新たな地荒れ地にガチ狂う
眩しい光が消え、相澤陽真は目を開けた。
そこは、見渡す限りの荒れ果てた大地。
「……ここ、どこだよ……?」
辺りには、草一本、生えていない。
風だけが乾いた音を立てて吹き抜けている。
足元で、ぽんぽんと小さな音がする。
「コンコン……コンコン……」
何気なく見ると、小さな狐がぴょんぴょん跳ねていた。
だが、その狐は目が合うと何か言いたげにじっと見つめるだけで、言葉は出さない。
陽真は一歩後ずさる。
「う、うるせぇな……誰だよお前……」
狐はただ、黙ってついてくる。
「話せないのか?」
陽真は疲れた声で言う。
けれど狐は答えず、また「コンコン」と鳴いた。
「……はぁ……マジで何もねぇじゃん」
周囲を見回す。荒地、砂、岩。
ぽつんと置かれた農具のセットだけが、あの神からもらった《神農の農具》だ。
「こんなもん、どう使えってんだよ……」
狐は陽真の足元に顔をすり寄せ、じっと見上げた。
陽真は戸惑いながらも、少しだけ撫でてやった。
「……名前はなんだ?」
狐は首をかしげ、何か考えているようだった。
陽真は初めて、ぼそりと呟いた。
「……コノハって呼ぶか」
狐は、しっぽを振った。
陽真の心はまだ閉じたままだ。
言葉も思うように出ず、誰とも話せず、神からの力をどう使うかもわからない。
ただ、足元の狐だけが、静かに寄り添っていた。