表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉と終息  作者: 永久の夢P


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

第三章 不穏

これは、平穏から不穏へと少しずつ吸い込まれていく、そんな物語。

 山浦先生が言っていた『全寮制の取り壊し』と、『学校負担での引っ越し』。

 そんなの急すぎて戸惑いが隠せなかった。

 みやびがもし同じ立場だったら、どこに住むのだろう?

 あの時の彼女が私に向けた笑顔は、どこか遠く感じて、何も言えなかった私は不安と焦りでいっぱいだった。

授業を終えて放課後になり、私たちはゲームセンターへと向かった。

 その足取りはとても軽やかで、まるで遠足に行くみたいな感じだった。

みやび「ゲームセンター着いたら何して遊ぼっか?」

 彼女はとても楽しそうにしている。

 その笑顔を見て、私まで楽しい気持ちになる。

詩織「本当にね!着いたらなにしようかな〜」

 私は少し微笑んでみやびに問いかける。

みやび「今私の言ったことをそのまま言っただけだよね!?」

 ねぇ!?と、彼女は続けて言う。

 そんなやり取りが、ごく普通の高校生で、ごく普通の日常。

みやび「あっ⋯!」

 彼女がそう言い、指差す方向へ恐る恐る視線をやると、そこには待ちに待ったゲームセンターへと辿り着いたのだ。

 ごく普通のゲームセンターなのに、学校帰りにゲームセンターへ着くと、とても特別な気持ちになる。

 まるで、私たち二人のためだけに作られた、そんな感覚になる。

みやび「早速中へ入ろうよ!」

 彼女は『もう待ちきれない!』と言わんばかりの顔をしている。

 私はそのまま彼女の勢いにつられて、中へと入った。

 そこには異次元的な世界があった。

 ゲームセンター特有の空間、普段なら滅多に聞かない騒音。

 そしてなによりも、ゲームセンター醍醐味のメダルゲーム。

 その全てが揃って初めて、ゲームセンターなんて呼ばれるんだろうな、と私はそう思った。

みやび「ね!メダルゲームやろうよ!」

 彼女はそう言いながら、メダル貸出機にお金を入れた。

 『ジャララララ』と、排出口から大量のメダルが出てきた。

 みやびは『カップが足りない!』なんて叫んでいる。

 その姿も、その表情も、純粋無垢な子供みたいに、とても楽しそうだった。

詩織「カ、カップ持ってきたよ!」

 私はオドオド焦りながら、ぎっしり入った大量のメダルカップを交換しながら、メダルが止まるのを待つ。

詩織「一体どれくらい買ったの⋯」

みやび「えーっとね、ざっとこのくらい⋯?」

 そう言いながら片手で『一』を表している。

 私は思わずため息を付いた。

 けれど、みやびが楽しいならそれでいいやと、そう思った。

みやび「だって!少ないとすぐ終わっちゃうでしょ!?」

 と、感情論で私に言ってくる。

詩織「またいつでも来れるから、その時買えばいいのに⋯」

みやび「新しく出来た友達と一緒にゲームセンターに行くのは、そのゲームセンターも私にとっては初めての空間になるの!だからいいの!」

 ぷいっと、彼女は頬を膨らませながら、遊びたいメダルゲーム機を探している。

 私はその彼女の気持に共感した。

詩織「そうだね、じゃあ今日は楽しもう!」

みやび「うん!楽しもう!」

 と、さっきまでの様子が嘘みたいに一転した。

詩織「アレ、楽しそう!」

 みやびのその無邪気さな笑顔を見ていると、私まで楽しい気分になれる。

 彼女は、『光の象徴』そのものだった。

みやび「どれどれ?」

 わー!楽しそう!と、その場ではしゃぎながら少し跳ねている。

 その様子は、とても純粋無垢な感じで可愛い。

みやび「さっそくやろうよ!」

 彼女が私の制服の裾をひっぱりながら、半ば強引に引き寄せてくる。

 私たちはその席に着いて、投入口にメダルをカンストするまで大量に入れた。

 ゲームセンターは過去に何度か行ったことはあるけれど、こんなことは人生で初めてだった。

 隣に座るみやびをそっと見ていると、それに気がついたみやびは優しく微笑んできた。

 目が合った私はすぐさま逸らし、メダルゲームの画面を見ると、とても盛り上がっていた。

詩織「わ、なんか来たよ⋯!」

みやび「本当だ!数字揃え〜!」

 と言いながらみやびは、機械に向かって念を送っている。

 私は『確立だから念を送っても⋯』と、言いそうだったけれど、言うのをやめた。

 言ったらまた何か言って来そうだと、そう思ったからだ。

 その時、みやびのすぐ後ろで、誰かが不気味に微笑んだ気がして、後ろを振り返ってもそこには誰もいなかった。

詩織「気のせい⋯か」

 私は小さくボソッと呟いた。

みやび「見て!揃った!」

 みやびが強く私の肩を叩きながら叫んでいた。

 画面を見ると『WIN!』という文字。

 すぐさまメダルフィールド内に大量のメダル五百枚が、流れ込んでいった。

 あわわ!とみやびは驚きを隠せていなかった。

 今日はとても運がいい日。

 なにか嫌な予感がすると思いたくなかったけれど、誰かにそう言われたような気がした。

 それから私たちは持っていたメダルを全て使い果たし、解散することにした。

みやび「楽しかったー!また来ようね!」

 その表情は、無邪気さ全開の笑顔だった。

詩織「そうだね、また来よう」

 約束だよ?という顔をしているみやびを見て、私の人生で最高の瞬間となった。

 私たちはゲームセンターの出口へと向かい、扉を開くと時刻は夕方。

 それぞれ解散して、帰る途中にふと思ってしまった。

 その夕方はいつもより少しだけ暗い。

 街の風景も、早く点く街灯さえも不気味で、その街灯はいつもなら光り輝いているのに、今日だけは薄暗く感じた。

詩織「あれ⋯」

 その瞬間、私は立ち尽くした。

 『綺麗なものには毒があるよね!』と、前に言っていた彼女の言葉が脳裏によぎる。

 その場で無意識に目を開き、とある物を見ていた。

詩織「どうして⋯ここに⋯」

 

 『桜の木があるの⋯⋯』

 

 来る時は存在していなかったその桜の木は、風も吹いていないのに、花びらだけが揺れている。

 その揺れ方はとても不自然で、恐怖を与えるような。

 そして『次はお前だ』と、言っているかのような揺れ方をしていた。

 その桜の木から、とある人物がこちらを見ている。

詩織「っ⋯!」

 私は声も出なかった。

 その人物は、メダルゲームで遊んでいる時、みやびの背後に立っていた人物と同じ。

 その人は、『あの時と同じ笑み』を、こちらに向かって不気味に微笑んでいた。


続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ