ゑ9! 「知らないところで最悪の運命に変わる」
日曜夜八時に四話ずつ投稿。
この文章、訂正します。
日曜夜八時には三話、そしてそれまでに一話だけ。
…まぁ、先読みと言うか……えっと、「続きが気になる~」が一週間もってくれるかが微妙なので、こうさせて頂きます(おい)
ではでは、一話のみの投稿です。
「うっ、…瑠、璃ぃ……ひっく、ご、めん…ね…うっ…瑠璃は、わ、るくっ…なん、か…えっく…ないのっ、にぃ…私、た、たたい、たりぃ……してっ……ぐすっ」
「…葵さん、気持ちは分かるけど、……もう、ずっとそうしてるじゃないか……そろそろ寝ないと、体、壊すよ………」
そこは、橘家の居間。
昨日、瑠璃が襲われて、それから瀕死の瑠璃を急いで家に運んだ。
清水が手伝ってくれた事もあり、自分の魔法で余裕で回復出来る間に、家に運べた。
だが、瑠璃は、そのまま息を引き取った。
気付くべきだった。
運んでいる途中も、一切血が流れない。
二つ空いた穴。
神級の蛇毒、もしくは【高背の血鬼】しかあり得ない。
そして、【シュバイツの森】という事を考えたら、答えははっきりする。
自分が、対応を間違いさえしなければ、この半人間は、その身に流れる神の血で、生き残れた筈なのに。
瑠璃の死が確定してからずっと、葵は瑠璃にしがみついて離れようとしなかった。
「…だ、まって、よっ!!…ぁ、あなたっ……がぁ、瑠璃を…救うんじゃなかった、のっ!!!!」
「…そうだ。僕に、力が足りなかったから……救えなかった。…だから僕が、瑠璃の死の責任を負う。葵さんは、何も悪くない」
そう言うと、葵は更に顔を歪ませた。
「わっ、かってるの、よ……わ、わたしのせいだっ、って、そうっ、言いたいん、でしょっ」
そんな事は無い、と言おうとするが、葵は首を振って耳を塞いだ。
泣きながらも、怒気を孕んだ声で続ける。
「私がっ、悪い、のっ!……瑠璃に、あんな顔、させないっ……てぇ、ちかっ、た、のに!私のっ、せい、だからっ!あんた、はっ、」
その顔は、憎しみをはっきりと浮かべていた。
「……私、っと、瑠璃の、前、からっ…き、えてっ!」
そう言うと、葵はまた、瑠璃にしがみついた。
拒絶の言葉。
救えなかった。
何が死ぬ覚悟だ、そんなの十分でつくわけない。
過信していた。油断していた。
言われた通りに、消えるしかない。
だけど。
その前に。
伝える事が、有る。
「……葵さん、言われた通りに、目の前から消えるよ。その前に、一つだけ………瑠璃を殺した奴は、ガルマラの神の一人だ」
伝えるべき事。
知っておくべき事実。
葵の目が、はっきりと開かれた。
その目が、復讐の色に染まっていく。
……名を、言おうか、言うまいか。
瑠璃は、何を望む。
…レヴェンに頼めば、魂を救えるかもしれない。
だが、あれの毒が届いていたら、それも叶わないだろう。
瑠璃は、復讐を望むか?
…いや、望まない。それぐらいは短い付き合いでも分かる。
「誰なの」
ひやりとした。
葵の気配が、明らかに変わっている。
電気に照らされて床に広がる葵の影が、黒く、更に黒くなっていく。
予想していた質問。
復讐を止めようと考えたのに、言葉が出なくなる。
「誰なのかって聞いてるんだけど」
瑠璃から片時も目を離さずに、葵は言った。
静かに言うその声は、明らかに………危険だ。
どうする。
また自分のせいで、誰かを死に送るのか。
その時だ。
まさに、奇跡としか、悪夢としか、言い様のないタイミング。
葵の影が一層黒くなり、遂には気配に闇が混じり始めた時。
「……うーん…くっは~ぁぁ」
瑠璃の死体が、動いた。
ゑ
目が覚めると、自然に大きくのびをしてしまった。
そして、葵のポカンとした顔と目が合う。
…ほんとにずっと居てくれたんだな……少し感動する。
「る、り………」
掠れた声で、葵が漏らす。
あれ?てっきり悲鳴でも上げられると思ったのに。
葵の顔は、嬉しさしか見えない。
「瑠璃、瑠璃っ、瑠璃ぃっ!!」
「うわぁっ!!」
葵が、抱き着いてきた。
ん?ほんとに驚いて無いのか?訳わかんねーよ。
「瑠璃………生きててありがとね………さよなら」
「え?……何で?」
葵は突然立ち上がり、そして部屋を出ていった。
………???
全く意味が分からない。
と、視界から葵が消えてようやく気付いたが、部屋には他の皆も居たようだ。
黛はソファーの上ですやすや眠っている。この良く分からない妹も居てくれた事に、少し驚き、嬉しくなった。
テーベは、こちらを信じられないと言う目で見て、ずっと固まっている。
ラムネスは、あまり驚いていない顔で、目一杯喜んでいた。
そして、清水は………。
どうやったかは分からないが、普通の狼より少し大きめの【狼】が、黛の横で寝ていた。
その姿を見て、安心する。
………無事だったんだ。
「な、なんで………君が……」
テーベが震える声で言う。
「説明は、二人が起きてからにしないか?」
テーベは答えず、ただ呆然としているようだった。
バカだ、俺は。
葵の不審な行動を、気にかけず、後回しにした。
そのせいで、あんな事になったのだ。
だが、これは少し後の話になる。
俺は、黛を起こしに掛かった。
「おーい、黛、起きろー」
「……朝ですか……?まだ早いです…………………お兄ちゃん!?」
「お兄ちゃん!?」
お兄ちゃんっつったか?しかも反応がすげぇ、面白すぎる。
「おぉおお、お兄ちゃん、何で生きてるの!?…………何ですかその胸は」
黛の珍しいテンションはすぐに不審な顔に変わった。
黛は不思議そうに小首を傾げる。
「女……生き返り……魂は体に確認出来なかった…………、ああ、成る程です」
何を納得してんだ?
……というか、寝惚けてるなコイツ。
胸とか女とか、訳分かんない事…
……分かんない事……
「ってなんじゃこりゃあああ!!!!!」
俺、橘 瑠璃は。
女になっていた。
【騒がしいな……何なんだ】
清水が目を醒ます。
……学校までに説明終わるかなぁ…。
ゑ
「と、言うわけだ」
話終わると、テーベが口を開く。
「…今の話に依ると、君の体が女になった理由が分かったよ」
話を聞いて落ち着きを取り戻したテーベは、少し疲れた様子だった。
「ミーナに預けてある体っていうのは、間違いなく生まれた時に性別を変更した時の物だ。だから、これが君のほんとの体とも言えるよ」
「…よーするに、一週間は女って事かよ…………」
確か体が出来るまでに一週間は掛かると言っていた。
「まぁ、最高神に頼んだんなら……あの人がちゃんとやれば、瞬きの間に出来てるんだけどね」
「ちゃんとやれや最高神!」
何だその落差!!瞬きが一週間っておかしいだろ!?
「ただ、分からない事が一つ有る」
俺の叫びを無視し、テーベは続けた。
「何故、君の魂が抜け出せたのか、だ」
………魂が抜け出す?
幽体離脱みたいな物だろうか。
「抜け出した感じは無かったけど?そのまま気絶したんだし」
「……青柱は…無いな。アイツならまず咬み付くのを止める。同じ理由で白柱は無いから、まさか、赤柱…………?」
テーベはぶつぶつ呟き始める。
そこで清水が、申し訳なさそうにこちらを向いた。………いや、【狼】の姿でも分かるんだよ。
【瑠璃、その、】
「ごめん!清水!!」
先手を取って床に頭をつけた。
いわゆる土下座だ。
【なっ!?…瑠璃、お前は悪くないだろっ!?】
「俺が、操られたりなんてしなけりゃ、お前にあんな事言う筈無かった!!操られる俺が悪い!」
有無を言わさず、畳み掛けるように言った。
【ば、バカか!?俺だってアイツに(抜け殻)を取られなけりゃ、こんな事にはならなかった!】
清水がそう言う。
そういや、【抜け殻】って何だ?
ぶつぶつ言ってるテーベに聞いた。
「ん?あぁ、形だけの人間って事だよ。それを被れば、人間の姿になれる………まぁ、怪物の抜け殻とかも有るけどね」
それだけ言って、またぶつぶついい始めた。
清水の【抜け殻】は、人間を捨てた時のゴミって事かな?
………さすがにゴミ呼ばわりは酷いか。
その時、ラムネスの声が現実を思い出させた。
「なぁー、学校は良いのか?」
…………そうだった。
どうする、ヤバい、どうしよう。
体女じゃん!!明らかに男子制服には邪魔なのが付いてるし!!
………って、ん?
俺、昨日秋川から借りてたよな?
…………………………伏線だったのか!?
「僕達も行くよ。一緒に行って、皆に何とか納得して貰おう」
反省してるのか、テーベがそう言ってきた。
…………昨日の事が有るから、あんまり信用出来ないぞ………。
と、時計を見ると、時間になっていた。
ヤバい、急がないと遅刻する!!
俺は慌てて部屋に駆け込むと、袋を引っ掴んだ。
中身をベッドに引っくり返す。
………やっぱ下着有るんだ…。
どうする…?
「くそっ、ロクに迷う暇も無いなんて!」
ヤケになって下着ごと着替える。
…何だ、やべぇ、ブラジャーの着け方が分からん。
…いや、分かったら困るけどな!
「姉ちゃんっ!」
片手で胸を抑え、かなり際どい格好で姉の部屋に駆け込む。
だが、葵はいなかった。
………先に行ったのか?
単純に、本当に単純に、そう思った。
部屋に戻ってブラを良く見ると、俺が焦っていただけの様で、何とか着ける事が出来た。
慣れないスースーする感覚と共に、スカートで部屋を飛び出す。
玄関に向かう途中、
【俺はインフルエンザだって言っといてくれ!】
と言われたので、慌てながらも返事を返した。
ホームルームまで、後五分。
…間に合わないの確実じゃん!
「俺が送ろうか?」
ラムネスが背中を向けてきた。
少し迷うが、飛び乗ってみる。
次の瞬間、校門の前にいた。
………はやっ!どんだけだよ!
罰については聞いているので、まだ日が浅い朝なのと、満月の翌日だから、これほど早いと言うのが分かった。
ちなみに、テーベはいつの間にか横にいる。
幸い、ホームルームまで時間が無い為か、目撃者はいなかった。
靴を捨てるように履き替え、階段を駆け昇り、教室のドアを開けて、ようやく気付いた。
「言い訳考えてねーじゃん!!」
絶叫し、皆の視線をばっちり集めたところで、今回は終わる。
続きをお楽しみに!(瑠璃「楽しめるかぁ!!!!」)
ゑ9!終わり
ゑ10!に続く
はい、この辺りから伏線&キャラ暴走、増えていきます。
…まぁ、とにかく楽しんでって下さい。
あ、瑠璃達からお知らせです。
瑠璃「えっと、現在は二期の途中まで執筆中だ(2012.6.25)。このペースで投稿すると、第一期が終了してから二期を投稿するまでの期間が、開いちまうかもしれないんだよ」
秋川「もしかしたら、さくしゃが投稿ペースをみなおすかもしれないんだよ!」
テーベ「…ま、僕は作者が奮闘して、第一期終了後も順調に投稿される事を願うよ」
……テーベさん、負担を増やさないで…。




