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鳥を撃つ人1

鳥を撃つ人


 オオミを抱きかかえながら、雷が消えて行く空をバカみたく眺めていた。

 突然、バサッと何か大きなものが空から落ちてくる音と風を感じ、後ろ振り返って息を呑んだ。

 ――タンチョウモドキが甲板に降り立っていた。

「うるるるるるるーーーー」

 入口のドアを背にウルウがしゃがみこんでいた。あいつ、みんなと一緒に中に入ったんじゃないのか。

 また、バサッと羽を震わす音がして、タンチョウモドキがウルウを鋭く視界にとらえたのがわかった。近くで見ると想像していた以上の巨鳥だ。

 ウルウが震えているのが離れていてもわかった。

 あいつ、ウルウの心臓を取っていくつもりか。

「アオチさん、ウルウが……」

「わかってる、お前はここから動くなよ」

 オオミに声をかけ、ウルウの方へ走り出そうとした時、

「お前こそ、それ以上動くなよ」

 回収人の声が響き、目の前のタンチョウモドキが甲板に倒れると、勢いよく反対端まで滑って行った。一瞬の事だった。

 鳥の巨体が辿った軌跡には赤黒い血が、ペンキを刷いたように流れている。

「……死んだのか、あの鳥」

「ああ。それとも、お前たちの心臓が引きずり出されるのを、ここで見ていた方が良かったか? この銃で撃たれてもも血は余り出ないんだぞ、弾が血を吸収するから。その鳥がバカでかいのと雨で余計に流れているように見えるだけだ」

 弓の形の銃を肩にかけて回収人が溜息をついた。こいつもびしょ濡れだ。年寄りなのに、いや年寄りだからか? 気怠い雰囲気に絡まる色気が雨に反射して見惚れてしまう。そんな事、絶対に感づかれたくない。

「いや、ウルウが無事で良かった。ありがとう」

 そう言って、今度こそウルウの元へ向かった。

 ウルウの肩にそっと手を置く。

「うるる――」

「おいっ、ちょっと」

 ウルウが急に抱きついて来て、濡れた床の上でよろける。

 かわいいTシャツとオゼが頭から被せてやったひざ掛けがびしょびしょだ。そう言えば、このTシャツの絵、ちっとも滲まない。あのペンや絵具の成分が変わっているのか、生地が特殊なのか。

「お前たち、油断するなよ。お願いだから、さっさと中に入ってくれ。鳥はまだ来る」


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