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それぞれの苦痛1

それぞれの苦痛          アオチ


 ウルウル言っているウルウを拾って船内に入った。

 先に戻って行った回収人の姿はもう見えない。

 みんなどこにいるのか気になったが、取りあえずびしょ濡れの身体をシャワーで温めて着替えたい。

 オオミとそれぞれ自分の部屋に戻った。ウルウは俺が預かった。

「おい、そんなに動くなよ」

 ボディソープなんて付けてしみないだろうか。心配で少しだけウルウの赤い身体につけ、撫でてみた。意外と何ともないみたいだ。

 きょとんと俺の顔と石鹸のついた腕を見比べている。

「大丈夫みたいだな」 

 ほっとしてスポンジにいっぱいつけて肩から軽くこすってやった。

「うるるるるるーーーー」

 突然ぶるぶる震えてウルウが叫んだ。何かの発作かと思って焦った。笑っているとわかって安心したが、手が付けられない。

 狭いシャワー室をバタバタと手足を振り回して動きまわる。くすぐったがりだな。こいつ、生れたばかりだと言っていたけれど、俺と大して変わりないくらい大きい。

「うるうるっ」

 今度は泣き出してしまった。目に石鹸が入ったらしい。

「おい、大人しくしてくれ。ちゃんと洗い流してやるから」

 何とか自分とウルウを洗い終えた時にはどっと疲れていた。

 ベッドに横になる。ひどく眠たい。

 ウルウを呼び寄せて、タオルケットをかけ湯たんぽ代わりにして抱いた。ウルウの目もとろんとしている。

「少し、眠ろうか」

 そう言った時にはウルウの愛嬌のある目は既に閉じていた。

 眠りの中に、俺のエトピリカが出てきた。懐かしい、冷たい冬の山だ。悠然と黒く美しい翼を揺らして俺の目の前の木に止まる。

 俺はなんだかとても嬉しくなって、腕を伸ばす。

「寝てはいけない」

 不思議な声で俺のエトピリカが言った。男の声とか女の声とかじゃない、鳥の声だ。指が届かないのが、なお一層狂おしさを煽りたて、俺は更に腕を伸ばす。

「寝てはいけない、真ん中の子」

「どういう意味だーー」

 エトピリカの居る枝まで何とかして届きたくて、木をよじ登り始めた。もう少しだーー。そこで夢の中のお約束であとちょっとの所で木から滑り落ちる。大丈夫、これは夢だからそう思った時、現実に背中に物凄い痛みを感じた。

「アオチさん! 起きてください!」


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