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【ホラー】超能力【短編】

作者: スケキヨ
掲載日:2026/03/01

注意:作中の人物、事象等は全てフィクションであり、現実の全部と無関係です。精神疾患、性的暴行に関する記述があります。苦手だと感じた方はすぐにバックをお願いします

 Aは超能力を持っていると思う。しかし本人は強く否定している。

 

 いつも、「こんなもん、超能力であってたまるか」とたいへん嫌そうな顔で言うのだ。






 Aいわく、「自分は他人に対する好き嫌いの感情がおかしい」らしい。特に「嫌い」に関して異常なのだそうだ。


 嫌いな人が居るというのは、べつだん、普通の事だと思う。しかしAの「嫌い」は少々事情が異なる。


 例えばAの同僚にCという人が居る。


「おれはCが嫌いだ。


 でもおれはCに酷い事をされた事が無い。


 不愉快な事も理不尽な事も、嫌な事なんて一度もされた事が無い。なんならまともに会話したことがそもそも無い。


 会えば挨拶ぐらいはする。しかもCからしてくれる。


 Cが誰かをいじめている所を見たとかも全然ない。


 それなのにおれはCが嫌いだ。


 無意識に僻んだり、なんとなく生理的に駄目で、とか、そういうことなのかもしれない。でもそれにしたっておかしい。


 おれはCに死んでほしい。


 いくらなんでもおかしいだろ?

 何されたわけでもない、評判が悪い訳でもない、なんなら割といい奴だとまで思ってる。


 それなのに、おれはそいつの事、死んで欲しいぐらい大嫌いなんだよ。できるだけ苦しんで死んでほしいとまで思う。こんなの、どうかしてる」


 実際Aは自分の正気を疑ってクリニックに行った。処方薬を飲んでデイケアにも通っている。


 Aとはデイケアセンターで知り合った。


 わたしはCという人の事は一切知らないが、彼の息子については知っている。

 

 わたしの友人を強姦した男だ。

 

 そいつは起訴されなかった。


 友人は死んだ。






 また、こういう事があった。


 みんなでお昼のワイドショーを見ていた時、急にAがチャンネルを変えて少し揉めた。


 Aはすぐに謝って「ちょっと頭を冷やしてくる」と言って席を立った。わたしが追いかけていくと、Aは喫煙室で頭を抱えていた。


「〇〇が嫌いなんだよ」


 さっきのワイドショーに出演していたタレントの名前だった。


 のちに世間を震撼させ、ありとあらゆる週刊誌の表紙を賑やかにする実に3年前の出来事であった。


 最も有名で一番最初のスキャンダルが報じられたとき、わたしの脳裏に真っ先に過ぎったのは、あのとき喫煙室で苦渋の表情を浮かべるAの姿だった。


「死んじまえばいいのにあいつ、って、思った。会った事さえないのに。ほとんど名前しか知らないのに。ほんと、頭、脳、神経とか、何?なんでもいいけど、おかしい、絶対、おかしい」






 虫の知らせ、第六感、または超常の能力、Aにはそういうものがあるのではないかという話をしたところ、たいへん嫌がられた。


「そんな悪人センサーみたいなもん、あるわけない。そんなん、あなたの頭はおかしいですよ、異常ですよって言われる方がずっといい」


 Aはふつうに人を嫌いになる事も、ふつうにある。


 側溝に痰ツバを吐く酔客、

 具合が悪くなって座ったら肘鉄してきた優先席警察、

 自転車のサドルを盗んだTさん。


 一方でAは相変わらず「意味の分からない嫌い」に悩んでいる。


 最近では偶然テレビで見かけた、恐らくは役者と思われる誰かを目にした瞬間、「今すぐ地獄に落ちればいいのに」と思ったそうだ。


 名前も性別も分からないらしい。


 何も知りたくなくて、秒でテレビを消したそうだ。




 最近はあまりAと連絡がつかない。

 

 Aは退職して家に籠るようになった。

 

 最後にお見舞いに行ったときも顔色が悪く、部屋は荒れ、窓ガラスは隙間なく新聞紙で覆われていた。

 あと、洗面所の鏡が割れていた。賃貸なのに。大丈夫だろうか。


 酷く気落ちしていた様子だったので、彼が以前目にした役者らしき人物のその後については伝えないでおいた。


 わたしが親しくなる人は、みんな傷ついて、遠くに行ってしまう気がする。


 なるほど、これを超能力と呼ばれたら嫌だ。


 Aが元気になったら、ちゃんと謝ろう。







読んでくださってありがとうございます

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