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君と風の行方  作者: 月見饅頭
第二章

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20/80

20 マラソン大会


 放課後の教室で、鈴木が唐突に言い出した。


「そういや、来週マラソン大会だよな。お前ら、やる気あんの?」


 俺は肩をすくめて答える。


「やる気とか、そういう大会じゃないだろ。普通に走ればいいだけだ」

「それだよ! 普通に走るのがつまんねぇんだよなー!」


 鈴木が机に突っ伏して不満を漏らすと、宮田がすかさず口を挟む。

 

「鈴木くんは普通に走るのすら怪しいじゃない。日頃の運動不足、反省しなさい」

「おいおい、俺だって走れるっつーの!」


 鈴木はへらへら笑っているが、明らかに余裕がない顔だ。白松さんはそんなやり取りを見て、クスッと笑う。


「みんなで走る練習をすればいいんじゃないかな? 気分も変わると思うし」

「練習って、ただ走るだけだろ?」


 鈴木がめんどくさそうに言うと、白松さんは少しムッとした顔になる。


「ただじゃないよ。みんなでやると楽しいかもしれないし!」


 白松さんの言葉には、なんだか妙な説得力がある。結局、俺も鈴木も彼女に押し切られる形で、放課後にマラソン大会の練習をすることになった。

 放課後の校庭は、まだ部活の生徒たちが練習していて活気がある。俺たちは体育倉庫からストップウォッチを借りて、トラックに集合した。


「さてと、じゃあ軽く2周くらいから始めるか」

 俺が言うと、鈴木が首を振る。


「2周なんか余裕だって。最初から5周くらいいけるだろ」

「鈴木くん、それフラグだからやめておいたほうがいいよ」


 宮田が冷静に指摘するが、鈴木は「へーき、へーき」と言いながら走り出した。


 案の定、3周目あたりで鈴木は息切れしてペースダウン。


「やべぇ、足が動かねぇ……」

 俺は軽くため息をつきながら、横を走る白松さんに声をかける。


「ほら、言った通りだろ」

 白松さんは苦笑しながら、鈴木に声をかけた。


「無理しないで、少しペース落としたら? ここで頑張りすぎると本番で走れなくなるよ」

「……あー、そうするわ」


 鈴木は素直に歩き始め、俺たちはその横を追い抜いていった。


 そして迎えたマラソン大会当日。朝から冷たい風が吹いていたけれど、快晴の空に心が少しだけ軽くなる。


「おい桜井、今日の俺のペースについてこれっかな?」

 鈴木がスタートラインで余裕ぶる。


「お前、練習のとき3周でヘバってたじゃねえか」  

 俺が言うと、白松さんがくすっと笑う。


「でも鈴木くん、意外と本番に強いかもよ?」


 その言葉に宮田が首を傾げる。


「どうかな……無理して途中で倒れそう」

「おい宮田、もうちょっと俺に期待してくれてもいいだろ!」


 そんなやり取りをしているうちに、スタートの合図が鳴り響いた。全員が一斉に駆け出す。

 最初は鈴木が飛ばし気味で先頭集団に食い込んでいたが、数キロも進むと案の定ペースが落ち始める。


「おい、桜井……俺、やべぇかも」

「だから言っただろ、無理するなって」


 俺は鈴木に軽く声をかけ、その横で同じペースを保ちながら走った。

 少し後ろを振り返ると、白松さんと宮田が並走して、クラスの他の生徒たちを応援している。


「あとちょっとだよ! 頑張ろう!」

 

 白松さんの声に、周りの生徒たちも笑顔で応える。その雰囲気がなんだか心地よかった。

 ゴールが近づいてくると、鈴木はほとんど歩くようなペースになっていた。


「……おい桜井、先行けよ」

「馬鹿か。お前がゴールするまで付き合ってやるよ」


 なんとか鈴木と一緒にゴールラインを越えたとき、クラスの仲間たちが拍手で迎えてくれた。


「桜井くん、鈴木くん、お疲れさま!」

 白松さんが笑顔で手を振ってくれる。


「いやー、俺、マジで死ぬかと思ったわ」


 鈴木が地面に倒れ込むのを見て、宮田が呆れながら言った。


「だから言ったでしょ。無理するからそうなるんだって」

「まあまあ、鈴木くんらしくていいじゃない」


 白松さんが優しく笑うと、鈴木は少し照れくさそうに頭をかいた。


 教室に戻ると、みんなが大会の話で盛り上がっていた。


「意外と楽しかったかもな」と鈴木が言うと、宮田が突っ込む。

「何言ってるの? 鈴木くんが楽しかったのは、桜井くんが付き合ってくれたからでしょ」


「おいおい、桜井は俺の付き添いかよ!」


 みんなで笑い合う中、ふと白松さんが呟く。


「みんなで一緒に頑張ると、やっぱりいい思い出になるよね」


 その言葉を聞いて、俺もなんだか温かい気持ちになった。


 マラソン大会なんて面倒なイベントだと思っていたけれど、こうやってみんなで過ごす時間があるのも悪くない――――そう思った。


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