逆さまの島1
逆さまの島 オオミ
まずい、オゼさんだけ呼んでしまった。
その横に並んでいたローヌさんとウルウが同時に寂しそうな顔をした。
「ウルウとローヌさんも、こっちに来てください!」
今度は二人同時に嬉しそうな顔になる。ウルウは本来表情が乏しくても仕方ない造形なのに、オーバーな目と口の動きで異常にわかりやすいし、ローヌさんはニコニコして手を振っている。三人も人を殺している疑惑は払拭されていないけど、少し気の毒にも思った。
オゼさんと目を合わせて、三人で雨に打たれながらこちらに歩いてくる姿は平和そのものだ。
というか、オゼさんとローヌさんはいつからあんなに仲良くなったんだろう。お互い僕なんかよりずっと以前から一緒に過ごしていたようにわかり合ってる感じがする。大丈夫なのか?
「凄い景色だな。お前、あれが何か聞いたか?」
「へ?」
近づいて来たオゼさんの長い前髪から見える片目が、異常に美しく濡れていて、ついぼんやりしていた。自分の先輩に対して気持ち悪い。
「あの島の雷だよ。一足先に選択された奴らが雷の中にまとめられて、光の中で明日の朝を待つんだ」
オゼさんの声が違う人のものみたいに感じた。少し前までは、いつも自分の世界に籠っている人だったのに。今は冷たい声の中に、冬に飲むホットドリンクみたいな優しさが混じって、もっと話して欲しいとお願いしそうになる。
「あっ、ああ、回収人さんに聞きました。明日の僕たちはーーどうなっているんだろうってアオチさんと話していました」
島に釘付けだったアオチさんがこちらを向いた。普段からかっこいいが、夕陽の造る陰影でよけいにかっこよく見える。アオチさんはいくら格好良くても現実味があるところが好きだ。
触れなくても手が届くのがわかる。オゼさんはいつも消えてしまいそうで心配だけれど。
「オゼさん、必ず三人で新しい世界に行きましょうね」




