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第4章

順子のいる店には、一流の人間が通ってきた。


単なる金持ちを超えて、社会的にも人間的にも「さすが・・」と唸るような人物が集まった。


マスコミにも名の知れたママから、接客のイロハを教え込まれ、自信でも懸命に研鑚に励んだおかげで、順子は店でも1・2位を争う売れっ子ホステスに成長していった。


世の中で、一流の階段を昇っていく人には独特の匂いがする。


誠実、義理人情に厚い、謙虚、豪放磊落・・・・人の目に映る個性は千差万別ながら、上流の人間が放つ芳香は、その世界に慣れ親しんだ人間にしかわからない。


貧しいアヒルの子が美しい白鳥に変身していくような人生の変遷の中で、順子は、もはや隆介の面影さえ思い出さなくなっていった。



そんなある日、パチンコ業界では最大手といわれるチェーン店のオーナーの席に呼ばれた。


そして、創業者の翁の隣で接待客と談笑する青年と目が合った瞬間、順子の身体には強烈な電流で貫かれた。


体内の血が、ドクンドクンと沸き立っていた。



日本人が手を染めたがらないグレーゾーンの多いパチンコビジネスの世界で、会長から全権を委任され、果敢に旧弊をぶっ壊していく業界の荒くれ男・・・韓 泰俊



パチンコ店内に禁煙フロアーを作り、景品コーナーに免税店顔負けの高級ブランド品を揃える・・。


噂には聞いていたが、その辣腕ぶりを物語るように、目の前の精悍な横顔には底知れぬ野心が写し出されていた。


そして、民族の血のプライドを思い出させてくれる“極上の匂い”。


順子は、あっけなく恋に落ちた。



順子と泰俊が共に暮らすようになって、2年の月日が流れた。


その間、楽しいことも沢山あった一方で、在日としての思想的なくい違い、親族の執拗な関与、帰化の問題、お金の工面など、2人の間に小さな諍いが絶えなかった。



やがて、泰俊は頻繁に外泊するようになり、順子は鬱屈した精神状態の中で、現状に限界を感じ始めていた。


そんな矢先、大阪で市議会議員に転身していた隆介が、連れを伴って店に現れた。


順子のその後を知ってか、はたまた偶然か・・・。

いずれにしても、順子の干からびた心に、隆介のやさしい一言一言が絡みつき、染みとおっていった。


「癒されたい・・」


順子は、また再び、抹消したはずの過去に吸い寄せられたいった。

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