逆さまの島2
頷いてくれたのだろうか? その時、島が割れたような大きな音がして、ついそちらを向いてしまったので、わからなかった。
「二人とも気をつけろよ。今の雷はこれまでの比じゃない。ローヌはウルウを守ってろ。カオリさんは無言ちゃんと一緒か? おい、無言ちゃん、そこから動くなよ! オオミ、マモルくんはどこだ?」
「アオチさん、落ち着いてください。僕らはまだ大丈夫ですよ。マモルくんはアオチさんの足元です。それに僕らには回収人さんがいるから安心です」
何故かそう言い切ることができた。船首に立つ回収人さんの背中を見る。この人はさっきから島にも雷にも全く関心がないようだ。
弓みたいな銃を脇に抱えて、空を見上げる姿が頼もしい。
この人が鳥の方に注意を払っている間は、僕たちの船に雷が落ちる事も、誤って早めに新しい世界に連れていかれることもない。
「それもそうだな。なあ、俺たちは明日の朝、三人そろって雷の中にいような。ローヌ、そっちの船はそれ以上死人を出すなよ。無言ちゃんとウルウを連れて新し世界に行くんだ。一人しか連れて行けないとか、誰かの作ったルールなんて知らねえよ。どさくさに紛れて破ってしまえ。それが罪になるなら、ルールを作ったやつの方をこっちの世界に置いていけばいい」
アオチさんの言葉に反応して、オゼさんが僕たち二人を交互に見た。
「俺はーーさっきまではごめん。こっちの世界に残りたいなんて言って。今はお前たちとずっと一緒にいたい、本当にそう思ってる」
良かったーー。考え直してくれたんだ。ローヌさんに何か言われたのだろうか。二人はさっき、僕たちより遅れて船から出てきた。
「僕だって、無言ちゃんとウルウを連れて行きたい気持ちは同じだよーー。いや、僕が一番強く願っている。さあ、島の周りの船が持ち上がり始めたよ。明日の予習だ、見逃さないで」
ローヌさんが島の上空を指さした。
「え……」
雷光が空に途中の状態で止まっていた。歪な刀のような形のまま、空を切り裂きかけて逆に固定されてしまったみたいだ。青白い光を纏って、少しも動かない。何かを待っているのかーー。
直ぐに待っていたものは判明した。島の周囲を漂っていた船たちが浮き上がり始めたのだ。さっきまで遠すぎて、かろうじて船の形をしていると思っていたものが次々と、一つずつ浮き上がって行く。外観にも個性のあると思っていた船が全て白っぽく見えて、それは雷の光に近づくほど青と金と銀の間を彷徨う不思議な色に染まる。
「二列に並んでえらいね」
突然マモルくんが言った。
「二列……ああ、確かに」
僕が見ている船の連なりを追いかけて、同じような船の列が海から空を目指していた。
「仲の良い蛇みたいだな」
アオチさんも空に向かう長い線路のような船の群れを、活き活きした顔で見上げている。そうだ、うねりながら登って行く様は白い蛇にも見えて、縁起が良さそうだ。
「あれ?」




