12.家族との対面、金色の髪、青い瞳
丘の向こうから現れたのは、フウカによく似た面差しを持つ二人。フウカの父ゲンと、少し年上の姉ミオでした。
驚きと沈黙
ゲンとミオは、フウカの隣に立つピコを見て、言葉を失いました。
「……お父さん、ミオ姉ちゃん。この子はピコ。ヨコタから来たんだって!」
フウカの明るい声が響きますが、二人は釘付けになったようにピコを見つめています。彼らにとって、ピコが持つ金色の髪は太陽の光を編み込んだように見え、吸い込まれるような青い瞳は、かつて物語で聞いた「空の果ての色」そのものでした。
「本当に、ヨコタに人が住んでいたのか……。それに、なんて綺麗な色なんだ」
ゲンの低い声が漏れます。ピコもまた、自分とは違う、けれど自分と同じ「若さ」を持つミオとゲンに、言葉にできない衝撃を受けていました。
『ピコ、彼らはあなたの外見に驚いています。この地域では、あなたのような特徴を持つ人間は数世代にわたって確認されていません。』
チェンの冷静な解説がピコの耳に届きますが、今のピコにはそれ以上に、胸の奥が熱くなるような不思議な感覚がありました。
始まりの予感:まだ名前のない感情
ピコとフウカは、互いを見つめ合いました。
ピコは、フウカの黒い瞳の中に、ヨコタの原子炉の光よりもずっと温かい「灯火」を見つけていました。 フウカは、ピコの青い瞳の中に、自分がいつか飛んでみたいと思っていた「広い空」を見つけていました。
胸の鼓動(トクン、トクン)
二人はまだ知りません。このドキドキが、テラじいちゃんが語っていた「平和」よりもずっと大切で、切ない感情であることを。
フウカの自覚なき想い: さっき一緒に走ったとき、ピコの手を握りしめたいと思ったこと。彼を自分の宝物のように、家族に自慢したいと思ったこと。
ピコの自覚なき想い: さっきフウカが笑ったとき、世界から色が溢れ出したように見えたこと。ヨコタに帰りたくない、ずっとこの「走る風」の中にいたいと思ったこと。
「ピコ、こっちへ来て! 私たちの家でおいしいスープを飲もう!」
フウカがピコの手をそっと取りました。ピコは、その手の柔らかさと熱さに、また少し顔を赤くしました。
上空では、昭島クジラが二人の様子を優しく見守り、まるで祝福するように長い影を草原に落としました。チェンもまた、ピコの心拍数が少し上がっているのを検知していましたが、あえてそれを指摘せず、静かに光を明滅させていました。




