇は光を飲み込んだのかしら」

 母が、淡々と言った言葉が、恐ろしい。

「生み出された闇ならば、光は通せど生かしはしない。それがただの闇ならば、光を通さず命も取らず、ね」

 母が言うそれは、まるで意味は分からなかったが、とても重要な事の様に思えた。

 テーベが、こちらを窺うようにしながら、母に声を掛けた。

「その事なんですが、闇よ。貴女のご子息である瑠璃は、恐らく闇を生み出す者とは少々異なるかと思います」

 その言葉に母が目を鋭くした。

「……詳しい話は後で。今は、剣神と、私の長女が先です」

 そうして、皆を見渡した。

「……ごめんなさいね、普通の人間は、全員ここに残って貰えるかしら」

 その言葉に、皆が声を上げた。

「私たちだって、だいじょーぶです!」

 秋川が、元気に。

「ラムネス君と、橘さんのお姉さんの為ですから」

 縁野は、真っ直ぐに。

「俺だって、やるときはやるぜ!」

 佐野は、震える声で。

「仲間のピンチに、すっこんでろっての?冗談よしてよ」

 初嶺は、強気に。

「私は、行くわよ」

「美穂ちゃんは、俺が守る」

 二人は、仲良く。

 そして先生は―


「だめよ、あなた達」


「そんなっ…先生っ!」

 秋川が言うが、紫野先生は首を振る。

「私が何の為に来たのか、分からない?言ったでしょ、あなた達を守るって」

 そう言って、悔しそうに唇を噛む。

「…私じゃ、とても守れない。そんな場所に、あなた達を送れない」

「っ死ぬ覚悟なら、できてるよっ!守ってくれなくても、だいじょうぶだもん!」

 秋川が、怒った様に言い返す。

 

バシッ

 

 秋川の頬を、紫野先生がはたいた。

 凄く、怒っている。

「死ぬ、覚悟、ですって……」

 紫野先生の目に、涙が見えた。

「何があっても、必死で生き抜く覚悟を持ちなさいよっ!!!」

「……せん、せ」

 秋川が、皆がはっとする。

「勝手に……勝手に死ぬんじゃないの…!……私が、責任もって、守るから…」

 過去に、何かあったのだろうか。先生は、悔やむようにしている。

 そして、先生は涙を拭いて、厳しく言った。

「私達には、余りにも危険な、辛い場所なのよ……だから、止めてくれた。そうでしょう?」

 そう言って紫野先生は、母を見た。

「瑠璃、ほんとに良い先生に教えて貰っているのね」

 母が、こちらに笑いかけてくる。

 そして、申し訳なさそうに頷いた。

「えぇ、残念だけれど、あなた達を守るのも、厳しい場所なの。だから、ここに残ってちょうだい。………レリノア、貴女も」

「…そんな!っ何故ですかっ?月は私の家も有ります!家に帰るなって言うんですかっ!」

 レリノアが食い下がるが、母は冷静に言った。

「なら、家から一歩も出ないでちょうだい。………今の貴女は、不安定よ。私達は月に行くのに、その月が死ねば、私達も無事ではすまなくなる」

「っでも、ラムネスがぁっ!」

 母は、優しく目を細めた。

「私達が、絶対に助けるから、安心しなさい………貴女も、解呪の必要が無くなったのだから、ラムネスの傷を、家から癒してあげて、ね?」

 レリノアはまだ何か言いたそうだったが、やがて頷いた。

「急ぐよ。あいつはもう着いてる筈だ」

 テーベが言う。

「行こうか、月へ」

 そして、レリノアの陣で月へと向かった。

 着いたのはやはり一瞬で、前とは違い、レリノアは誰が乗ろうとずっと泣いていた。


Σ


「おや、珍しい。久し振りの【居住区】ですね」

 白柱が居住区の入口である部屋にいると、一人の男が入ってきた。

「名前は、何と言いますか?」

 男は、白柱の前に跪き、頭を垂れた。

「シガイヤと申します。そちらは、白柱の御方と存じています。………つかぬことをお聞きしますが…」

 再び上げられた顔は、復讐の色に満ちていた。

「ここに、闇の蛇はいらっしゃらないでしょうか」

 その名を聞いて、表情には出さずに少し驚く。

 あの子が誰かに恨まれるとは、到底思えない。だが、彼の顔に浮かんでいる表情は、ただ事ではない。

 さて、どう答えたものかと刹那で考えを巡らした時、

「私、です」

 後ろから、紛れもない葵の声が聞こえた。

 振り返ると、葵と、そして………

「黒柱、何故貴方が彼女と……?」

 葵は、まだまだ許せる状態ではなかった筈だ。

「お前が、闇の、蛇、だと……?」

 シガイヤの掠れた声で、はっとする。

「シガイヤ、何が有ったかは存じませんが、彼女は貴方の追う相手とは違うと思いますよ……彼女は、自らに責を科す人ですから、仮に彼女が原因だとしても、事情が有ったのは間違いないです」

「いいえ」

 葵は、首を振る。

「私はそんなに良いものじゃないです。……初めの内は、加減が分からずに何人も傷付けてしまったし、それでも何も思わなかった。……それに」

 そして、震える声で、葵は言う。

「黒柱から聞いた……貴方の大切な人を、私は奪ってしまった……私は、瑠璃を殺され、復讐をしようとして、そして……」

 葵の目から、涙が零れた。

「私もまた、大切な人を奪ってしまった………」

 シガイヤは、動かない。

「瑠璃に、怒られちゃうな……これじゃ、二度と顔向けなんて出来ない。だから…」

 葵は、嘆願する様に、シガイヤを見つめた。

「私を、殺して…」

 だが、シガイヤは動かない。

 やがて、シガイヤは口を開いた。

「女だとは、しかも子供だとは思わなかった……それでは、斬れない」

 そう言って、上を向く。

「シルビア、すまない。君の敵は、君が斬るなと言ってた物だ。どうか、許してくれ……」

「そんな……!殺して、下さいっ!」

 葵は、地面に頭をつける。

 だが、シガイヤは言った。

「私は愛する人を失った。その気持ちが分かるのならば、」

 葵に背を向ける。

「罪を背負って、生きていけ」

 そう言って、シガイヤは来た扉から出ようとする。

「待て、戦士」

 赤柱が、いつの間に居たのか、シガイヤを呼び止めた。

「お前は、誰から闇がシルビアを殺したと聞いた」

 無表情ながら、恐ろしい程の真剣さが伝わってくる。

「仮苫」

 シガイヤは言いながら、部屋を出ていく。

「仮苫、零徒ですよ」


Σ


「舞台が整った……美奈、待っててね、すぐに生き返らせるから……」

 仮苫は、アイヴンを見つめ、言った。

「神が1.2.3……蛇神四柱も合わせて八人か……」

 仮苫は、目を細めて、アイヴンを見透かすようにした。

「闇の蛇が三匹、ね………月の女神が見えないが…まぁ、問題ない」

 そして、手に不思議な道具を持つ。

 針の様に細い木が、立方体に幾つも組み合わさって出来ているそれ。紋様が、召喚陣の様で、だがそれよりも複雑な陣である事が一目で分かる。

「【桐枝画の箱】…望む願いに相当する代償を払えば、どんな願いも叶う…恐ろしい箱だな」

 呟き、しげしげと箱を眺めた。


「お前も、そう思うだろう?」




「いいえ…寧ろ、美しいとすら、思いますがねぇ」


 仮苫が語りかけた人物は、まるで誰かの死を心から祝福する様な、笑みを浮かべた。




ゑ18!終わり

ゑ19!に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ