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ナイナイ、うらない
「いやいやいや、ちょっと待て」
思わず両手を振る。
「こっちは別に、商売とかする気は――」
「する気は? なにを言ってるんだ、兄さん!」
ショーンは身を乗り出してきて、俺の肩をがしっと掴む。
「この味は街じゃ絶対手に入らない! 王都に持っていけば貴族が飛びつくぞ! いや、大商会が黙っちゃいない!」
「……だからそういうのが、めんどいって言ってんだよ」
「めんどい!?」
「そう。俺は畑耕して、焚き火して、芋ふかして……それで十分」
「……お前さん、それ本気で言ってんのか?」
「本気だ」
「銭は? 名誉は? 女は? 富と権力と……」
「……いらん」
きっぱり答えると、ショーンは逆にぽかんとした。