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船上の雷2

 何故かローヌと手を繋いで甲板に出た。心地良くて振りほどけなかった。このまま皆のところに行ったら変な目で見られる、そう思ったけれど、それならそれで良いと割り切った。

 外に出ると怖いぐらいの冷気が溢れ、空は眩しく、誰も俺たちの事など気にしている余裕はなさそうだった。

 みんながつかまっている左舷側の手すりに、少し離れて並んで立つ。

「何だ? あれ」

「誰かの故郷だよ。この船は今、誰かの故郷の横を通り過ぎている。そして、あの周りの船全てに君たちみたいな人が乗ってる」

 確かにローヌの視線の先に小さな島が見えている。小さく見えているだけで、実は結構大きいのかも知れないけれど。無数の船も確認できた。

 さらに島の真上から雷が降り注いでいる。本当に雨のように雷が落ちている。俺がさっき船の中で聞いた雷の音は、たまに飛ぶ方向を間違えて、こっちの船の近くに落ちてくる物の一つだろう。

「あいつは……何してるんだ」

 俺たちの回収人が、「銃だ」と本人が説明していた金属の弓のような物を脇に抱え、船首に力強く立っていた。

「選択の後、選ばれなかった心臓が海で燃えるのは知っているだろ? それを狙う鳥に用心しているんだよ」

 あの心臓を狙う巨大ツルの事か。海に散る美しい心臓を狙ってくる卑しいやつらだ。

「――俺たちもその心臓を待ってるのか? この船は心臓が燃料なんだろ」

「そうだね。海に浮いている心臓を拾うのは比較的安全なんだけど、選別されたばかりの心臓を回収するのはそう簡単ではないんだ。だから、彼に監視してもらいながら、僕が回収をするよ」

 穏やかに話すローヌの顔が、暮れ始めた太陽の金色と雷の白い光で輝いて、そのまま空に消えてしまいそうに感じる。

「そう言えば、お前の船で死んでいた奴らはどうしたんだ。……その、燃やして船の燃料にしたのか?」

「ああ、あれは海に還したよ。今頃海面を美しく燃えているか、もうどこか別の船に回収されてるよ。僕たちはね、自分の船の乗客は燃料に使えないんだ」


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