表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイトル:『異世界パン屋 ~魔酵母(マギ・イースト)と共に、剣と魔法の世界をふっくらさせます~』   作者: まこーぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/36

第21章:黒い倉庫と、死を呼ぶ胞子

翌朝、厨房に入ったニーナの悲鳴で、僕は飛び起きた。

 

「タクミさん! 大変! 小麦粉が……!」

 

 慌てて倉庫へ駆けつけると、そこには信じられない光景が広がっていた。

 

 昨日まで積み上げられていた小麦粉の麻袋が、全てどす黒く変色している。袋からは黒い粉が漏れ出し、鼻を刺すような強烈な腐臭が充満していた。

 

「なんだこれは……カビか?」

 

 僕は手で口を覆いながら近づいた。

 【魔酵母】のスキルを発動し、視界を切り替える。

 

 ぞっとした。

 

 そこには、無数の赤黒い粒子がうごめいていた。それらは小麦粉の栄養を貪り尽くすだけでなく、空気中の水分すら吸収し、爆発的な速度で増殖を続けている。

 

「くそっ、昨日の夜までは何ともなかったのに!」

 

 たった一晩で、砦の備蓄食料の半分がダメになったことになる。

 さらに最悪なことが起きた。

 

「うぐぁっ……!」

 

 倉庫の見張りをしていた兵士が、突然苦しみだして倒れたのだ。

 

「おい、しっかりしろ!」

 

 駆け寄ると、兵士の顔には黒い斑点が浮かび上がり、高熱でうなされている。

 

『コイツハ、エサダ!』『モット、クワセロ!』

 

 兵士の体内で、あの赤黒い菌たちが嘲笑う声が聞こえた。

 

「人間に感染するのか……!」

 

 これは食中毒なんてレベルじゃない。生物兵器だ。

 

「皆、離れろ! この胞子を吸い込むな!」

 

 僕は叫んだ。

 だが、このままでは砦中の人間が感染し、全滅してしまう。

 

「タクミさん、どうしよう!? 治せるの!?」

 

 ニーナが泣きそうな顔で聞く。

 僕は歯を食いしばった。

 僕の【魔酵母】は、基本的に「発酵」を促す力だ。殺菌や治療は専門外……いや、待てよ。

 

 菌には菌をぶつける。

 『拮抗作用』だ。

 

 強力な善玉菌を送り込み、生存競争で悪玉菌を駆逐させる。これしかない。

 

「ニーナちゃん、僕の荷物から『白金酵母』の瓶と、あと酒場で一番強い蒸留酒を持ってきてくれ!」

 

「わかった!」

 

 僕は倒れた兵士の胸に手を当てた。

 

「頼むぞ、みんな。あいつらを追い出してくれ!」

 

 僕の魔力と共に、光り輝く【白金酵母】たちを兵士の体内へ送り込む。

 

 ミクロの世界での戦争が始まった。

 赤黒い『魔カビ』に対し、黄金色の『白金酵母』が突撃する。

 

『ヤッチマエ!』『ココハ、ボクラノ、ナワバリダ!』

 

 酵母たちはアルコールと炭酸ガスを武器に、カビたちを包囲し、分解していく。

 兵士の顔から、少しずつ黒い斑点が消えていく。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 数十分後、兵士の呼吸は落ち着いた。

 なんとか一人は救えた。だが、倉庫の小麦粉は全滅。そして砦内にはまだ見えない胞子が漂っているかもしれない。

 

 その時、倉庫の入り口に、フードを深く被った小柄な人影が現れた。

 

「へぇ……ボクの『死の黒カビ』を浄化するなんて。面白い人間もいるもんだね」

 

 子供のような、しかし冷酷な響きを持つ声。

 

「誰だ!」

 

 振り返ると、その人物はニヤリと笑った。フードの下から覗く瞳は、カビと同じ赤黒い色をしていた。

 

「ボクは『腐敗の王』の配下、菌使いのマイコ。……ねえパン屋さん、どっちの菌が強いか、ボクと遊ぼうよ?」

 

 ついに姿を現した黒幕。

 最強のパン屋と、最凶の菌使いの戦いが、幕を開けようとしていた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ