表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉と終息  作者: 永久の夢P


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/4

第二章 平穏

この物語は、私が平穏と不穏を同時に経験した物語。

 この時の私は、不穏なんて無縁だと信じていた。

 けれど現実は残酷で、気づけば私の味方はいなくなっていた。

入学式が終わり、体育館にいた生徒たちは、自分の教室へと向かった。

みやび「やっと終わった⋯」

詩織「やっぱり緊張していたんだ?」

 そう言うとみやびは、ぷくーっと、頬を膨らませながらこちらを見ている。

みやび「緊張なんかしてない!それは詩織ちゃんでしょ?」

詩織「お互い緊張していたね」

 もう!と、元気な声を響かせるみやび。

 そういう元気なところは羨ましいと、そう思った。

 教室に入り、それぞれが自分の席へと着いた。

みやび「今思ったけど、私の席は詩織ちゃんの前だ!」

詩織「あ、本当だ。最初は適当に座っているのかと思ったよ」

 えへへ、と笑う彼女の顔には、どこか懐かしさを覚える。

 ついに新しい学校での生活が、幕を開ける。

 私たちのクラスの担任の先生は、体育会系教師だ。

 生憎私は運動が大の苦手で、体育の授業は少しサボろうかと悩んでいる。

みやび「うちらの担任って、あんなにゴリゴリ系なんだね」

 みやびは、少しだけ不安そうにしていたけれど、その不安は一気に掻き消された。

担任「今日から一年間、このクラスの担任をすることになった山浦やまうらだ、みんな気を緩まないように!」

 『えー』とか、『暑苦しい⋯』など、ヒソヒソ言っている声もあったけれど、体育会系特有の情熱が、そこにはあった。

みやび「どうしよう詩織ちゃん⋯」

詩織「どうしたの?てか、前向かないと怒られるよ⋯」

 どうやらみやびは、何か心配事があるらしい。

 その事が少しだけ気になって、山浦先生の話は何一つ覚えていない。

山浦先生「ほらそこ!前向け!」

 ビクッとみやびの肩が一瞬だけ反応した。

 その反応で大体わかったかもしれない。

 みやびは『あーいうタイプ』が一番苦手ってこと。

詩織「ほら言わんこっちゃない⋯」

 私は軽く視線を外の風景へと向け、授業が終わるのをただ黙って待っていた。

 そんな事ができるのは、一番左後ろの特権でもある。

 窓側の席は特に落ち着く。

みやび「詩織ちゃん、ねぇ詩織ちゃんってば」

 校庭では他学年が体育の授業をしている中、私はのんびり外の風景を見ながら授業を受けている。

 『最高の瞬間』って、こんな感じなのだろうと、そう思った。

みやび「詩織ちゃん!授業終わったよ!」

 強く名前を呼ばれ、私は現実へと引き戻された。

 どうやらボーッとしすぎて、授業を聴いていなかったみたいだ。

みやび「そういえば、山浦先生が『職員室に来い』って言ってたよ?」

 その言葉を聞いた時の私は、心の何処かで『不穏』の予感がした。

 昔から直感は当たったことは無いけれど、こういう時の予想はずば抜けて当たる。

 良いのか悪いのか分からない。

詩織「えー、絶対怒られるじゃんそれ⋯」

 行ってきなよーと、彼女は優しく微笑み、私を送り出した。

 そうして職員室に着き、山浦先生のとこへと向かう。

詩織「なんでしょうか⋯」

山浦先生「進学早々授業受けるのが面倒くさい気持ちは分かるが、しっかり受けないとこの先大変だぞ?」

 ほらやっぱり、恒例行事お説教タイム。

詩織「す、すみません⋯」

 私はあとでみやびに愚痴を言おうと、決心をした。

 ”そんなこと”で、お説教しなくて良いのになぁ⋯と、そう思った。

 私みたいに新学期早々お説教タイムされている人は日本中、いや世界中でどれくらいの人がいるのだろう?

 数千?それとも数億?

 いずれにせよ、計り知れない規模の人数っていうことだけは分かる。

山浦先生「早乙女、分かったのか?」

詩織「はい、すみません⋯」

 全く⋯という顔をしている山浦先生は、その後すぐ体育会系特有の雰囲気へと戻った。

山浦先生「そういえば早乙女、確か全寮制だよな?」

 山浦先生は、『何か』を探るように質問してきた。

詩織「はい、そうですけど⋯」

山浦先生「実は、あの全寮制の寮は、築年数がやばいから取り壊しになったんだ」

詩織「え、取り壊しって⋯」

山浦先生「焦るのも分かる、けど新しい家を探さないといけないし、高校生で探すってなっても大変だから、費用は学校で負担することになったぞ」

 好きなところに住め!と、続けて言う山浦先生。

 好きなところに住めと言われても、一体どこに住めば良いのか⋯。

 その心配をしていると山浦先生は察知したみたいに続けて言う。

山浦先生「駅前なんかどうだ?色々なものがあるし楽しいと思うけど、この件は他言無用!」

 ま、早乙女の好きな所にしろよ!と、元気に声を張る山浦先生。

 衝撃なことを突きつけられた私は、その後教室へと向かった。

みやび「あ、おかえり!ん⋯?」

 みやびは私の顔を覗き込むように見ている。

みやび「どうしたの?顔ゲッソリしてるよ?」

 山浦先生怒るとそんなに怖いの⋯?と、不安そうにしている。

詩織「だ、大丈夫だよ!」

 と、私はみやびの不安を取り除くようにすぐさま返事をした。

 まさか、新生活一日目で取り壊しが決定するなんて思ってもいなかった。

 希望と絶望が駆け引きゼロのように、現実は残酷でそして冷酷だ。

 みやびが窓際により掛かるそのすぐ目の前の所で、『あれ』が不自然にそびえ立ち、その『欠片』が教室内へと入り込む。

 その瞬間を見た私は、胸の奥がいつも以上に鳴り響いた。

 みやびが言っていた『綺麗なものには毒がある』それは、本当なのかもしれない。

 その時の私は少しずつ『平穏』から『不穏』へと、吸い込まれていくような感覚がした。

みやび「詩織ちゃん、本当に大丈夫⋯?」

詩織「あ、うん!全然平気⋯!」

 私は『他言無用』の事を思い出し、それ以上何も言えなかったし、彼女も何も聞いてこなかった。

 少し心配させちゃったかな、と私はそう思った。

みやび「あ、そうだ!」

 彼女は何かを思い出したかのような話し声をしている。

みやび「せっかく友達になったんだから、ゲームセンター行かない?」

詩織「行く行く!」

 私はノリノリで返した。

 ゲームセンターなんて、行くのは何年ぶりだろう?

 それくらい、久しく行っていなかった。

 新しく出来た友達と一緒に行くゲームセンターは、とても楽しいだろうなと、深く思った。

 

 ――『その時までは』。


続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ