表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイトル:『異世界パン屋 ~魔酵母(マギ・イースト)と共に、剣と魔法の世界をふっくらさせます~』   作者: まこーぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/36

第27章:黄金の麦酒パンと、王宮への突撃

「いいか、ドワーフのパンってのはな、噛みごたえがあって、喉が渇いて、酒が欲しくなる……そんなパンだ!」

 

 バルガスの熱血指導のもと、パン作りが始まった。

 彼らが隠し持っていた貴重な『黒ビール(スタウト)』のおりから採取したビール酵母。香りは芳醇だが、発酵力が弱い。

 そこに僕の『水生酵母』をブレンドする。

 

「【魔酵母】――ハイブリッド・マリアージュ!」

 

 二つの菌が共鳴し、生地が力強く呼吸を始める。

 さらに、この灼熱の地下都市は乾燥している。通常の焼き方ではパンがカチカチになってしまう。

 

「窯の中に『蒸気』を満たすんだ!」

 

 僕は溶岩の熱を利用した即席の石窯に、水を張った鉄鍋を放り込んだ。

 ジュワァァァァ!

 猛烈な蒸気が発生し、パンの表面をコーティングする。これにより、中はしっとり、外はパリッと焼き上がる。

 

「焼き上がりだ!」

 

 窯から取り出したのは、濃い琥珀色をした『ビアブレッド・カンパーニュ』。

 中には、燻製ベーコンと、熟成されたハードチーズがゴロゴロと入っている。

 

「……美味そうじゃねえか」

 

 バルガスがゴクリと喉を鳴らす。

 ナイフを入れると、ビールのほろ苦い香りと、チーズの焦げた匂いが爆発した。

 

「食ってみろ、バルガス」

 

 彼が一切れ口にする。

 

「んぐっ……! こ、これは……!」

 

 バルガスの目から涙が溢れた。

 

「懐かしい……いや、昔食ったものより数倍美味い! 麦の甘みとホップの苦味が絶妙だ! ああ、酒が飲みてぇ!」

 

「これなら、王様の目も覚めるはずだ」

 

 僕たちは頷き合った。

 その時。

 

 ドォォォォン!!

 

 鉄扉が爆破され、黒い鎧を着た兵士たちがなだれ込んできた。

 

「見つけたぞ、反逆者ども! 菌類所持の現行犯で逮捕する!」

 

 王宮からの追っ手だ。

 

「チッ、嗅ぎつけられたか!」

 

 バルガスが麺棒を構える。

 

「タクミ、パンを持っていけ! ここは俺たちが食い止める!」

 

「でも……!」

 

「王にそのパンを食わせなきゃ、この国は終わるんだ! 行けぇッ!」

 

 レジスタンスたちが兵士に飛びかかり、道を切り開く。

 

「行こう、タクミさん!」

 

 ニーナに引かれ、僕たちは厨房の裏口から飛び出した。

 目指すは都市の中央、溶岩湖の上に浮かぶ『鉄の王宮』。

 

「待てぇ!」

 

 追っ手が迫る。

 僕は走りながら、試作に失敗してカチカチになったフランスパン(もはや棍棒)を抜き放った。

 

「パン屋を舐めるなよ!」

 

 敵の剣をフランスパンで受け止め、カウンターで鳩尾に突きを入れる。

 

「グホッ!?」

 

 さらにシルヴァンの援護射撃が敵の足を止める。

 

 激しいチェイスの末、僕たちは王宮の大広間へとたどり着いた。

 そこには、虚ろな目をしたドワーフ王と、その横で不気味な笑みを浮かべる細身の男――菌使いの側近が立っていた。

 

「おや、ネズミが入り込んだようだね。……カビ臭いネズミが」

 

 男の周りには、あの赤黒い胞子が舞っていた。

 

「王様! これを食べてください!」

 

 僕は叫びながら、焼きたてのビアブレッドを掲げた。

 これが、この国を救う最後の希望だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ