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誕生日プレゼント
陽真は狭い部屋の中で、薄暗いスマホの画面をぼんやり見つめていた。
誕生日の通知は、画面の隅にちっぽけな数字で出ているだけ。
「30か……別に、どうってことないな」
声に出しても虚しく響く。独り言のようなものだ。
仕事も人間関係もうまくいかなかった。
親も最近はため息ばかり。
「何かプレゼントが欲しい?んなもん、もういらねぇよ」
つい口が悪くなった。誰かに聞かせるわけでもないのに。
キャンプ道具の通販サイトがスマホに開いている。
焚き火台の写真を眺めながら、指が震えていた。
ふと、目に留まったのは「異世界転生サービス」という広告だった。
「異世界転生?……まじで?」
画面には小さな説明文。
『人生やり直し、スローライフ満喫、チートもあり』
陽真はため息をつき、そっと指で「申し込み」のボタンを押した。
「……これで、もう一回やり直せるなら、いいかな」
誰にも祝われない誕生日に、彼は自分への最大のプレゼントとして「転生」を選んだ。
画面が暗転し、頭の中に冷たい雷鳴が響く。