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んー、どうでしょう。
「俺はな、悠々自適のスローライフを送りたいんだよ」
「いいじゃないか! 酒とタバコでスローライフ! 最高だろ!」
「……お前と一緒だと、ただの労働ライフなんだよ」
ショーンは笑って肩をすくめる。
そして、籠からりんごを一つ取り出すと、俺に放り投げてきた。
「とりあえず食べてみろ!」
「おいっ!」
反射的にキャッチした。手の中でずっしりとした赤い実が輝いている。
仕方なくかじってみると――甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がった。久しぶりの甘味は心底美味かった
「……うまいな」
「だろう! これを酒にしたら最高だぞ!」
「なんでも酒にすんな」
気づけば、俺の口元は少しだけ緩んでいた。
まあ、確かにうまいものを放置するのは惜しい。……くそ、納得しそうになってる自分が嫌だ。
「わかったよ……ちょっとだけだ。ほんの少しだけ植えてみる」
「よっしゃあ! 未来の酒宴に乾杯!」
「まだ芽も出てねえよ……」