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タイトル:『異世界パン屋 ~魔酵母(マギ・イースト)と共に、剣と魔法の世界をふっくらさせます~』   作者: まこーぼ


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第30章:炎の精霊と、マグマ焼きピザ

「熱い、熱すぎる!」

 

 サラマンダーが吐き出す炎のブレスは、冷却スーツの防御すら貫通しかけていた。

 ニーナが氷の杖でバリアを張るが、それも蒸発していく。

 

「ただの怪物じゃない。あれは『飢え』だ!」

 

 僕は気づいた。サラマンダーの炎は攻撃的だが、その行動は何かを探すように暴れ回っている。

 精霊だって腹は減る。特に、この地下深くでは良質な燃料(供物)が不足しているのだろう。

 

「なら、食わせてやるしかない!」

 

 僕は背中のタンクから、パン生地の入ったカプセルを取り出した。

 水の都で手に入れた激辛スパイス、ドワーフの国で貰ったサラミとチーズ、そしてトマトソース。

 

「ニーナちゃん、シルヴァン! 時間を稼いでくれ! 3分で焼き上げる!」

 

「3分!? この猛攻の中でか!?」

 

 シルヴァンが驚愕するが、僕は既に生地を宙に投げ上げていた。

 

 ビュンッ!

 

 遠心力でピザ生地を薄く、広く伸ばす。

 この高温環境下なら、発酵時間はゼロでいい。生地は一瞬で膨らみ始める。

 

「具材投入!」

 

 空中で回転する生地に、ソースと具材を正確に投げつける。

 そして――

 

「焼き場は……そこだ!」

 

 僕は生地を、あろうことかマグマの海に浮かぶ平らな岩の上――サラマンダーの足元へと滑り込ませた。

 

 ジュワァァァァァッ!!

 

 地熱温度は1000度近い。普通の窯の数倍の熱量だ。

 一瞬で焦げる? いや、その前に水分を飛ばして焼き固める!

 

「【魔酵母】――ヒート・シールド!」

 

 酵母たちに魔力を送り、生地の表面に断熱の膜を作らせる。

 生地が踊るように膨らみ、チーズが沸騰し、サラミがカリカリに焦げる。

 

 漂うのは、刺激的なスパイスと、焦げたチーズの暴力的な香り。

 

「ギ……?」

 

 サラマンダーの動きが止まった。

 目の前で焼き上がった、真っ赤な円盤。そこから立ち上る湯気が、炎の精霊の鼻をくすぐる。

 

「食え! 特製『ボルケーノ・ピザ』だ!」

 

 サラマンダーは恐る恐る、燃え盛る手でピザを掴んだ。

 そして、マグマのように熱いそれを、丸ごと口に放り込んだ。

 

 ――カッ!!

 

 サラマンダーの全身が激しく発光した。

 

「ギョオオオオオオッ!!(ウマイィィィィッ!!)」

 

 咆哮と共に、サラマンダーの炎の色が、荒々しい赤から、満足げな青白い色へと変わっていく。

 激辛スパイスが炎の精霊のエネルギーとなり、チーズの油分が潤いを与えたのだ。

 

 サラマンダーは満足げにゲップをすると、スルスルと小さくなり、可愛らしいトカゲの姿に戻って僕の肩に乗ってきた。

 どうやら気に入られたらしい。

 

「……信じられん。精霊を手懐けるとは」

 

 シルヴァンが呆れている。

 

 障害は消えた。

 僕は小島へと渡り、その中央に生える『太陽の穂』へと手を伸ばした。

 

 触れた瞬間、温かい光が僕の中に流れ込んできた。

 

『よくぞ参った、パンの探求者よ』

 

 頭の中に声が響く。

 

『この麦は、大地の生命そのもの。汝の酵母と共に、世界を癒やす糧となるだろう』

 

 光が収まると、僕の手には黄金色に輝く種籾が入った袋が握られていた。

 ついに手に入れた。最強の麦を。

 

「帰ろう。これで、あの黒カビにも勝てる!」

 

 僕たちは灼熱の地下世界を後にした。

 次なる舞台は、再び地上。決戦の地だ。

 

(第3部 完)

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