しあわせ
数分後。
皿に盛られたのは、見た目は地味な野菜と肉の炒め物。
本当に、どこにでもありそうな料理だ。
「ほら、完成。文句言うなよ」
「じゃあ遠慮なくいただく」
ショーンが一口。
――固まった。
「……」
「どうだ?」
「……陽真」
「まずいなら言え」
「いや、逆だ」
二口目、三口目。
止まらない。
「なんだこれ……身体が軽い。頭が冴える。しかも、うまい」
ノールも一口食べて、目を見開く。
「……疲れが抜けていきます。魔力の巡りまで良くなってる」
コノハはというと、しっぽをぶんぶん振っていた。
「これは……安寧の味です……!」
「なんだその評価」
陽真は首を傾げる。
「いや、ほんとに普通に作っただけなんだが」
――《グルメ錬成:調理=魔法》
――《神道具のクッカーセット》
発動条件は、「調理」。
本人のやる気は、関係ない。
ショーンが皿を置き、深く息を吐いた。
「……なあ陽真」
「なんだよ、また働けとか言う気か」
「安心しろ。もう言わねぇ」
そう言って、にやりと笑う。
「代わりに“逃げられねぇ”って言うだけだ」
「最悪だなお前」
ノールは嬉しそうに頷く。
「この料理と、私の酒。最強の組み合わせですね」
「勝手に決めるな」
昼の屋外調理場に、笑い声と湯気が広がっていく。
働きたくない農民は、今日もまた無自覚に、人を幸せにしていた。




