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みのりもはやい
もうこんなに育ってるのか。
ぶどうの房は紫に色づき、桃は柔らかく香りを放ち、りんごも赤く輝いている。
自分で植えたのはつい数日前のような気がするのに、不思議な力で一気に成長してしまったらしい。
「……収穫できるな」
俺は軽く笑みをこぼす。いや、笑みをこぼすというより、ため息交じりに小さく呟いた。
こうなると、問題は“誰が酒を作るか”だ。俺じゃない。絶対に俺じゃない。
酒は飲みたい。でも、作るのはイヤだ。これだけは譲れない。
ふと、遠くで荷馬車の音がする。
「やあ、陽真! また来たよ!」
……やっぱり来た。
荷馬車の奥から、白いマントをはためかせた少女が現れる。
長い髪に大きな瞳、どこか魔術師然とした雰囲気だが、手にはガラスのフラスコをいくつも抱えている。
ショーンが誰かを連れてきた。しかも少女とは。
なんか、癖強そうだな。