わたしを刺さないナイフ2
突然失礼だし、矛盾しているけど、ピンときた。
この子、オゼくんが良く話していた、あのマモルくんか。
思い出してきた。暗い記憶の奥に閉じ込められる直前、この子といた。
「マモルくんも呼び戻されたの?」
「うん」
日常の一コマみたく、マモルくんは軽く頷いた。子どもらしさに反して落ち着いてる。場違いに仕事に行くような服装をしている大人の自分よりずっと。
「兄ちゃんはまだ鳥を掴まえていないんだね」
私も丁度同じことを思っていた。
「そうみたいだね。でもまだ時間はあるから。ねえ、おばさんと船の中を探検しようか。そうだ、おじちゃんにはもう会った?」
「うん、探検する! おじちゃんには会ったよ。僕さっきまでおじちゃんのお部屋にいた」
「そう」
マモルくんと思ったより広い船内を一つ一つじっくり見て回った。子どもは嫌いなはずだったけど、マモルくんは不思議と好きになれた。それもそうか、この子は一度死んでしまった子。
「ここは個室が並んでるね。マモルくんは一人の部屋が欲しい?」
「うんう、僕おじちゃんの部屋がいい」
「わたしも。ここは生きている人、専用の部屋かもね」
その時、外で話し声がしたかと思うと、若くてかわいい男の子が勢い良く部屋に入って来た。
男の子、と言ったけれど二十代前半くらいの大人だ。自分より十歳以上年下の子はみんなかわいらしく見えるけど、この子は顔立ちも幼かった。その顔がみるみる青くなって、眼鏡がーー眼鏡の奥の目がマモルくんに釘付けになった。わたしもマモルくんを見て、初めてゾッとした。その眼鏡の子を睨むように見返す表情から、さっきまでの無邪気さが消えていたから。大人が大人を相手に値踏みをしている顔だ。




