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城の中の魔王、外界を知らず!  作者: niposan


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1/1

プロローグ

「やっとここまで来れたんだ……負けるわけにはいかない!」

「絶対に勝って帰るよ!」

「望むところだ!」

「これで倒し切ります……!」


魔王城最奥の「魔王の間」にて、勇者一行と魔王による激しい戦いが行われている。

数多くの攻撃で畳み掛けるも効果はなく、消耗戦になると勝ち目はないと判断した勇者パーティーは、次の一撃に全てをかけると決めた。

彼らの決死の一撃は魔王軍幹部の多くをも葬っており、勝算は大いにある。


「みんな、行くぞ!!」


勇者の掛け声に合わせて一斉に距離を詰める。


「ステータスアップ!!!」

「ターミナル・エクスプロージョン!!!」

「ウィンドバースト・チェーンソー!!!」


魔王は高威力の魔法に防御を余儀なくされる。

その隙に勇者がさらに近づいた。


「これで終わりだ魔王!セイクリッド・ブレード!!!」


辺りが白く明るい光に包まれ、それと同時に大きな衝撃波が勇者を魔王から突き放した。


「やったか!?」


勇者が叫ぶ。

魔王の間に立ち込める砂埃が先程の攻撃の激しさを物語っている。

ここで魔王は勇者にやられるのがお約束のはずなのだが……






「なぜ……まだ立っている!?」

「もう私達の全力は出したのに……」


俺の目の前の勇者たちの表情はまさに絶望。

手はだらんと下がって剣を離し、顔は青白くなってゆく。

これ以上戦える状態にあるとは思えないような状態だった。


「これがお前たちの全力か?」


お決まりのセリフを吐く。

しかし、仲間と同様に目の光を失った勇者にその声は届かない。


反応なし、か。

あれ、俺変なこと言ってないよな。

俺だって生き物なんだ、無視されると悲しいんだけどな……

もしかして気を失ってるのか……?


勇者の目の前まで行ってみる。

パーティーメンバーは泣きそうな顔で後ずさりしたり、気を失ってその場にへたり込んだりしているが、勇者は立ったまま呆然と俺を見ていた。


さすが勇者、他とは違うな。

ん、なんだろう。何か聞こえる。


「どうして……どうして……」


心ここにあらずというところか。

もうこれ以上戦えないなら終わりにするしかない。


「お前が俺に勝てることはない。

お前たちの運命はこの瞬間決したのだ。」


ここまで言っても全然反応がない。

今回もダメっぽいな……

悲しいけどまたね、元気でやってくれ。


「ブラインド・フォール!!」


「いずれまた会おう」



転移魔法が発動する。

勇者パーティーの足元から黒煙が立ち込め、4人全員を包み込んでしまった。

地響きとともに一行を包んだ球が縮んでゆき、やがて消えてしまった。

先程まで激しい戦いを繰り広げていた魔王の間に静寂が訪れた。



俺が使ったのは転移魔法。

この魔法の対象は世界のどこかへ飛ばされてしまうらしい。

俺も食らったことないからわかんないんだけどね。

飛ばされるのは食料も水も無いようなところだろうから死んじゃってると思うけど……


誰もいなくなった魔王城で1人、手を合わせる。

殺し合いは望まない俺のせめてもの弔いだ。

直接手を下すことはなくても、良い気はしない。

本当はどこかで生きてるといいんだけどな……





俺は魔王ノーグ。

人間で魔法使いだった母と魔人で剣士だった父の間に生まれた。

いわゆるハーフってやつだ。


30年前に魔人と人間で大きな戦争があったらしい。

その戦いの中で父は母に一目惚れ。

主戦力だった父が寝返ってしまった魔人軍は一気に劣勢になり、今の大陸中央まで領土を縮小せざるを得なくなってしまった。

要はうちの母が戦況をひっくり返したのか……罪な女だね。


そんな両親は幼い頃から俺に魔法と剣術を教えた。

どちらも共に最高水準の魔法使い、戦士だったのもあって俺は幼い頃からなろう系主人公!!


……だったわけではなかった。


幼くして高難易度の魔法が使えるようになった俺を実戦の想定だと言って笑顔で半殺しにした母親……

村の戦士に勝った、木刀の俺を片方の肘だけで骨折だらけにした父親……


今思えば辛いことの方が多かった気もする。

でも、あの経験のお陰で天狗にならずにすんで何度も命拾いしたと思う。

両親の2人には感謝しないとな。


俺が15歳の誕生日、勝手に俺をリーダーにして2人だけで魔都を制圧。

魔王城も建てちゃって、誕生日プレゼントはお城と「魔王」の名声だった。


そのままの勢いで2人は失踪してしまった。

今、どこで何をやっているのかは知らない。

でも多分、あの2人なら今も元気でやってる。

どこかの田舎で花でも育てているんじゃないか。


こういうわけで、俺は今から15年前に魔王になった。

それ以来たくさんの幹部や部下に慕ってもらっていて、毎日楽しく過ごしている。


そしてさっきのが半年に2〜3回やってくる勇者パーティーとの戦い。

最初は必死になって戦っていたものだが、もう今や息が切れることすらなくなってしまった。

1歩も外に出ず技を磨き続けた成果だろう。


そういえばさっきの僧侶、見たことない服を着てたな……

武器もみんな前回とは違った。

あれが今の流行りなのかな。





ノーグは何も知らない。

両親は人間の街でギルド登録を済ませていること。

ノーグが外では「不死身の魔王」や「不屈の魔王」として恐れられていること。

転移させた全ての勇者たちが莫大な富を得ていること。


15年前、大陸北部の魔都を支配して魔王になったその時から1度も外に出たことのない魔王は知る由もなかった———

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