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【ガルマラ神話】

〈《それ》は、今よりずっと昔、昔の昔のそのまた昔よりももっと前、ビッグバンよりも前にいました。

 いつからそこにいたのかは眠っていて覚えていませんでしたが、ある日突然、目が醒めるような出来事が起こりました。

 ビッグバンが起こったのです。

 その爆発は、光よりも闇よりも疾く(はやく)、世界に広がっていきました。

 《それ》は爆発によって目が醒めた後、取り残された光と闇を見つけました。

 光と闇を従えた《それ》は、何世紀~何万世紀の後に、青い惑星を見つけ、そこに入るように体を小さくしました。

 元々が大きかったので加減が分からず、山々と同じ大きさになるつもりが、山に生えている木よりも小さくなってしまいました。

 闇と光はもっと大きい方が良いと申し上げましたが、《それ》は、「山もこの体もそれ程には変わらん」と言って、聞きませんでした。

 《それ》は、光と闇にアイディアを貰いながら、色々な生物を生み出しました。

 そうしてある日、人間を作ったのです。

 《それ》は、ある大陸に自らの国を築き、そこに人間を住まわせました。

 その国は、後にこう呼ばれる事となります。

 蛇の国【ガルマラ】と。〉


「…とまあ、これがガルマラの最高神、それから群青ちゃんと光神の誕生、そしてガルマラ建国に至る話だよ」

 父が言う。

「……それじゃ、最高神は蛇と考えて良いのか?」

「そうだぞ。とんでもなくデカいらしいが、元の姿には戻らんそうだよ。縮小版なら見ているが、ね」

 ……とんでもなくデカい、か。

 ………蛇は苦手だったり……。

「ちなみに蛇の神は最高神以外にも四体いるぞ」

 父がわざわざ言ってくる。

「……まぁ、最高神も、蛇神四柱も、基本的には人の姿をとってるけどな」

「……それなら良いけど。んで、まだあんだろ?小説的には」

 父が目をぱちくりさせている。

 ………小説?何を言ってるんだ俺は。

「………まぁ、あるぞ。今からするのがお前の友達の話だ」



〈初めの内、神は人間の強さを決めかねて、今の人とは比べ物にならない強さを持つ人間を七体、作り上げました。

 ところが、その七体の内、六体は互いに喧嘩をし、そうして六体とも死んでしまいました。

 神は大して悲しみませんでした。何故なら、その六体はつまらない事で喧嘩をし、自業自得で死んだと考えたからです。

 それから神は、強さを抑え、痛みを感じる人間を作りました。

 残った一体は何故喧嘩しなかったのか、不思議に思った神は、彼に尋ねました。

 すると、

「私には友人がいるので、喧嘩をする気にはなれませんでした」

 その言葉はもっと乱雑で、彼もまた、他の六体のように戦を好む性格であるのが見てとれるようでした。

 友とは?と神が訊くと、突然、近くに大きな魔力が生まれました。

 魔力の塊は人の形を成すと、神に挨拶をし、そうして「自分はこの世界の魔力の塊である」と言いました。

 残った一体は、剣の名手で、鍛冶屋としても有能で、その上、他の六体の長男だった為、神が強く作りすぎて、何と不死身だったのでした。

 そこで神は、この剣使いと魔力の塊にそれぞれ名をつけ、剣と魔法を司る神としたのです。

 それぞれ名を、《剣を繰るもの》【ラムネス】、《魔力》【テーベ】と言いました。

 彼らはそれぞれに恋をし、結婚もしました。

 ラムネスはレリノアと言う月を司る神と、テーベはミーナと言う恋と愛を司る神と、それぞれ結ばれました。

 そんなある時、彼らは蛇神四柱の内の黒柱に、互いに決闘を行うよう、提案されました。

 初めは断っていた彼らですが、黒柱の挑発はとても我慢出来るものではなく、また彼らも好戦的な性格であった為、二人は決闘を承諾しました。

 行われた場所はガルマラの中心に位置する首都ラブルに建てられた闘技場でした。

 剣神と魔法神の決闘と聞いて、多くの人が闘技場に押し掛けました。ところが、不思議な事に他のどの神も姿を見せませんでした。

 人々が見つめる中、勝負は始まりを告げ、そして終わりました。

 気が付くと、始まりの鐘と同時に首都は崩壊していました。

 二神の姿は無く、人々が顔を見合わせていると、そこへ光神と闇神がやってきました。

 「一体何の騒ぎか」と光神が尋ねました。

 共に激怒している光と闇をこれ以上怒らせたくなかった人々は、剣神と魔法神の決闘があり、自分達はそれを見に来たのだと、正直に申し上げました。

 光と闇は不思議そうな顔をすると、決闘とは何か?と尋ねました。

 何と黒柱は他の神に知らせる事をしていなかったのでした。

 二神は激怒した光神と闇神にガルマラを追放され、四千年は戻って来るなと命令されました。

 光神と闇神は、二神が不在の間、剣と魔法の技に優れた者をそれぞれで選び、二神の代わりとして、神にしたのでした。

 追放された二神は、それぞれ“罰”を受けました。

 とっておきの“罰”でしたが、剣神は苦にすることは無く、魔法神は自分の“罰”をあっさり解除してしまいました。

 それ以降、二神の姿をガルマラで目にする者はいませんでした。〉

「分かったか?あいつらは危険なんだ」

「それ明らかに黒柱が悪いじゃん!」

 つーかテーベもラムネスもなに嵌められてんだよ。

「えぇ!?そうだとしても、一瞬で首都崩壊させるのは駄目だろう!?」

 父がそう言うが、敢えて無視する。

「……神の代わりに神にしたってどういう意味だ?」

 すると、父の額に皺が寄った。

「ガルマラは神の制度が適当だからな……瑠璃、頑張ればお前も神になれるぞ?」

「いやいや、別に良いから」

 神とか、まず無理だしな。

「…瑠璃にコスプレの神になって欲しかったのに……」

「そんな役職はありません、藍さん」

 母が戻って来た。

 ……母さんがテーベ達を追放したのか………正直、激怒したら恐ろしすぎて泣くよな………。

「あんのクソ蛇がっ!!」

「うわぁぁぁぁぁん!」

 怒ってるよ!?

 何かすっげえ怒ってるよ!?

「群青ちゃん、落ち着いて、ね」

 父が宥めているが、効き目は無さそうだ。

「瑠璃、ごめんなさいね」

 ………効き目があったのか?

 ……いや、これは宥めの効果と言うよりは、むしろ……しゅんとしている?

「何で謝るんだよ……」

 尋ねると、母は申し訳なさそうな顔をした。

「貴方、体は死んじゃった♪」

「何で嬉しそうなんだよっ!………て、え?」

 どういう、事だ?

「分かるかしら、蛇神四柱ってのが有るんだけど、その一人がとんでもないクズなのよ~」

 ……雰囲気が愚痴ってるおばさんだ…。

「名前、黒柱って言うんだけどね、そいつバカでさ~」

 黒柱、そいつは。

「たまに腹空かせて【シュバイツの森】の怪物とか食べに行くんだけど~」

 デカい、蛇神の一人で。

 テーベとラムネスを嵌めた奴で。

「それでー、バカだから人間味見して~、加減間違えて毒まで回しちゃって、」

 自分は蛇に咬まれた?

「腹と胸貫通して~、テーベが来たけど超猛毒で~、体はそんまま死んじゃって~」

 蛇は、正直、滅茶苦茶怖い。

 テレビでも震えるし、爬虫類館で漏らした事も有る。

 その蛇に、咬まれた………。

「それでー、一番何がムカつくかって言うと~、………そいつが全く反省して無いのがムカつくのよっ!!……………………って、瑠璃?怖がらせちゃった?」

 当然だろ。あんなに激怒してたら。

 だが、実際は、母を怖がっていた訳じゃない。

 俺は、蛇にびびっていて、情けない事に前が濡れていた。

 だって、蛇だぜ?

 ………………情けねぇ………………。



「瑠璃、落ち着いた?」

 母が優しく声を掛けてくる。

 頷いて見せると、安心したように笑った。

 その表情が、少し険しくなる。

「体が死んだ。一応魂は今のあんただから、体は最高神に頼めば大丈夫なんだけど、残念な事にあの人はテキトーだから、一週間は体が来ないかも」

 つまり、一週間はこのまま、と言う事か。

「今の時間は、昨日の夜から約五時間経って、朝の四時だけど」

 ………何故このタイミングで言うのか?

 ってか、思ったより全然時間経ってねえじゃん!!

「今すぐにでも、用意出来る体は有るわ」

 へぇ、じゃ一週間は学校休みか………って、は?

「有るのかよ!?」

「……ミーナちゃんに預けてたのがね………どうする?今すぐ戻る?」

 ………そうだな。

 話によると、皆は俺が魂ごと死んだと思っている様で、葵はずっと俺の死体にしがみついているそうだ。

 いつまでもそんな無駄な事はさせられないしな。

「ああ、戻るよ」

 俺は、頷いた。

 ………あぁ、気付けば良かったのに。

 この時の俺には、余裕が無かったのだろう。

 ミーナに預けていた体という事が、どういう事か分からない程に。





【ガルマラ神話】終わり

ゑ9!に続く


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