10.運命の出会い、立川・昭和記念公園
「Wow... It's so green!(わあ……緑がいっぱいだ!)」
ピコは思わず英語で叫びました。目の前には、見渡す限りの緑の草原と、巨大な風車が力強く回っています。
「Piko, stop. Someone is there.(ピコ、止まって。誰かいます。)」
チェンの警告で、ピコはスクーターを止めました。
風車の足元、菜の花が揺れる畑の中から、一人の少女が顔を上げました。彼女はピコより数歳年上で、日に焼けた肌に、手作りの丈夫そうな麻の服を着ています。
「……だれ? どこから来たの?」
彼女が発したのは、ピコが一度も聞いたことのない「日本語」という言葉でした。ピコは困ったように、胸元のチェンを見つめます。
『……翻訳を開始します。彼女は「Who are you?」と尋ねています。』
チェンがピコの耳元で英語を囁くと同時に、青い石が柔らかく光り、少女に向かって彼女の言葉で返答を始めました。
『はじめまして。彼はピコ。西の「ヨコタ」から来ました。』
少女の瞳が驚きで見開かれます。
「ヨコタ……? あのお空が青く光る村?」
少女は一歩近づき、ピコのスクーターや、空に浮くクジラを不思議そうに眺めました。そして、少しだけ照れくさそうに笑って、自分の胸に手を当てました。
「わたしは、フウカ。ようこそ、立川へ!」




