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これがなきゃはじまらねぇや
「なぁ陽真」
焚き火の向こうでショーンが、酒瓶を抱えながら顔を赤くして言った。
「野菜と肉、あるんだろ? つまみ作れ!」
「……は?」
陽真はキセルをくわえたまま顔を上げた。
「俺、飲むだけって言ったよな」
「飲むだけで終われる夜じゃねぇ!」
ショーンが酒を掲げて叫ぶ。
「酒に、つまみ! これが人生だ!」
ノールまでほっぺたを染めながらうんうんと頷く。
「わかります、それ……! 飲むなら食べなきゃ!」
「……お前ら、酔ってるだろ」
ため息をつきつつ、陽真は腰を上げた。
焚き火の脇に転がっていた“神道具のクッカーセット”を取り出す。
丸い金属の鍋、折りたたみナイフ、魔力式フライパンどれもピカピカで、一度使うだけで調理が自動補助される優れもの。
だが本人は、ただ“適当に作る”つもりだ。